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第22話 イングランドの魔女(ソルシエール)

 俺は、様々な情報を集めて整理し、ダリアの臓器を持っている女性の場所を大方割り出していた。

 後は、実際に行って見て、彼女を見付けるしかないのだ。


「ダリアの臓器を持った女性は、フランスのモナコにいるらしい。

 出身は、イギリスらしいけど、5年前くらいにそこに移ったらしいな。

 やっぱりマフィア関係者だから、そういう場所に移ったのかな?」


 俺は、不安を感じていた。

 モナコといえば、世界有数のギャンブル大国である。

 ダリアの臓器を持っているとはいえ、お淑やかな少女である可能性は低いのだ。


「とにかく会って見てから考えよう。

 もしかしたら、普通に暮らしている可能性もあるし……」


 俺は飛行機に乗り、フランスへと旅立った。

 まず、フランスの飛行場に入り、フランス国鉄の路線を使うか、専用のバス路線でモナコに入れるという。


 俺は、英語は集中して勉強したが、フランスやモナコはフランス語だった。

 ある程度までは英語でも通用するだろうが、人探しとなるとフランス語がいるかもしれない。


「一応、フランス語の簡単な会話はできるように本を持って来たが、どこまで通用するか……」


 俺は、フランスの飛行機場に降り立ち、すぐさまバス路線を探す。

 モナコ行きのバスに乗り込み、空港で両替したフランを渡す。

 なんとかモナコのカジノ都市『モンテカルロ』に辿り着いた。


「ここが世界最大のカジノ都市の一つ『モンテカルロ』か……。

 ここに、ダリアの臓器を持った女性がいるわけだな。

 年齢は18歳前後だったはずだ……」


 俺は、カジノ場の入り口で立ち止まって写真を撮る。

 まあ、観光も兼ねての旅行だ。


 ここで彼女が何をしているのかは知らないが、カジノの仕事をしている場合は、休みを取っている可能性もゼロではない。


 お客として来ているのなら、今日はきていない可能性もあるのだ。

 俺は、フランスに数日滞在する費用を持って来ている。


 一週間ほどなら滞在できるが、カジノで遊ぶ余裕はない。

 上手く彼女と会えれば良いが……。


 俺は、カジノに入ってすぐのボーイに、女性の事を尋ねる。

 一応、彼女の名前までは知る事ができていた。

 名前さえ分かれば、容姿を知らなくても探す事ができる。


Salutサリュ

 Je Cherche des mademoiselle.(ジュ シェルシュ デ マドゥモワゼル)

(やあ、この女性を探しています)

 Elle est mappelle daria Alexandre.(エレ マベル ダリア アレクサンドル)

(彼女の名前は、ダリアアレクサンドルです)」


「彼女は、カジノのディーラーさ。

 みんなからは、イングランドの魔女ソルシエールと呼ばれているよ。

 彼女の前では、イカサマもできないし、ポーカーが最強レベルなのさ。


 今は、トイレに行っているが、いつもはポーカーテーブルに付いているよ。

 体調が悪いみたいだ。

 いつも、数時間に一回は、トイレに行っているよ!」


「Merci !(メルスィー)

(ありがとう!)」


 俺は、彼が指差して言った通り、トイレの方へ向かっていった。

 彼女がトイレから出て来る所を待ち伏せする。

 すると、女性らしからぬ大きな声で嘔吐している女性がいた。


 どうやら体調が優れず、トイレにこもりっぱなしのようだ。

 声が大きいので、俺は女性に話しかけてみる事にした。

 他の女性は、彼女を避けて他のトイレに行っているようだ。


「Ca va?(サヴァ)

(大丈夫ですか?)」


「Oui、Ca va.(ウイ、サヴァ)

(はい、大丈夫です)

 うええええええ……」


 なんか吐いている感じで全然大丈夫ではなさそうだった。

 まあ、カジノ場で働いているようだし、二日酔いかなんかだろう。

 もしも、妊婦だとしたら、つわりかもしれないが……。


(はあ、はあ、くっそ……。

 やっぱり人が多いと、何百人もの考えが頭の中に入って来て気持ち悪い。

 心を読んでいるようだけど、自動で入って来て制御できない。


 ずっと彼らの声を聞いているような感じだ。

 はあ、森林とか、公園とか人気のない場所ならなんとか落ち着くんだけどな……。

 カジノで遊んでいるような奴にも心配されちゃったよ……)


 彼女は一通り落ち着くと、俺がトイレの外で待っている事に気が付いた。


(そういう事か……。

 あの事件で関わった男の子が会いに来たわけか……。

 私の名前を変えたダリアとかいう女の子の関係者か。


 私の心臓だか、肝臓だかを貰ったわけだけど、厄介な特殊能力まで移らされたわけか……。

 でも、羨ましいね、ここまで愛されているなんて……)


 彼女は、神経を集中し始め、トイレの中にいたまま俺の心を読む。

 どうやら、これがダリアの本当の実力だったらしい。


 昔のダリア本人は、完璧に心を読む能力を使い熟せていたが、他人である今のダリア・アレクサンドルでは、そこまで使い熟せていないらしい。


 能力自体に問題はないが、必要ない時まで他人の心を読んでしまうらしい。

 その為に、トイレに篭って気分を落ち着かせていたようだ。


(ふう、興奮はしていなくて、不安と恐れがあるようだね。

 どうやら私への復讐ではないらしいな……。

 なら、心臓の持ち主の恋人だったか……。


 本人には会えなくても、心臓や肝臓を持った私に会いに来たという所か。

 どういうわけか、私の心臓も痛いぐらいにドキドキしている。

 お互いに相思相愛の仲だったのかもな……)


 彼女は、何も知らぬふりをして、トイレから出て来た。

 他の人とすれ違って、俺と会わない事にしようとしているらしい。

 人が出て来たタイミングを見計らって、同じように出て来た。


(平常心だ……。

 相手は、私の姿を知っていない。

 幸い、ここには若い女性が多くいる。


 ピンポイントで私を探し出すのは難しいはずだ……。

 私を探し出せなければ、諦めて日本に帰るだろう。

 だが、もしも、私が分かったのなら、素っ気ない態度で対応しようか……)


 俺がトイレ前で待っていると、3人の女性がすれ違った。

 3人とも若く、バニーガールの衣装を着ている。

 初見で彼女達の誰がダリアの心臓を持っているかを見分けるのは無理だった。


「くう、全員20歳以下の女の子か……。

 なら、胸に心臓と肝臓の手術跡があるはずだ。

 それを見れば、誰がダリアの心臓を持っているかが分かる!」


 俺は、3人の女性の胸元に注意を集中して見ていた。

 他の場所なら痴漢とされて注意や警告を受けるが、幸いここはカジノ場だ。

 バニーガールの衣装をマジマジ見ようが、不信感を抱くような奴はいない。


 俺が注意して見ていると、他の2人は胸元を隠していないが、1人の女性だけが胸元を見せないようにして、背中側を向けて歩いていた。


 金髪のショートカットをしているが、ストレートヘアーではなく、髪の毛をカールさせていた。


 外側に髪の毛が跳ねており、大人の女性の魅力が漂っている。

 ちょうどダリアが大人になったような雰囲気だった。

 俺は、懐かしい雰囲気を感じていた。


「ダリア……」


「ふわぁ!」


 女性は、俺が名前を呼ぶと、顔を赤くしてそう奇声をあげる。

 理性では逃げようとしているようだが、心はどうやら心臓の持ち主のダリアに近いようだった。


「君が、ダリア・アレクサンドルさんだね。

 実は、君を探していたんだ。

 君は、心臓移植をした経験はないかい?」


「うう、そうだよ……。

 私が、ダリア・アレクサンドルだ。

 あなたが考えているように、ダリアという少女から心臓移植をされた少女だ。


 でも、それがどうした。

 マフィアのボスが勝手に彼女を殺して、私の体に移植しただけだ。

 それとも、この心臓を奪い返しに来たのかい?」


「いや、君の元気な姿を見に来たんだが……。

 彼女の心臓も気になったし、君にも興味があった。

 元気そうで何よりだ」


 俺は、精一杯の笑顔を見して挨拶した。

 ダリアの顔が一層紅葉していた。

 しかし、彼女本人の意思で反応しているわけではなかったようだ。


「ふう、心臓には心が宿っているようだね。

 多少はあなたに反応しているようだよ。

 少しならフランスの街を案内してやる。


 それで満足する事だ。

 モナコでギャンブルにハマれば、待っているのは破産だけだ……。

 金持ちでもない普通の庶民は、良い思い出だけ持って帰る事をお勧めするよ!」


 彼女はそう言い、足早に立ち去ろうとする。

 白と青色のバニーガールの衣装が煌めき、彼女のスタイルの良さを見せ付けていた。

 スレンダーながらも形の良さそうなバストとヒップが揃っている。


「待ってくれよ!

 俺は、海外旅行も初めてなんだ。

 英語は話せるが、カジノも初めてで心細いんだ。


 仕事場などを見学させてくれよ。

 一応、君に会いに来たんだしさ。

 邪魔になる事はしないよ!」


 彼女は立ち止まり、俺をチラリと見る。

 年齢が同じくらいである事を悟ったようだ。

 俺をからかうような笑顔を見せて、胸元をチラリと見せて来た。


 そこには、心臓を手術した後がハッキリと見て取れた。

 綺麗な胸には不釣り合いな、痛々しい手術の跡が残っている。

 女性ならば、コンプレックスになってもおかしくないくらいの大きな傷跡だった。


「ふーん、私の体が目当てなのかな?

 恋人に先立たれて、同じ心臓を持った私を抱こうと思っているのかね?


 年齢的に、ギリギリ抱けなかったから、私を代用で抱こうとしているといった所かな?


 まあ、嫌いなタイプじゃないし、ギャンブルを少し見学させてあげるよ。

 ルールが分かって、勝負に勝てる自信が出て来たら、挑戦して来なさい。

 あなたが勝ったら、一晩私を好きにして良いよ!


 まあ、私は負け無しのギャンブラーだから、絶対に抱けなくて、お金をくれるだけになってしまうけどね。


 しばらく、私と一緒にカジノを回りなさい。

 雑魚ギャンブラーのカモになって、破産されても私が困るし……。

 一応、私のお客様だからね!」


「ああ、悪いな……」


 彼女の好意によって、俺は一緒にカジノを見て回る事になった。

 トイレから出て来たときよりかは褐色も良くなり、彼女の健康が少し回復したようだった。


(ふふ、好きだった男の近くにいるからかな?

 心臓を通して心を聞く能力も制御できているみたい。

 いつもよりも全然気分が良いよ!


 恋人になるのは勘弁だけど、しばらく一緒にいる分には嫌じゃないね。

 彼が日本に帰るまでは、フランス観光でもしてやるか。

 どうせ、マフィアの世界に入り込んだ私だ。


 彼と恋人関係なんて危険過ぎてなれないし……。

 一生独身で、マフィアのボスに金を巻き上げられるだけの人生なのさ……。

 この胸の傷では、どんな男も抱く気にはならないようだし……)


 彼女は、遠い目をしてカジノ場へ向かう。

 その目は、全てを絶望したかつての俺のようであった。

 天使のように笑うダリアとは、正反対の無表情な顔付きのダリアだった。

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