第20話 捕われたダリア
捕まったダリアは、何の抵抗もできずにガムテープで口を塞がれて、ロープで両手両足を縛られて、黒い車に乗せられていた。
本来ならば、彼女自身が無抵抗で捕まるはずはなかったが、犯人達も事前に彼女の事を知っていたようだ。
(くう、しまった!
あのボスとか言われるお爺さん、完全に孫娘の心配をしていたから分からなかった。
どうやら、私の能力を事前に知っていたらしい。
お母さんが、お父さんを奪った私に嫉妬して、私の素性を彼らに売ったらしい。
このままでは、彼の孫娘を助ける為に殺されてしまう!
彼らは、元々臓器売買の違法商人らしい……)
「悪いね、お嬢ちゃん。
私の孫娘の為に死んでもらうよ!
孫娘が生き残るには、君の肝臓と心臓が必要なんだ。
その腹と胸を切り裂いて、肝臓と心臓を移植させてもらう。
医療の準備はすでに整っている。
日本の大病院が、何も知らずにドナーが来るのを待っているんだ」
(くう、この人達、本当にヤバい!
6年前にも、この場所で夫婦をドナーとして切り裂いている。
遺体も海に上手く捨てて、死体さえも発見されていないみたい。
でも、小学校6年の男の子だけがどこかへ隠れて生き残ったようだけど……。
警察が来たとしても、私が助かる見込みがほとんどないかもしれない……。
くう、死にたく無いよ……)
黒服の男達には、銃やスタンガンを装備していた。
下手に抵抗すれば、一瞬でダリアは眠らされてしまう。
気絶した方が痛みは少ないのだろうが、ダリアは抵抗せずに隙を見て逃げる事にした。
(怖いよぉ……。
でも、ここで死んだら、折角笑うようになったアキラが悲しんでしまう……。
そうなったら、もう2度と笑わなくなってしまうかもしれない……。
それだけは、絶対に避けないと……)
ダリアは、従う振りをして、マフィアのボスの指示通りに海沿いの工場へ入って行く。
すると、マフィア側でトラブルが発生していた。
(くっそ、心臓と腎臓を摘出する闇医者が少し遅れているか……。
5分程度だが、車の渋滞にハマったらしいな……。
仕方ない、少女をスタンガンで眠らせておくか。
麻酔をする必要もなくなるだろうしな……)
ダリアは、マフィアのボスの心を読み、スタンガンで気絶した振りをした。
スタンガンが近付いて来る時を見計らって、気絶した振りをする。
スタンガンで攻撃された事は無いが、何とか騙す事に成功した。
「闇医者が来るまで、少女をどこかに隠しておけ。
さっき警察のパトカーがいるのを確認した。
工場の奥の方なら、逃げられる事も無いだろう。
儂の目から隠しておけ。
下手に孫娘と勘違いして同情しても困るからな。
今回は、非情に徹しなければならないのだ!」
ダリアは、奥の部屋へ連れて行かれていた。
そこは、かつて俺が隠れて逃げる事ができた場所だった。
俺が逃げた時は、探す時間が無かったが、今回は彼女だけであり逃げる事はできない。
(どうやら、上手く気絶した振りができたみたい……。
ここから逃げ出すのは無理だね……。
しばらく行動を見られないのが精一杯だ。
死にたくは無いよ……。
でも、アキラへのメッセージを書けるな……。
ダイイングメッセージとか意味ないけど、彼に最後の手紙くらいは書けるね。
手紙を書くペンと紙、少しの明かりだけは確保できた。
5分程度だけど、なんとかアキラを励ますような手紙を……。
本当は、生きて会いたいけど……)
ダリアがなんとか手紙を書き、隠れている部屋の中へ隠す。
警察が中を調べれば分かるような場所に置いておいた。
どうやら車が来て、闇医者が到着したようだった。
ダリアが隠れている部屋の扉が開けられると、彼女が最後の抵抗をする。
体当たりで手下を吹っ飛ばし、倉庫の扉から逃走を図るが、スタンガンの無情な攻撃を受けて意識がなくなった。
(ごめん、アキラ……。
私は、ここまでのようだ……。
私の死が、彼を苦しめなければ良いのだけれど……)
ダリアは、薄れ行く意識の中で、最後まで俺の事を考えていたようだ。
思い出すのは、俺とのデートの事ばかりだった。
短い期間だけだったが、彼女にとっては幸福な時間だったのだ。




