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勘違いかもしれないけれど、一つの可能性を思いつく。

夜中の更新含めて 3/23 二話目

 召喚獣達に甲斐甲斐しく世話をされて、私の体調はすっかり良くなった。ヴァインが持ってきた薬も効能がよかった。……それにしても私の事を大切におもって、心配してくれているのは何となく分かった。

 それを踏まえた上で、この状況について思考する。

 ベッドの上に座り込んだ私は、今度こそ、答えを導き出したいと頭をフル回転させる。だって知りたいのだもの。知らなければここから出る事が出来ない。きっと知れば何かしら対処が出来るから。

 だからこそ、病み上がりだからと差し出された果物を食べながら私は考える。

 このみずみずしい果物はとても美味しい。こういうものをヴァインはどこから手に入れているのだろうか。手に入れにくいと言われているものとかもたまに出てくるのだけど、やはり魔法を使ってだろうか。

 ヴァインはやはり、驚くほどに強い。

 平民なのが信じられない。自称、ガラス職人。でも実力は英雄以上。うん、やはり、意味が分からないわ。

 それでいて私を攫って……、どうやら私の事を大切にしているらしい。私の事を心配してくれて、私が少し体調を崩したら今まで寄ってこなかったのに寄ってきた。それは何故だろうか。

 ――単純に考えれば、本当に私を大切におもってくれているのではないか。と思った。

 なんていう自惚れだろうか。こんなにも強大な力を持っている存在が私のような価値の低い第三王女を大切に思っているなんて。そんな風な思いも正直ある。けれどもやはり、その結論が一番しっくり来た。

 ヴァインは私を大切に思っている。

 ならば、どうして私を攫ったのか。

 何故、敢えてあのタイミングだったのか。

 いつでもきっと、ヴァインは私の事を攫う事が出来ただろう。なのに、どうしてあのタイミングで攫ったのか。

 私はどういう状況だった?

 それまでと何が違った?

 そう考えて思い浮かぶのは一つの事だった。

「婚約の話が決まろうとした……って事ぐらいよね」

 私の婚約話が決まろうとしていた。まだ確定ではないけれど、お父様に婚約の話を進めようと思うと言われていた。……本当にそれだけだわ。ならば、それが関係する?

 私の婚約が進められようとした。

 だから、私を攫った?

 ……どういう思考回路をしているのかしら。

 どうして。何故。

 ……私の婚約が嫌だった? そう考えると、一つの考えが思い浮かんだ。

 ヴァインは……私の事が、好きだったりするのだろうか。いえ、こんなこと考えるのは自惚れかもしれない。実際そうではなかったらすごく恥ずかしい勘違いになってしまう。けれど、婚約が嫌って、そうなのではないかって、そんな風に思ってしまった。

 そうだったとしたら、納得は理解は出来ないけれど辻褄があう気がする。

 私の婚約が嫌だからって攫えるってどういう事なのだろうかと頭を抱えたくはなるけれど、でもそれが一番しっくりくる。だってヴァインは多分、政治的な事とか一切頭にない。本当に信じられない事だけど、ヴァインはこれだけの力を持ち合わせておきながら、当たり前の平民としての感覚を持っているようなそんな感じがする。

 いや、本当に、当たり前の平民としての感覚を持っておきながら王女である私を攫うとかどういうことなの? という気持ちになるが、それはその……思い違いならとてつもなく恥ずかしいけれどヴァインがそれだけ私を好きだって事では……って本当にこれは勘違いだったら恥ずかしいわ。

 それでもし、ヴァインが私を好いていたとして……不思議だけど、嫌な気はしない。誘拐犯相手に嫌悪感抱いていないって色々とおかしいかもしれないけれど、私はヴァインに対して嫌な感情は抱いていない。

 それで、そのヴァインが私を好きかもしれないという事を思いつきはしたけれどこれを確認するためにはどうするべきだろうか。直球で本人に聞く? それともとりあえず召喚獣達に聞いてみる? どちらにしても、勘違いだったらどうしようもなく恥ずかしい。

 いえ、でも恥ずかしいからとためらっている暇はないわ。王女である私が攫われて、王宮は少なからず混乱をしているはず。私は王女として、無事に国に戻る必要があるもの。

 勘違いだったら勘違いで……まぁ、恥ずかしいけれど行動しなければ何も変わらないもの。そう決意して私は、近くにいた召喚獣に恐る恐る聞いてみた。

「ね、ねえ……」

『なんですか、ナティ様。どうしたんだ?』

 いつも近くにいる赤い鳥は、不思議そうな目で私を見ている。

 本当に勘違いだったら恥ずかしいのだけど、聞かなければと気合をいれて口を開く。

「ヴァインって……私の事、好きなの?」

 恐る恐る聞いた言葉に、召喚獣はちゃんとは答えなかった。

『それは主に聞けよー、ナティ様』

 と、面白そうな声で言われてしまった。

 ……本人に、聞けと。確実に面白がられている気がする。

 でも召喚獣が答えてくれないのならば、ヴァインに聞くしかないわ。本人に聞いて違ったら……と考えるだけで何とも言えない気分だけど、女は度胸だわ。……次にヴァインが来たら聞いてみよう。




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