プロローグ
『絶対悪』
未だかつて、人類の中に存在した事のない生まれ付いての凶悪な人格だ。
人は、誰しも良い事を行なって幸せになりたいと感じる欲求を持っている。
凶悪な殺人鬼や極悪人も、自分の生活の中にそれなりの喜びや幸せを感じているはずだ。
自分の考えや行動を制御し、悪を行わなければ良い奴と判断される。
しかし、かつて改心する事さえも無いと判断された生物達がいた。
ノアの日の大洪水前に生息していた巨人達である。
彼らだけは、天使と人間の子供という異形の化け物である事から、全世界に1人として生き残ることはできなかった。
悪い事をしたのは、彼らの両親である天使と人間だとしてもだ。
どんな綺麗事を並べても、結果は絶滅という事だ。
この現代でも、親達の邪悪な行為によって、新たなるネフィリムが誕生しようとしていた。
かつてのネフィリムは体が巨体で、力強いという特徴があったが、現代のネフィリムはそうでは無い。
体は弱く貧弱であるが、恐るべき頭脳があり、世の中を恨んで憎しみを抱いている。
この物語の主人公・宋史アキラもまた新世代のネフィリムだった。
他と違うのは、憎しみが無い代わりに、全てにおいて無関心だという点だ。
たとえ目の前で殺人事件が起きようが、レイプや惨殺シーンを目撃しようが、全ては無関心であり、積極的に交わろうとしなかった。
愛の正反対は、憎しみではなく、無関心なのだ。
無関心も、この世界が悪としている物の1つなのである。
そんな世の中に絶望さえもしていない主人公と、ある少女の出会いと恋愛の物語なのである。