第25話 俺1人の戦闘へ
俺がルーレットを見ていると、女性ディーラーが聞いてきた。
これが、俺がゲームに参加する合図なのだ。
最初で不安になっている俺に、一枚のチップを賭ければ、3回くらいは勝たせてくれるだろう。
しかし、4回目は昨日の事もあって、一気に勝ったチップを没収されるはずだ。
昨日の負けた恨みを俺で晴らそうという心理を逆手に取った方法だ。
(よし、3回勝った!
これで、チップは8枚だ。
これでポーカー勝負の元手にするぜ!)
「あ、賭けないんですか?
まだお金が全然貯まっていませんよ?」
俺が席を立つと、女性ディーラーは驚いたように引き止める。
声をかけて、まだ勝負を続けるように誘惑するのだ。
ここで、もう一回くらい勝負をすれば、チップが無くなる事だろう。
「ええ、次は、ポーカー勝負を試してみたいのでね!」
女性は、ガッカリした表情で俺を見送った。
止める時はキッパリと止める、これがギャンブルには有効な方法なのだ。
下手に勝てるかもと引き伸ばせば、一気に負けてしまうのが常識だ。
俺は、8枚のチップを片手にして、ポーカーテーブルに移動する。
そこには、庶民的な観光客の叔父さんが集まっていた。
お金はある程度持っているが、本気で稼ぐ気は無い連中だ。
こいつらをカモにして、大金を巻き上げる。
心理戦に持ち込めば、簡単に勝てる奴らだった。
まず、同じ観光客である事を装う。
「一緒のテーブルにして貰ってもいいですか?
実は、カジノは初心者なんです。
お手柔らかにお願いします!」
ここで初心者アピールをすれば、かなりの確率で無理して賭けてくる事はしない。
手札が弱ければ、すぐに降りる(フォールド)する事だろう。
こういう奴らは、考え方がシンプルだ。
手役が高い時にのみ、勝負を仕掛けてくるだけだ。
こちらが高い手札と見せかければ、勝負をすぐに諦める。
俺は、強気な調子で攻め続ければいい。
「ふふ、良い手札が来ましたよ!
今日はついてますね!
まずは、スリーカードを出しましょうか?」
「ヤバイ、私はワンペアのみです。
フォールドします」
「私もペアが揃わなかった。
降りますわ!」
「ふふ、ありがとうございます!」
こうして、俺のチップは40枚くらいに増えていった。
そろそろレベルアップしなければ、カジノで危険な人物と見なされる事はないだろう。
今までのはお遊び、次からが勝負になるのだ。
こうしている内に、俺のテーブルには金持ち相手が集まり始めていた。
まずは、ポーカーの役を正直に宣言しながらポーカー勝負をする。
「ふふ、今回の俺の手札はかなり強いですよ!」
「ほう、勝負しましょうか?
私はスリーカードですよ!」
「すいません、俺はフルハウスです!」
「あっちゃー、負けましたよ。
次は負けません!」
俺は、強い手札でも、弱い手札でも宣言していった。
これが次のポーカー勝負の布石となる。
正直にポーカーしていると思わせれば、俺のハッタリが有効になってくるのだ。
(よし、3回ほどありのままの手札で勿体ぶったように勝負ができた。
一回ほど、負けそうだったので降りたが、そろそろ賭け金を上げるか!)
「ふふ、またまた良いカードが揃いました!
2枚ほど出しますね!」
「やや、これはフラッシュの可能性がありますね。
うーん、フォールドです」
「いや、すいません。
実は、良くない手札でした。
フォールドしてくれて感謝です!」
「あらあら、ブタでしたか!
やられた!」
次は、正直に役を語るなどの揺さぶりをかけながら、俺は勝ちチップを稼いでいた。
100枚ほど貯まり、ついにポーカーのディーラーが動き出した。
ポーカーテーブルのディーラーは、メガネをかけた男だ。
「私と勝負してください。
昨日もそれなりに稼いでいましたからね。
どうですか、今日の全額を賭けた勝負で!」
「……良いですよ!」
俺は、メガネの男との勝負を受ける事にした。
スーツを良く着こなしており、若いが礼儀正しい雰囲気を持っている男だ。
俺と彼が勝負し始めると、周りが騒ぎ出した。
「骸骨さんが動きなさった!
彼は、トランプゲームの達人やぞ!
素人臭い若者が勝てるわけがない!
初っ端からこの人をぶつけるとは……。
骸骨さんは、全てのカードを透視する能力があるんですよ!
ビギナーズラックの彼程度では、勝てる相手ではありません!」
俺と向かい合わせに座った彼から、強者特有の匂いが漂っていた。
確かに、このまま普通に戦ったのでは、彼の圧勝だろう。
しかし、俺にも勝算はあった。
「全賭けならば、3回勝負をして、2回勝ったほうが勝ちというのはどうですか?
一発勝負では、観客達もつまらないでしょうし……」
「ほーう、面白い!
その勝負受けましょう!」
俺の提案が飲まれ、3セットマッチのポーカー勝負が始まった。
カードを見通すという能力を持つ男だ。
俺が一発で勝てる可能性は低い。
「あなたは、カードを見通す目を持っているようですけど、俺も持っているんですよ!」
「ほーう、観客達の言葉を聞き取りましたか。
なかなかフランス語も習得しているようですね。
これは、強敵のようです……」
俺と『骸骨』はカードを切り、カードを配り終えた。
俺は、カードを隠すようにして持つ。
手の甲によって、カードの真ん中が見えないようにしていた。
(これは、フルハウスになるな……。
おそらく勝てる手だろう。
カードを見せて、奴の表情を確認するか。
俺は、ある方法によって、あいつがスリーカードを持っている事が分かるけど……)
俺が裏のカードを見えるようにすると、彼がフォールドをする。
やはり勝負をせずに、次のポーカー勝負に移るようだ。
俺は、挑発とカードを見通す能力がある事をアピールしてこう言う。
「確かに、俺のフルハウスに対して、あなたのスリーカードでは勝てませんよね。
次へ移りましょうか?」
「なあ……」
「これが、本当にカードを見通す能力を持つ者の実力ですよ!
どうしましたか?
いきなり自信喪失の危機ですか?」
彼は、俺を睨み付けてきた。
今度は、カードが見えるように先っぽだけを持つようにする。
俺の手札は大して良くなかった。
「フォールドです!」
「なあ、勝負しない?
本当に、カードが見えているのか?」
「ええ、俺のツーペアでは、あなたのツーペアには勝てませんからね。
私のカードは9とジャックに対して、あなたは10とキングです。
勝負しないほうが良いようです!」
「なぜだ……」
彼は、俺がカードを見透かしたように勝負するので焦り始めていた。
俺が勝つには、運の力がいる。
まずは、奴と対等に戦う必要があった。
「バレていますよ。
あなたがメガネのレンズを通して、裏のカードを事前に知っているという事が……。
おそらくカードの裏側に特殊なインクについたマジックを使って、カードが分かるようにしているのでしょう。
他の者には普通のカードに見えますが、実は一枚一枚に印が付いていた。
あなたは、メガネを通して、敵のカードが分かるようにしていたのです」
「なんだと……」
「違うというのなら、メガネを外して勝負しましょうか?
そうすれば、対等な運だけの勝負に持ち込めるかもしれませんよ?」
「くう、良いだろう……。
その勝負を受ける!」
彼は、メガネを外して勝負をする。
カードを切ったり、配るのは俺になっていた。
これで運だけの勝負になったのだ。
「ふふ、お互いに降りる事もできない。
勝負をするしかないですよね!」
「カードを出す準備ができたら、お互いに見せ合うしかないですね。
それで勝負が決まる!」
俺達は、お互いに一斉にカードを見せ合った。
俺のカードはツーペア、彼はワンペアのみだった。
この勝負は、俺の勝ちになり、昨日並みのお金を手に入れた。
「なぜ、私のカードが見透かすように見えていたのだ?」
彼は、そう問い尋ねてきたが、俺は秘密を教える気は無い。
「企業秘密ですよ!」
「そんな……」
(実は、彼のメガネに反射して、彼自身のカードが見えていただけですけどね。
メガネをかけている人は、カードゲームに向かないようです)
俺は、賭けチップを換金して、ダリアと一緒に帰ろうとしていると、昨日の女性ディーラーが話しかけて来た。
俺と彼女だけであり、ダリアはまだ来ていない。




