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悪リーマン

作者: 山川左右



俺が勤めているのは、巨悪で有名なあの「ブラックダークマテリアル社」だ。 なに?知らない? お前、毎週日曜に放送されている戦隊と戦っているあの「ブラックダークマテリアル社」だぞ!?

未だ焼肉戦隊ハンナマジャーに辛酸を舐めさせられているが、それもこれまでだ。 そろそろ幹部の方々が動き出す予定だ。次回予告で言っていたからな。

そんな「ブラックダークマテリアル社」だが、「社」とついていることでわかるだろうが、我が社は宇宙をまたにかける大企業だ。当然ブラックだ。二十四時間勤務をさせておいてタイムカードは通常勤務の時間に切らせる生粋のブラック企業だ。残業代なんて一度も貰ったことはない。さすがはブラック(以下略)社だ!

ちなみにその耐え難い所業を耐えた者だけが評価され、ポストが与えられる。つまり私のことだ。

いつか幹部になって、正義のヒーロー戦隊をギタギタにしてやることが夢だが、心臓に持病を抱えている私は、あのスーツを着こなせないだろうから、事務職で前線を行く者の支援をすることに心血を注いでいる。

デザインや機能性をデザイナーと何時間にもわたって相談した末に出来上がったスーツを着て、悪の所業に励みたかったが、それは他の者に任せると決めたのだ。

そんな私が最近課長として配属されたのは、「悪業考案課」である。 読んで字のごとく、悪の所業を立案し、実行のための実用経費などを算出する課である。うちの課で出来上がった案を経理部に送り、予算が組み立てられたら実行班に計画を進めてもらう。 つまり、この課で生まれた悪業が、人々を実際に苦しめるのだ。こんなにやりがいのある仕事もそうない。

そういうわけで、私は毎日張り切って仕事をしているわけだが、今日はいつもより張り切っている。それというのも、私が立案した作戦が、今日の会議では取り上げられるからだった。

我が社では、つねにフレッシュな意見が取り入れられるように、フレキシブルな対応をとっているため、社内の誰でも作戦立案できるよう社内専用サイトで募集がされている。勿論誰もが平等に扱われるように匿名制だ。 私は、その悪業作戦募集箱、通称「悪徳ボックス」に毎週五件以上の投稿をすることを日課にしているのだが、一次審査に通ったのは、今回が初めてだった。勿論今の自分の立場を使えば、一次審査の書類選考を通るのは簡単なのだが、それでは他の投稿者に悪いし、なにより嬉しくない。そのため、作戦を選ぶ側となっても、私はいつも自分の案が落選していく様を見ていた。 しかし、毎日フレッシュな意見を目にしていたからか、私の案が、ついに一次審査を通った。(ちなみに一次審査は、投稿された案を部署の人間が一人につき一つ選び、会議に提出するというものだ) つまり、私の作戦をいいと思ってくれた人がいたということだ!こんなに嬉しいことはない!!

会議が始まり、一人一人、選んだ作戦のアピールをしていく時間になった。私の作戦を選んでくれたのは、新人のアルバイトの子であった。ありがとうアルバイト君。君の給料アップは前向きに検討させてもらうよ。

「えー僕が選んだ作戦ですが、「イヤホンに虫を忍ばせて、人々を恐怖と混乱に陥らせる」作戦です」

うんうん。イヤホン売り場のイヤホン全てをそんな風に改造したら、阿鼻叫喚間違いなしだろう。これは自信作だったんだ!

「あれ?」

ん?

「すみません。間違えました。僕が選んだのは、「お笑い芸人の焼肉店の肉を全部盗む」ってやつでした」

「・・・・・・そうなの?」

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