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婚約の話を進めようとしたら、私は攫われた。

 私は、ナティ。

 このインダーン王国の第三王女である。

 第三王女とは言っても、私の母親は元々侍女だった。平民の出だった侍女のお母様はとても美しい人だった。お母様は三歳の時に亡くなった。だから私の記憶の中にはおぼろげにお母様の記憶が残っているだけだ。

 美しかったというお母様。

 お母様が亡くなってから、私はあまり表舞台に立たないように生きてきた。なぜなら私にはこれといって後ろ盾はなく、正妃様はともかく、他の側妃の方々は私の事をよく思っていない。お母様に、私が似てきているからと目立った行為はしていなくても狙われていた。

 ただ、今の所命の危険はない。

 ……というのも不思議なことに、私は誰かに守られている。時折不思議な生き物の姿を私の側で見かける。気のせいではなければだけど。誰が何のためにそんなことをしているか分からないけれど、守られている事に関しては助かっている。

 私はもう、十四歳。

 第三王女とはいえ、王族。平民の血が流れていようとも、王家の血を継いでいる。

 そんな私の価値と言えば、王族の血ぐらいしかない。表舞台に立たない、平民の血が流れている私を欲する相手なんてあまりいないし。ただ私はお母様譲りの見た目をしているから、それで結婚相手には困らないだろうってお父様とお兄様たちはいっていたけれど。

 ――そろそろ婚約の話をまとめようと思う。

 そんな風にお父様に言われた。お父様は王という立場だけど、私の事を可愛がってくれている。まぁ、可愛がられているのもあって側妃様たちに私が良く思われていないのだけれど。

「……婚約ね、どうしましょう」

 お父様は私の意志を尊重してくれている。本当ならば、「――と婚約するように」と決められていてもおかしくないのに。そういう所は、お父様は甘いなと思ってしまう。そういうお父様の事が私は好きだけれども。

 婚約者候補の肖像画をいくつも眺める。そしてどういった人物かを見る。一番の有力候補は、友好国家の王子だろうか。それか国内の有力貴族か。お父様は私を可愛がってくれているのもあって、年が離れすぎている相手や素行に問題がある相手はいない。

 誰と婚約を結ぶべきか、誰と婚姻を結ぶべきか、私はそれに悩んでしまう。

 正直、誰と一緒に歩んでも一緒ではないかという思いは強い。私は恋というものをした事がない。情熱的な恋とは、どういうものだろうかと考える事はあるけれど、現実的に考えてみて王女である私が恋愛して結婚をするなんてありえないだろう。

 ……お父様は「好きな相手を見つけたらそれでいい」と言っていたけれど。

 でもどうしようかしら。

 誰と婚約を結べば、いいだろうか。私は恋愛感情は今の所誰にもない。でも王侯貴族ならば婚約を結んでからでも努力をすれば、夫婦としての形になれるのではないかと思う。ならば、一番そういう穏やかな婚姻が結べそうな相手がいい。そう思うのだけど、お父様が私の婚約者として示している方たち、皆様、そういう方が多いのよね。だからこそ、どうするか悩んでしまう。

 腹違いの側妃の娘であるお姉様たちとはほとんどかかわりはないけれど、お父様や正妃の息子であるお兄様たちとは仲良くしている。この国のために、私の好きな家族のためになる婚姻を結びたい。

 そう思っていた時、私の側によくいき生き物が寄ってきた。

「あら?」

 よく見かけるけれど、こんなに近くにまでよってくる事はほとんどなかった。そんな真っ赤な羽毛を持つ鳥が私の至近距離にいる。どうして、こんなに近くに? とそんな風に不思議に思った時、『ごめんなー、ナティ様』と何処からか声が聞こえた。

 誰が、何の声?

 頭の理解が追い付かない中で、私は突然、空の上へと攫われた。そして気づいたら私は意識を失っていた。



 そして、目を覚ました時には私は見知らぬ部屋の中に居た。

 その周りには、数年前から何度も見かけていた生き物たちの姿が見られる。

 その生き物たちは、『ナティ様、ごめんなさいね』、『ナティ様、ちょっと監禁されててくださいね』などと面白そうに口にしていた。

 生き物たち———動物にしか見えなかった不思議な生物たちは確かに声を発していた。そこで私はその存在たちが召喚獣と呼ばれる、魔力を持つ人が契約を結ぶ強大な力を持ち生たちだということを初めて理解した。

「召喚……獣」

 一人で一体契約しているのが当たり前。三体も契約をしている者はこの国の英雄だ。

 ――だというのに、この場には三体以上の召喚獣たちがいる。

 意味が分からなかった。私が攫われてた事実も、その先で召喚獣たちが沢山いることも、そして監禁されてと言われたことも。

 分からないままだったままに、一日が過ぎた。

 ……おそらく召喚獣たちの契約者である私を攫った相手というのは、姿さえも現さない。

「……私、何で攫われたのかしら?」

 そんなつぶやきに対して、何故か周りにいる生物たちは面白そうに笑うだけだった。




※他の執筆作品のifストーリーを考えていたら楽しそうだったので思わず書き始めてしまいました。20話程度で終わる予定です。

設定などは割とそのままで名前や国名などはちょっと変えてます。

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