街でアソブ
ごーるでんうぃーくもさし迫ったある日の週末の事。
私と柚木先輩に桜花は揃ってブラウザゲームに勤しんでいた。
「そういえば、陽花ちゃんは今年のゴールデンウイークはどうするか決めてるの?」
キラ付け作業を始めた柚木先輩にそう問われる。
「いえ、特には」
あ、でもあれに行きたいと思ってたんだよね。
四国でやってる街ぐるみのアニメイベント。
東京からは遠くてちょっと行き辛かったけど、タカマガハラからなら簡単にいけそうだし。
「そういえば、四国のアニメイベント行ってみたいなぁなんて思ってました」
「お、気が合うね。ボクもそれ行ってみようと思ってたんだ」
「私も私もー。刃物のアニメの制作会社のご当地なんだよねー」
私の向かいの席から桜花の元気な声が聞こえてくる。
「そうなんだ」
「じゃあ、三人でいってみようか?」
「そうですね。あ、キクリ先生もそのアニメ好きだから誘ってみてもいいですか?」
「かまわないよ。じゃあ四人でってことになるね」
そう言って申請書を書き始める柚木先輩。
柚木先輩、こういう作業本当に手早いなぁ……。
「トンネルの出口は徳島っと」
「へー、あのトンネルの出口って何処にでも設定できるんですねー」
そういえば桜花はそのこと知らないんだっけ。
「修学旅行の時は京都の近くの山奥にでたよ」
「そっかー。結構便利なんですねー」
「一応、神社が近くにないと通じないっていう制限があるんだけどね」
ふむむそうなんだ。
その辺は世界各国自由自在っていう訳にはいかないんだなぁ。
そんなわけで、私達は四国のアニメイベントへと足を運ぶことになったのだった。
―――
そんな訳でやってきました、徳島市。
三日間、街の中心部がアニメ一色に彩られるという特別なイベント。
私達の恰好はというと、私はいつも通りチュニックにジーパンという動きやすい恰好。
桜花と柚木先輩はお洒落なワンピースにパーカー姿。
前回と同じくキクリ先生はちょっとお洒落なボトルネックシャツにワイドパンツ姿。
うーん……やっぱり私って地味な恰好だよなぁ……。
まぁそれが私らしいちゃ私らしいけど。
とりあえず私達は徳島の近くの山にある出口を車で出て、近場の駅まで送ってもらいそこから汽車(電車ではない)で徳島駅へ。
そして徳島駅につくと、もうそこはアニメ一色だった。
声優さんが一日駅長さんしてるし、そこら中にイベントのポスターやら旗が立ってるし。
色んなとこから皆来てるんだろうなぁー。
駅を出てまずはアーケード方面に向かうと、これまたアニメや漫画グッズの特別販売をやっていた。
「ああああああああ!私の好きな漫画家さんのサイン本がある!!!」
立ち並ぶ店舗の一つでそのサイン本を目ざとく見つけた私はさっと手にとりお会計へ。
前々から欲しかったんだよねぇ……。
この人のサイン本、なかなか手に入れる機会が無かったからこういうのってすっごく嬉しい。
「陽花も好きだねぇ……その漫画」
「うん。大好き。この主人公のクールな人が良いんだー。もう一人の主人公の女の子みたいに『好きだああああああああああ』って叫びたくなるくらい」
「筋金入りだね、こりゃ……」
やれやれといった感じでかぶりを振る桜花。
好きなものは好きなんだからしょうがないじゃない。
「桜花だって好きな刃物キャラの絵に声優さんのサインとか入ってたら絶対買うでしょ?」
「そりゃもう即買いですよ、ねぇー先輩、キクリ先生」
「そうだねぇ。絶対欲しくなっちゃうよね、そういうのって」
「でもそういうのってお高いんじゃないのかしら」
「たしか公園でやってるオークションで万を軽くこえるんじゃないかなー」
「う……それはちょっと手が出ないかも……」
そんな会話をしながら私達はアーケードの中の店舗を見て回る。
サイン会の告知やらトレーディングカードの説明会、漫画雑誌の複製原画展やら様々な催し物がされていた。
一通り見終わったので今度は商店街を抜けて、イベント会場のある広場へと向かう。
街の中を歩いていると、普通の街並みなのにそこら中でコスプレイヤーの人を見かけてなんか変な感じ。
「なんか独特の雰囲気ですよねぇ」
「街おこしの一環なんだろうけど、これは成功例だろうね」
「ですねー。観光客一杯ですし」
キクリ先生は物珍しそうにキョロキョロとしている。
私達にとっても珍しい光景なのにタカマガハラの人にとっては尚更だろうなぁ。
そして商店街を抜けた先、ちょっと小さめの橋を渡った河川敷に一つの会場が見えてくる。
「ここがイベントステージみたいだね」
「こんなとこでイベントやるんですねぇ」
背後に川があってなんかこじんまりとした広場だけど、人が橋の上とかからイベント風景見てて何か新鮮だなぁ。
サンシャインのイベントでもこういうのあるけど屋外でこういうのってあんまりないよね。
「噂によると秋は山の上でもイベントやるらしいんだけど、ここでやってたライブのコールの声が山の上の方にまで聞こえてきたんだって」
「へ~……それはすごいですねぇ」
山っていうと橋の先の方に見えるロープウェイのある山のとこかあ。
あんな遠くの方まで聞こえるなんてオタクのコールの一体感すごい。
そんな訳で私達はこじんまりとした広場の一角に陣取りイベントを鑑賞することにする。
よくわからないラジオの公録もあったりしたけど、声優さんのトークが面白くて思わず聞き入ってしまった。
そして面白かったのがオークション。
なんかよくわかんない人がでてきたんだけど、その人のトークが妙に面白くて笑えてしまった。
声優さんのサインの入った商品とか出品されてたんだけど二十万とかで取引されてたのにはちょっとびっくりしてしまった。
司会の人も申し訳なく思ったのか色々後からその場に居た監督さんとかが特典つけてたのが面白かった。
で、しばらくイベントを鑑賞した後は川沿いの物販スペースを見て回ることにした。
ここもなんかレイヤーさんが一杯でなんだかすごいなぁって印象。
でも、道もちょっと狭いから即売会慣れしてる自分でもなかなか動きが読みづらい。
それでもなんとか進んでいると。
「あれ……今すれ違った人、どこかで見ませんでした?」
「ん。ああ、さっきまで公園ステージでイベントしてた声優さんだね」
「ほえー……普通にすれちがっちゃうんですね、ここ」
「うん。会場と控室離れてるみたいだしね」
こういうのもこのイベントの醍醐味なんだろうなぁ。
その辺に普通に歩いてる人の中にも出演声優さん交じってるのかもって思うと、ちょっとドキドキする。
私、ちょっとミーハーなのかも。
川沿いの道を離れ裏の商店街にいってみるとそこもアニメ一色。
ほんと街全体でアニメ盛り上げてるんだなぁって感じる。
他の地方都市もこれぐらいの規模でやってみればいいのにな。
「あとは行ってないのは、映画館だねぇー」
商店街を抜けたアニメショップに行った後、柚木先輩はスケジュール表を見ながらそう言う。
「上映スケジュール的に明日朝一で並べばチケット買えますかね」
「だねー。じゃ、今日はそれに向けてゆっくり休むことにしようか」
「はい」
そんなこんなで私達四人は三日間この徳島でのイベントを遊び倒した。
なんか色々あって楽しかったなー。
うん。また機会があったらこよう。
そう思う私だった。
徳島の暴イベント編。
自分は秋に一回行ったことあるんですが、ほんと独特の雰囲気でした。
街全体がアニメ一色なのは圧巻です。
こういうイベント地元でもやってくれないかなーと思う今日この頃。




