第18話 俺とダリアの結婚式
俺とダリアが横に並んで、お互いの顔を見合わせていた。
クラスで一番可愛いと思っていたけど、学校で一番可愛いと言われているとは知らなかった。
「学校で一番可愛いか……。
失礼だよな、俺の中では世界で一番可愛いよ!」
「光栄です……」
ダリアは、俯いて顔を赤くして呟いた。
冗談のつもりだったが、確かに世界で一番可愛い生き物かもしれないと考える。
ウェディングドレスがお姫様のドレスのように輝いていた。
「うおおお、正直に言った!
こんな事言われたら、ダリアもイチコロだね!
アキラは天然ジゴロか!」
「いや、実際に可愛いですよ!
幼いからこそ、男心を擽りますね。
守ってあげたいとか、そういうのが……」
杉田と羽田は、紹介を忘れて興奮していた。
俺は、式を進行するように促す。
指摘しなければ、ずっと進まないだろう。
「次のイベントはなんだよ?
興奮してないで進めてくれ!」
「ああ、ごめん。
次は、友達の挨拶だね。
アキラはボッチだから端折って、ダリアの友人の羽田さんの挨拶をお願いします!」
所々で、俺に精神的なダメージを与える内容が含まれている。
まあ、本当のボッチの俺には何も言えないのだが……。
極力人間を避けていた為に、挨拶してくれそうな友人もいない。
「はーい、友人代表の羽田です。
ダリアさんとの付き合いは、小学生の時からですね。
家が近所で、私の趣味のコスプレがバレて以来、裁縫などを手伝って貰ってました。
昔は彼女も不器用でしたが、徐々に裁縫も得意になった後は、ミシンなどを使い始めて、立派なコスプレ仲間に成長しました。
今では、一緒にコミケに行くほどの仲になっています!」
「道理でダリアの衣装がコスプレっぽいと思ったわけだ。
羽田の影響だったのか……。
まあ、似合っているから良いけど……」
「将来は、裸にエプロンとかで、アキラ君を悩殺してください!
これからも私と一緒にコスプレを極めていきましょう!
では、私の挨拶を終わります!」
「おい、ダリアに変な知識を与えるな!
本気にして、裸にエプロンとかしてくるじゃないか!
2人だけなら良いが、家族がいる時はヤバイぞ!」
「さすがに、ダリアが箱入り娘といっても、そのくらいの常識はあると思うけど……。
まあ、家で2人きりの時は、サプライズでそういう事があるかもしれないけど……」
俺と羽田が話していると、空気を読んだ杉田が次の段階へ移行させる。
次は、誓いの言葉と誓いのキス、指輪交換だった。
結婚式ではかなりのイベントだけに、羽田もカメラを撮りまくる。
「では、次は誓いの言葉に移ります。
まずは、新郎のアキラが永遠の愛を誓います!
バッチリ記録しているので、浮気もできませんよ!」
「うおお、やけに準備が良いな……。
俺は、今まで誰一人として信用して来なかった。
友人や義理の家族の中でも、どこか醒めた目で見ていた。
いずれは裏切られて、捨てられるんじゃないかと不安だった。
でも、ダリア・雛子となら、ずっと一生やっていけるという自信を持ちました。
どうか、これからもずっと仲良くしてください!」
「まあまあの誓いの言葉ですな。
準備とかしてない割りには、上手い言葉だったぜ。
これなら、私のダリアを貰っても良いだろう!」
「杉田が決めるのかよ。
まあ、親代わりとしては良い方か……」
俺の誓いの言葉が終わり、次はダリアが誓いの言葉を述べる番になった。
俺への返事と共に、彼女なりの誓いの言葉を述べる。
「アキラ、とても嬉しいです。
私、森坂・ダリア・雛子は、ずっと宋史アキラを愛する事を誓います!」
「ふふ、超キュンキュンしたぜ!
ダリア、最高だ!」
彼女の誓いの言葉のハードルは、思った以上に低かったが、喜んでいる彼女達に水を差すのも悪い。
俺も一緒にキュンキュンしておく事にした。
「ダリア・雛子、俺は君を離さないぜ!」
「はい!
私もずっと愛し続けます!」
俺とダリアが笑い合うと、杉田が弄り始める。
「おっと、誓いの言葉が終わったにも関わらず、もう一度誓いの言葉を言いやがった!
このバカップル共め、幸せになりやがれ!
じゃあ、誓いのキスに移ります。
羽田、ベストショットを逃すんじゃねえぞ!」
「任せといて!
ダリアをメインにして、アキラをオプションにする。
比率としては、ダリアが70、アキラが30くらいだな。
では、ゆっくりと顔を近付けてください!」
俺とダリアはそう指示され、顔を見合わせていた。
改めて見る彼女は、やはり愛くるしい。
キスしたい衝動に駆られるが、杉田と羽田がいる事で、なんとか冷静さを保っていた。
「なんか、みんなに見られていると緊張するね……」
「みんなと言っても、2人だけだけどな……。
深呼吸して落ち着こうぜ」
「うん……」
「ダリアは、目を瞑っているだけで良いよ。
俺が、顔を近付けて口付けするから……」
「お願いします!」
ダリアは、目を閉じて、俺から口付けされるのを待っていた。
変に力を入れておらず、綺麗な顔のままでいる。
逆に、俺が緊張し始めていた。
「行くぞ……」
「うん……」
俺は、ダリアの唇に優しく触れるように口付けをした。
彼女の吐息が感じられ、1分ほど感触を味わう。
柔らかい唇の感触を何度も味わっていた。
「おっと、何度も口付けしております。
やはり口付けは気持ち良いのでしょうか?
本番の結婚式では、何度も口付けするのは迷惑ですよ!」
「このままじゃあ、フレンチまで行きそうな勢いですな。
ちゃんと性欲を制御してくださいよ、アキラ君!」
俺とダリアが口付けを終えると、羽田が撮った写真を見せて来た。
どうやら専用のプリンターまで持って来て、写真を印刷したらしい。
ついでに額縁も用意して、大きな写真をプレゼントされた。
「うわぁ、ありがとう!
ずっと飾っておくね!」
「改めて見ると恥ずかしいな……」
俺とダリアが感想を述べているのも束の間、杉田がどんどん司会進行をする。
「それでは、指輪の交換をしてください!」
羽田が、2つの指輪を持って現れた。
これを交互に嵌め合えというらしい。
俺がダリアに為に買った指輪と、養父と養母から貰った指輪が用意されていた。
どうやら彼らも一枚噛んでいるらしい。
タイミング良く現れ、俺達を確認する。
俺とダリアは、お互いに緊張し始めていた。
「うおお、様になっているではないか!
アキラもダリアちゃんも素敵だよ!」
「まああ、ダリアちゃん、お姫様みたい!
こんな姿が見られるなんて夢のよう……」
2人は涙を流して喜んでいた。
俺とダリアは、指先さえ動かせず、緊張で固まったままだ。
(うおお、杉田と羽田がいるくらいなら問題なかったが、叔父さんと叔母さんがいると緊張する。
2人は、子供のお遊戯会を見ているような心境なのだろうが……)
「同感です……」
俺とダリアは、震える指を何とかコントロールして、お互いの指に指輪をはめ合った。
何とか指輪交換も終わり、緊張が解け始めた。
「一応、この指輪は、結婚前までの物だけどな。
結婚するまでには、もっと良い物を用意してやるよ!」
「いえ、嬉しいですよ!
アキラの気持ちが詰まっています!」
一通り写真を撮って、ケーキ入刀までした。
ここまで来ると、緊張も解れて、お互いに夫婦のような錯覚に陥っていた。
何とか頑張って、ダリアを本当の花嫁にしてやりたいという願望ができていた。
「本番は、6年後だからな!
それまで、みんなが俺達を支えてくれるよ!」
「嬉しいです!
その日を楽しみにしていますね!」
こうして、俺とダリアの結婚式の予行練習が終わった。
ダリアの顔に終始笑顔が見られたので、俺も笑顔で返していた。
無表情だった俺の世界に色が付いたのを感じる。
俺とダリアには一生知られる事は無いのだが、家に帰る道で杉田が泣いていた。
それを羽田が優しく励ます。
「はは、やっぱりアキラが私の初恋の男の子だったよ!
ずっと好きで探していたんだ……。
でも、2人の喜ぶ顔を見たら、邪魔しちゃ悪いってのが分かった。
ありがとう、羽田。
これで、私もすっかり諦められるよ……。
2人には、幸せになって欲しいから……」
「杉田にもきっと良い人が見つかるだろうよ。
可愛いというか、美人だもん!」
「はは、ありがとうよ……」
この出来事を、俺とダリアが知る事は無いはずだったが、ダリアだけは杉田の気持ちを知っていたようだ。
杉田の好意を受け入れて、彼女自身も泣いていた。




