最強で最凶
「で、結局のとこどうなん?」
「何が?」
カノを膝枕しながら私に問いかけてくるヒルコちゃん。
「陽花はんの新しいカムイのカードのことやよ。結局、使いこなせそうなん?」
「ん~……一時間おきに一個使う分には正常に発動するし問題ないよ」
「一時間おきに一個って……。学園の外じゃあんま役に立ちそうにないなぁ……」
「そうでもないんじゃないの?だって正式ライセンスは通ってるんでしょう?」
「うん、ちゃんと通ってるね」
「どういうことなん?カノ」
「わからないの?ヒルコ。つまり陽花は学園の外でも暴発カムイが使えるようになったっていう事よ」
ヒルコちゃんのふとももの上からヒルコちゃんの鼻先を突きながらカノはそういう。
「は……!?それってある意味、最強なんやないの……」
「ほんと最強にして最凶ってやつよね。カムイのシステムやっぱり見直した方が良いんじゃないかしら……」
言いながらふうっとため息をつくカノ。
「今までは学園内だけで済んでたから、まだ笑い話で済んどったけど……。学園外でもってなるともう笑い話にはならへんな……」
「いやいや、さすがに暴発カムイを学園外で使いまくるなんてことはしないからね」
さすがに私そんな見境ないことはしないから。
全くこのカップルは二人揃って失礼な。
そして毎度二人で居る時はカノはなんでヒルコちゃんに膝枕されてるのかな。
そこまでして私達にイチャイチャ振りを見せつけたいのか、問いたい、問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。
あんたらイチャイチャしたいだけちゃうんかと(以下略
「でもまぁ、カノが言う通り、お姉ちゃんは最強で最凶かもしれないね」
月依もカノの言葉を受けてそんなことを言う。
「月依までそう言う……」
「だって、お姉ちゃんのカムイは正常に発動する状態じゃ、私達が普通に発動した時より数倍の威力が出るんだよ?それに暴発カムイでも使いようによっては有効に使えるのは、去年の『魂入れ』で実証済み。そして暴発カムイの中には正常に発動するよりも遥かに威力が高いカムイが存在する」
「それはそうだけど……」
確かに『乱岩弾』の正常な効果は無数の岩を目標物に射出するっていうカムイだけど、私が発動した暴発カムイの『乱岩弾』の効果は無数の溶岩弾をランダムに射出とかいう危険極まりない効果だった。
「正直、私、まともにお姉ちゃんとやりやって勝てる自信ないよ?」
「いやいやいや……それはさすがにないでしょ」
「そんなことあるから、最強にして最凶っていってんのよ、私達は」
そっかー……私、月依より強いのか……。
いまいち実感がわかないなぁ……と考えていると。
「とりあえず、今度アカリが陽花に何てあだ名を付けるか皆で予想しましょうか」
なんてことをカノが言いだした。
「ん。そうだね。私がつけるなら『歩く人間爆弾』とかかな」
「なかなかいい線行ってるわね、月依。じゃあ私は『脅威の爆弾娘』なんてどうかしら」
「おー……。それもなかなか捨てがたいね。ヒルコはどう?」
「せやなー、うちはやっぱり『歩く神々の鉄槌』かなー」
ヒルコちゃん、それ前もいってたよね。
そもそも神々の鉄槌ってそんな物騒じゃないからね!
「あははは、神々の鉄槌とかスケール大きすぎるでしょ。サクヤちゃんはどう?」
「私は……『最凶爆弾娘』でしょうか」
「サクヤちゃんもなかなか良い案出すね」
「いえいえ、それほどでも……」
本人が黙っているのを良いことに、ひと様のあだ名で盛り上がる四人娘達。
月依やカノやヒルコちゃんだけじゃなくてサクヤちゃんまで一緒になって酷い……。
私のガラスのハートはほんとにボロボロだよ!
という話をしていると。
「聞いたよ、聞いたよ!陽花が最強で最凶なんだって?」
「でもでも本当の意味で最強はテラスちゃんなんだけどね!」
「うむ……。私が最強というのはやぶさかではないぞ、桜花よ」
騒がしいアカリに引き続いて、桜花とテラスちゃんが続いて生徒会室へと入ってくる。
「で、皆で楽しそうに何の話してたの?」
私は全然楽しそうに話してなかったからね。
その辺勘違いしないでよね、アカリ。
「あなたが陽花に付けるあだ名についてよ」
カノがアカリの問いかけにそう答える。
「ほうほう。皆がどんなあだ名にしたのか興味はあるけど、実はもう決めちゃってるんだよね」
ですよね。
私が何といおうと今までもアカリの一存で勝手に決まってきたもんね。
今回もそうだろうと思ったよ。
「ほー。今度はどんなあだ名にしたんかいな」
他の皆は興味津々といった感じでアカリ達の方に視線を向ける。
私も死んだ魚のような目をしてアカリ達を眺める。
「それでは発表します。桜花も一緒にいくよ」
「うん。それじゃ、せーのっ!」
「「狂う気と書いて、『狂気の爆発娘』!!!」」
二人は楽しそうに声を揃えて、私の新しいあだ名を口にする。
「そんなの嫌ああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
その言葉に、私の叫び声が生徒会室に木霊する。
なんなのさ、その狂う気って。
私そんな狂ってないじゃない!
むしろ狂ってるのアカリの方じゃない!
後半の方は否定しないけどさ!
まったく酷い言われようだよう……。
そもそも桜花、あんた私の高校の頃からの親友じゃない!
ほんとにアカリに毒されまくっちゃって、私は悲しいよ!
「相変わらず、騒がしいやつらじゃのう……」
そんな様子を見ながら、テラスちゃんは苦笑し、笑みをこぼすのだった。
そして。
その新しいあだ名が学園中に広がるまで三日とかからなかった。
アカリめ……。
そのうち絶対にぜーったいに、なんか面白そうなカムイ有ったらアカリを実験台にしてやるんだから。
オボエテロ……。




