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超能力モノ  作者: ぺぺぺ
1/2

前置き

人間はほんの数%しか脳を使用していないとされる。

即ちその脳をフルに活用する事ができるならば、どんな人間も天才になり得ると言うのだ。

しかしこれは全くの間違いである。

脳の機能していないとされていた部分にはちゃんと他の部位を補佐すると言う役割があり、機能していない部分など存在しないのだ。

つまり凡百は一生凡百のまま、天才には永遠になれない訳だ。

それはどんな条件でも同じだった。

ある日、世界最大の大国から、『超能力』の存在が正式に発表された。

それにより念動力、発炎能力、透視能力や予知能力の存在が世界中に知らしめられたのだった。

事の発端は超能力者による大規模なテロだった。

たった1人と数人の協力者の為に、空港が1つ壊滅し、数千人の人が亡くなった。

当然その全ての情報を国内に押し留めることも不可能で、やがて民衆やマスコミはテロを行った超能力者にまでたどり着く。

あえなく大国は情報を開示、超能力は白日の下に晒されることとなったのだ。

悲惨な事件をよそに、世界中の人々は喜びを隠せないでいた。

残念ながら当然のことなのだろう、それほどまでに人々の超能力に対する期待は大きかった。

しかし、それも長くは続かなかった。

多少の後天性はあるものの、超能力が使える者は限られており、使えない者にはどう頑張っても超能力は使えないからだった。

落胆があった。

そして、次に恐怖が起こった。

これも当然だろう、何と言っても超能力を世に知らしめたのはテロリズムなのだから。

人々はやがて、戦略兵器と共に生活するのを良しとしなくなった。

迎合するように各国は超能力者を公的機関で制限の下生活させることを義務づけた。

つまりは軍事利用、国家への献身を酷く義務づけたのだった。

不自由で、籠の中で飼われるような生活。

抑圧されたフラストレーションは各地で新たな惨劇を生んだ。

惨劇は収束と共に超能力者の団結を呼び、その圧力に大国はとうとう法を変えることになった。

『第一に、超能力者は公的機関の許可なしにその能力を使用しないこと。』

『次に、超能力者は自らの能力の内容を国に開示し、その能力に応じて何らかの義務を負うこと。』

『以上を遵守する限り、超能力者は他の国民と同じ権利を得ること。』

正直、穴だらけの法律だった。

現状、能力の有無は自己申告のみでしか分からないため、黙っていれば何も起きないのだ。

そのため、治安は悪化の一途を辿り、往年の事件を民衆にちらつかせる結果となる。

そしてとうとう、その時が訪れた。

自らを『ミスター』と名乗るその男は、強力な念動力を持っていた。

『ミスター』が手首を返すだけでトラックがビルの壁に突き刺さり、警官や軍の射撃は捲れ上がった道路に阻まれた。

誰もが死に恐怖した。

『ミスター』がこの世の支配者になると、誰もがそう信じて疑わなかった。

ひっくり返った戦車、所狭しと散らばる瓦礫や死体を眺めて『ミスター』は満足げに笑った。


と、その笑みがひしゃげて歪んだ。


残骸から砲弾のように飛び出した影は『ミスター』へと一直線に突き刺さり、強烈なパンチを『ミスター』の顔に叩き込んだ。

誰もが触れることすらできなかった『ミスター』は、これまで自分がしてきたようにビルの壁面に突っ込んだ。

口から血が溢れ、視界が歪み、耐え難い苦痛が『ミスター』を襲う。

『ミスター』は信じられなかった。

煮えたぎるような怒りを込めて相手を睨みつける『ミスター』。

しかしどうしたことか、彼を殴りつけたのはスーツ姿の小男だった。

冷静さを欠いていた『ミスター』は相手の評価を見誤った。

そこら中にある物を全て叩きつけ、小男への反撃、いや報復を試みる。

これが拙かった。

とっとと尻尾を巻いて逃げていれば、まだ助かったかもしれないのに。

小男は嵐のように迫り来る瓦礫をものともせず、それを枯れ葉のように吹き散らした。

あんぐり口を開ける『ミスター』の顔面に、小男はありったけの拳を浴びせた。


崩れ落ちる『ミスター』の前に、人類史上最初のヒーローが生まれた。


ただの営業マンだと言うその小男は、『ミスター』と同じく超能力者だった。

瞬く間に彼は時の人となり、人々は超能力に対する認識を変えつつあった。

人々は彼に尊敬を込めて、ただ一人の人『ザ・ワン』と、彼を呼んだ。

この一件と『ザ・ワン』の政府直属化をきっかけに、法律を遵守する超能力者が増え、犯罪率も世界規模で減少したのだった。


世界ではあらゆる企業、機関、政府に所属するヒーローが増加していた。

ヒーローをサポートする条例、法律も増え、企業などはそれを謳い文句にすらし始めた。

市民の目の前で悪人を退治するヒーロー。

その存在が人々に与えた希望と安心感は計り知れなかった。

しかし、問題がない訳では無かった。

派手な能力によって起きる周囲への被害は増加し、少数だったがその被害者達による『反ヒーロー団体』なる組織が発足した。

政府や企業もできるだけの保障を用意したが、直接謝罪するヒーローは少なかった。

英雄に酔いしれた民衆が彼らに耳を傾けることはなかったが、次第にヒーロー達のモラルの低下は浮き彫りになっていった。

同時に、超能力犯罪者の強力化が進んで行った。

これまで単独で行われることの多かった犯罪行動は、徒党を組んで行うのが主流になっていた。

それに伴う被害の甚大化、ヒーローの敗北も当たり前のように増加していった。

ヒーローと互角以上に闘う彼らは次第に畏怖の念を込めて悪役(ヴィラン)と呼ばれるようになる。


強力なヴィランの台頭、精神的に幼いヒーロー、高揚感に酔いしれているだけの民衆。

この世界は誰が思うよりずっと危うかった…。



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