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案内人は異世界の樹海を彷徨う  作者: 月汰元
第1章 異世界漂着編
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scene:3 ウェルデア市の見習い

本日2回目の投稿です。

 昼飯を食べ、村の北東門を出た時、俺の巾着の中には銅貨六枚と小粒九枚が入っていた。……巾着が軽い、心に不安が湧き起こる。あの跳兎の毛皮を雑貨屋に売ったので銅貨二枚が追加されてはずなのだが、巾着の中身は大して変わらなかった。


 村を出るとすぐに鉈を回収した。これを所持したまま村に入っていたら、村長に巻き上げられていたかもしれないと思う。……隠そうと思った自分に拍手。


 ココス街道を歩きながら、魔法陣みたいなものがある洞窟を離れたのは失敗だったかもと考えた。あそこに日本とこの世界を繋ぐ何かが有ったのだとしたら、あの場所で待っていたら日本へ帰れたかもしれない。

 確かに俺の推理は正しかった。後で知ったが、魔法陣みたいなもの(『転移門』と言う名前らしい)は、二つの月が重なる時に起動し、日本とこの世界を繋ぐ。俺がこの世界に来た日から五日後、それが再び起こったらしい。五日間、あそこで頑張れば日本へ帰れたという事だ。だが、食事や水を考えると不可能だったと思う。


 ノスバック村からウェルデア市まで、歩いて五時間ほどだと聞いていた。俺は少し急いで北東へ向かう。途中、あの洞窟から街道へと交差する辺りに来たが、明確な目印も無いので洞窟の場所が分からない。適当な場所で森に入り北へと進んでも、洞窟を発見する可能性は低いだろう。


「準備が必要だ。十分に準備が出来たら、もう一度あの洞窟に行こう」

 そう決心した俺は、ウェルデア市へと再び歩き始める。もう少しでウェルデア市が見えるという地点。少し上り坂になっており、南へ細長く伸びた森を横断するように街道が作られている場所で、俺はゴブリンの集団に襲われた。相手は三匹、身長百二十センチほど、子供のような体型に醜悪な顔、緑の皮膚、鼻の曲がりそうな悪臭、間違いなくゴブリンだ。ハンターギルドには、魔物図鑑があり、常駐依頼であるゴブリンの特徴は頭に叩き込んで来ていた。


 二匹は棍棒、一匹は錆びた剣を持っていた。一人旅の俺を良い獲物だと判断したのかもしれない。三匹は並んで走ってくる。俺はワイバーン爪の鉈を構えた。この鉈が無ければ逃げていた所だ。ゴブリンたちは威嚇のつもりだろうか、気色の悪い声で吠えていた。


『ギシャグルウウゥ』『グゲゲッ』『ギギッ』

 先手必勝、俺は一番右のゴブリンに鉈を振り下ろす。ゴブリンは棍棒で受けようとしたが、棍棒をスパッと切り裂き肩口辺りを掠めた。手応えから掠めただけだと思ったのだが、盛大に血が吹き出しドタッと倒れた。残った二匹は驚いて攻撃を躊躇する。

「オオッ、凄いぜ」

 予想以上の切れ味に、俺は調子に乗ってしまった。続け様に攻撃すれば優勢なまま片付けられたのかもしれないのに、鉈を構えゴブリンの攻撃を待った。


 剣を持ったゴブリンが俺の腹目掛けて切っ先を突き出す。力任せに突き出された剣だが、殺気が込められており、一瞬血の気が引く。

「ウワッ!」

 俺は悲鳴のような声を上げ、ドタバタと動き辛うじて鉈の柄で弾く。何とか命拾いした。幸運にも攻撃したゴブリンはバランスを崩し身体を泳がせている。俺は懸命にゴブリンの腰を蹴る。ゴブリンが転がるように離れた。


 残ったゴブリンが上段から棍棒を振り下ろしたのに気付いた。俺は涙目になりながら鉈の柄で受け止める。クッ……思った以上にゴブリンの力が強い。成人男性並の力が有るようだ。力負けした俺は、一歩二歩と後ろへ下がる。ゴブリンが勝利を確信したかのようにニヤリと笑う。……誰か助けてぇー……声なき悲鳴を上げる俺。


 ゴブリンの顔の先に緑色の裸足の足が目に入る。俺はゴブリンの足の甲を力一杯踏んだ。『グギャツ』と大声を上げ、ゴブリンが棍棒を引いた。俺はバランスを崩しながらも鉈を横に振る。奴の胸に鉈が食い込み、その胸筋を抉った。ゴブリンは前のめりに倒れる。

「あ、危なかった」

 生き残っているのは剣を持ったゴブリンだけ。頭を振りながら起き上がった奴は、倒れている二匹を見て怖気づいた。回れ右して逃げようとする。興奮している俺は駆け寄って斬り付ける。渾身の一撃だった。首に当たった鉈が、それを断ち切る。


「ハアッハアッ……た、倒したぞ」

 俺はこの戦いで気付いた。鉈は強力だが、それを振るう俺は未熟だという事。身体が思った以上に動かない。それほどスピードの無いゴブリンだから倒せた。もっと素早い魔物だったら死んでいたのは俺だ。恐怖が俺の身体を震わす。


「な、なんて怖い世界なんだ。……強くなろう。強くならなきゃ死んじまう」

 このゴブリンの襲撃は、俺の心にトラウマを植えつけた。この日から強くなる為に何をすれば良いか常に考えるようになった。


 落ち着きを取り戻した俺は、ナイフを取り出し、ゴブリンの頭部にある小さな角と肝臓の隣にある魔晶管を剥ぎ取った。これも魔物図鑑から得た知識で、この二つはギルドで換金できる。角はともかく、体内にある魔晶管を取り出す作業は、吐きそうになる。初めて見る魔晶管は灰色の試験管のような物で光沢があった。体液が零れないように魔晶管の口を丁寧に縛り、角と一緒に背負い袋に仕舞う。


 ウェルデア市に向け再び歩き始める。程なくすると高い壁が見えて来た。大きな街をグルリと囲む高さ七メートルの壁、それは要塞のような印象を街に与えている。数隊の隊商が門の入口に並んでいる。門番の兵士が馬車や荷車を検査をしているようだ。


 馬車や荷車の列とは別に旅人だけが並んでいる列も有った。俺はそちらに並んだ。一〇分ほどで俺の順番が来た。手配書らしいものと俺の顔を見比べてから。

「身分証が有るなら出せ」

 俺はハンターギルドの登録証を出した。兵士は確認しながら薄ら笑いを浮かべる。

「見習いか、入街税は銅貨五枚だ」

 ここでも金を取るのかよ。なけなしの金が消えた。

「おじさん、ハンターギルドはドコ?」

「真っすぐ行け。左側にある」

 愛想のない兵士だった。まあ、愛想の良過ぎる兵士も頼り無さそうで問題だけど。俺は街に足を踏み入れた。


 大きな通りは石畳になっており、行き交う人が多い。道の両側には庶民の家が立ち並んでいた。木造二階建てのものが多く、壁には漆喰が塗られていた。街の中央に近付くに連れ家が大きくなり、住居ではなく商店や宿屋、工房なども増える。ウェルデア市はエンバタシュト子爵の領地で、子爵の居城が東側の丘に建っていた。四本の塔に囲まれた優雅な石造りの城、子爵の領地は裕福なようだ。


 道行く人々に目を向けると、一番多いのが赤髪や金髪の白人で、次が猫人族だった。

「おいおい……二足歩行の猫だよ。アッ……小さいけどちゃんとした手だ。指も五本有る」

 俺は興奮していた。ファンタジー小説に猫耳少女とか出て来るが、この世界の場合、猫を人型にした生物のようだ。昔流行ったという『なめ猫』の画像を思い出す。猫に学ランやら、ライダースジャケットを着せている奴だ。身長は比較的大きな猫人でも一五〇センチほどで種族的に小柄なようだ。

「猫人が居るなら……」

 俺は通りや広場を見回す。発見……犬人族………ん?……尻尾がない。ブルドック顔のオッさんだった。


 中央広場の手前、左側にギルドが有った。天秤に金貨と剣が載っている看板がハンターギルドだ。石造り三階建ての建物に訓練所が付いた大きな施設。両開きのドアを開き中に入ると綺麗な受付嬢のいるカウンターが並んでいた。……キターッ! ギルドの受付はこうでなくっちゃ。オッサン、ノーサンキューだよ。


 俺は買取受付と書かれているカウンターへ進む。

「いらっしゃいませ、どんな御用でしょう?」

 栗色の髪をした二十歳くらいの美人だった。唇がプクッとして色っぽい、胸もデカイしスタイルもいい。……緊張した俺は彼女の言葉を聞き逃した。


「どうかされましたか?」

「いえ、ノスバック村で見習いになったばかりなんですけど、これ」

 俺はゴブリンから剥ぎ取った角と魔晶管をカウンターに出す。

「常駐依頼の換金ですね。登録証も一緒に提出をお願いします」

 俺は序ノロと書かれた登録証をカウンターに置く。

「確認しますので、少々お待ちください」

 そんなに待つ事もなく、彼女が銅貨と登録証をカウンターに置いた。

「ゴブリンの角と魔晶管が三匹分で銅貨十五枚になります。お一人で倒されたのですか?」

「はい」と答えながら、銅貨と登録証を仕舞う。

「優秀なんですね。今後も頑張って下さい」

 俺にお礼を言ってカウンターを離れた。……フウッ、美人の前に出ると何で緊張するんだろう。


 ギルドを出ると外は暗くなり始めていた。俺は宿屋を探した。中央広場の周りに三軒の宿屋が在った。右から上・中・下という感じだろうか。俺は迷わず、下の宿屋へ向かう。

 不機嫌そうなオヤジが俺をジロリと睨んだ。

「泊まるのか?」

「部屋は空いてますか?」

「一泊銅貨五枚、飯は無しだ」

 この宿屋は素泊まりだけの宿らしい。俺は金を払い、部屋の鍵を貰う。腹は減っていたが、外に食べに行くだけの元気が残っていなかった。二階の角部屋に入りベッドに腰掛ける。


「明日からどうしよう」

 異世界に放り込まれて数日、ゆっくりと考える時間もなくドタバタと旅して来た。いい加減基本方針というものを決めるべきだと思った。第一の目標とすべきは帰還方法の発見だ。それには、あの洞窟を調査する必要がある。


 それは容易ではないと理解していた。洞窟の付近は、平地にちょっとした山がポツポツと在るような特徴のない場所だった。洞窟自体は小高い山の麓に在ったが、周りには似たような山が数多く在る。ワイバーンと遭遇した場所から、洞窟へ戻って来れたのは、目印となる獣道に沿って移動していたからだ。南へ続く獣道は無かったので、藪を掻き分けながら街道へ出た。


 洞窟を探すには点在する山を一つずつチェックするしか無い。しかし、魔物の住む森を歩き回るには、自分の実力が不足している。少なくとも弱小の部類であるポーン級魔物を瞬殺するくらいの実力がなければ、生きて探し出せない。俺は正直そう思った。


「素振りくらい始めるか。色んな角度の斬撃を混ぜながら三〇〇回から始めよう」

 翌朝、日が昇る頃に起きた。異世界の夜は短い、碌な照明器具がない世界では就寝時間が早く、目覚めも早い。宿屋の裏にある井戸の脇で柔軟体操をしてから調息を行う。


 調息というのは気功を修行する場合の呼吸法である。昔、少しだけ武術を習った時に教えてもらった呼吸法だ。体内の邪気を払い、大気中の気を取り入れると教わったが、理解出来ず教わった通りに繰り返していたのを思い出す。鼻からゆっくり息を吸い、微かに開いた口から吐き出す。意識は身体の中心である丹田(根源的生命力である『気』を凝集・活性化する体内部位)に置く。吸い込む時間が長いほど良いと教わった。続けると腹部が暖かくなってるような気がする。調息を行うとリラックスし練習に集中出来ると習った。三分ほど行ってから素振りを始める。


 自家製である鉈のバランスはお世辞にもよろしくない。その鉈を使っての素振りは思った以上に大変だった。三〇〇回のノルマが終わった時、肩で息をする俺は全身から汗を流していた。水浴びしてさっぱりしてから、部屋に戻り今日の予定を決める。


「ギルドに行って、いい依頼がないかチェックして、いい依頼が無ければ常駐依頼の薬草採取でもしよう。それが終わってから、魔導寺院へ行って神紋について調べよう」

 正式なギルド員になるには、大地の下級神バウル様の神紋を受けるという課題がある。その神紋について調べようと思っていた。


 宿屋を出てギルドへ向かう。途中、朝飯代わりの『キャスラ』という食べ物を買って食べた。塩味のチヂミという感じだった。小麦粉と葉野菜の微塵切りを混ぜたものを鉄板の上で焼いた簡単な料理だった。味付けは塩だけの残念なものだが、空腹が最高の調味料だと知った。二枚買って小粒六枚だった。


 ギルドに入り依頼票のボード前に行く、既に二人のハンターが依頼票をチェックしていた。十三歳くらいの赤毛の男の子と同じ年代の金髪ポニーテールの女の子だった。


「カル、今日はポポン草、それとも穴兎あなうさぎ?」

 ポニーテールの女の子が声を上げた。鼻の周りにソバカスが少しあるが可愛い子だった。

「両方だな。ポポン草を探しながら、穴兎の巣穴も探そう」

「南の丘?……あそこはスライムが出るからヤダなぁ」

「スライムぐらい怖がるなよ。オレたちはハンターなんだぞ」

「だって、酸が顔にかかったら酷い事になるのよ。私たち治療薬なんか持ってないんだから」

「大丈夫だよ。気を付けていれば」

 男の子の方は、身長一五〇センチほどで粗末なシャツとズボン、腰はベルトの代わりに紐を締め、武器としてはナイフだけを持っていた。どう見ても一人前のハンターではない。女の子の装備も同じ様なものだった。


 女の子が諦めたように溜息を吐いた。

 俺は二人の横で依頼票を見ながら聞き耳を立てていた。南の丘にはポポン草と穴兎、それにスライムが居るらしい。依頼票は、ノスバック村より種類が豊富だった。常駐依頼は、ポポン草、モシャク草、ゴブリン、長爪狼、穴兎と増えている。


 ポポン草は傷薬、モシャク草は解毒薬の素材となる。どちらも一〇本で銅貨五枚。長爪狼は討伐報酬が銅貨五枚で、毛皮は銅貨三枚が相場らしい。穴兎は討伐報酬が銅貨一枚、毛皮と肉が銅貨一枚だとメモ書きされていた。


 通常依頼の中で序ノロに出来るものは、ほとんど無かった。例外は一つ、スライムの魔晶管を採取する依頼だった。魔晶管一本が銅貨二〇枚と高額だが、スライムから魔晶管だけを剥ぎ取る方法が分からない。

 俺はギルドに在った魔物図鑑と植物図鑑で念入りに調べ、それぞれの特徴を頭に叩き込んだ。


 その頃になると先ほどの二人の姿はなく、代わりにゴツイ兄さんたちがボードの前にたむろしていた。

「俺も南の丘に行こう。狙いはポポン草とモシャク草だ」

 あの二人はポポン草と穴兎を狙うようだったが、穴兎の報酬は安い。俺はモシャク草を探す事にした。ギルドを出る前にカウンターで所属をウェルデア支部に変えた。門を入る時に毎回入街税を支払う必要がなくなるからだ。俺は中央広場から南へ行き、南門から外へ出た。


 ウェルデア市の南側は、広々とした草原が地平線まで続く起伏に乏しい地形であった。点々と小山があるが、あの洞窟の在る森とは違い樹木が少ない。そのお陰で遠くがよく見え、右前方にココス街道が確認できた。


 ギルドに居た見習い二人が丘と呼んでいたのは、この小山の中の何れかだろう。俺は左手の方にある小山に向かう。何となく選んだ山だった。モシャク草はタラリの木の傍に生えていると植物図鑑に書かれていたので、タラリの木を探す。タラリの木は柳に似た木で、夏に赤い花を咲かせると書かれていた。


「タラリ発見!」

 二〇メートル先に柳を小さくしたような木を見つけた。歩み寄り周囲を探す。苦労することなくモシャク草を見つける。四本のモシャク草を採取。


「ウッ、スライム発見」

 こいつの魔晶管を傷つけずに剥ぎ取れたらいいんだが。スライムが消化液でもある酸を持っていなかったら、スライムの身体に手を突っ込み魔晶管をもぎ取れるのに。……ゲッ、酸を飛ばしやがった。俺はステップして避ける。スライムは緑の身体をくねらせて移動する。そして、横にプルプル震わせるのは、酸を飛ばす予備動作らしい。


 鉈を振り上げ魔晶管目掛けて斬り付ける。スライムの身体をスパッと両断した。魔晶管から体液が零れ、スライムが形を失くす。

「アッ……酸が鉈の柄に付いた」

 酸の付いた柄の部分が変色する。俺は酸を雑草に擦り付け綺麗にする。スライムは嫌われている。攻撃すると武器がダメージを受ける場合が有るからだ。ワイバーンの爪自体は何とも無いが、木の柄は酸に弱いようだ。


「失敗した。また、槍を作っとくべきだった」

 前に製作した槍は、鉈を作った後捨てた。その時は不要だと思ったのだ。適当な木を探しながら小山を目指す。真っ直ぐな灌木があったので、切り倒して槍にする。鉈が有るので楽だ。また、タラリの木を見つけた。スライムが三匹いる。左端のスライムに忍び寄り槍を突き出す。命中、俺はスライムを狩るコツを会得した。


 三匹を瞬く間に倒した俺は、モシャク草を探す。八本見つけた。更にポポン草も二本見つける。何だか運がいい、この調子で行こう。小山に到着した。斜面は雑草が生い茂っていたが、所々に穴が開いていた。


「ははーん、あれが穴兎の巣か」

 右手の方で何かが動いた。ガサッ、雑草が鳴り穴兎が素早い動きで巣穴に飛び込んだ。大きさも形も普通のウサギだが、爪だけがモグラのように長く伸びていた。

「素速い、弓でもないと仕留められないぞ」

 俺は試しに穴兎を狩ろうとした。身を低くして穴兎にそーっと近づき……逃げられた。槍を突き出す暇もなかった。もう一度、息を殺して近づき槍を……逃げました。

 次はある程度近付いてから槍を投げた。……ハズレ。大きくハズレました。それから数匹の穴兎目掛けて槍を投じたが、一匹たりとも倒れた奴はいなかった。……クソッ!


「こんな槍じゃ無理なのか。今日は予定通りポポン草を採取しよう」

 小山の周りを一周するとポポン草が十八本採取できた。その間、スライムが六匹現れ、酸を飛ばされた。全て倒したが、一回だけ避け損ねて腕を掠めた。シャツが変色する。俺はシャツを脱いで水筒の水をかけた。

「今のは危なかった。疲れで動きが鈍ってるのか……戻ろう」


 ポポン草やモシャク草は、それほど珍しい薬草ではない。それでもハンターギルドで常駐依頼となっているのは、生えている場所が魔物の生息地でも有るからだ。薬師にしてみれば、安い料金で薬草の採取をやってくれるなら助かる。見習いは、薬草採取をしながら危険に対処する術を学べる。両者に利点があるのだ。



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