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異世界犬妖精 -Demi god of talent-  作者: 亭恵
 城塞都市の犬妖精
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聖国侵攻と暗躍するケモミミ達

 大変期間が開いてしまい申し訳ございません。

 お待ち頂いていた奇特な方がいるのなら重ねて申し訳ございませんでした。

 今回は少なめですが、これから少しずつペースを上げて良ければ良いなと思っています。

 御付き合いして頂ければ幸いです。

 アリハト王国歴389年 虚の月二十五日。

 王国西部国境砦の外壁の上で、国境方面防衛軍の司令官であるドルネは国境の監視任務に就いていた。

 ここ数十年、西の国境は小競り合いの一つすら無いほど平和であり、この砦への赴任は左遷の代名詞の様に扱われている。

 かくゆう彼女も、前任地において上官と男がらみで揉めて、この場所に飛ばされたクチである。

 国境方面は見晴らしの良い平原になっており、かなり遠くまで見渡せた。

 今日も憎たらしいほど青く晴れた空に緑の平原が良く映えている・・・・・・・・はずだった。

 彼女にとって、いつも通りの見慣れた風景のはず・・・・・・・・・・だったが、なぜか違和感を覚えた。

 目を凝らしても何も見えないのに何かがおかしい。違和感がどんどん大きくなっていき、それが一線を越えた瞬間、突然霧が晴れた様に風景が一変し、土煙を上げて迫って来る平原を埋めつくすほどの大軍が目に飛び込んできた。

 異常なのは国境の監視をしている多くの兵士全員が同じ物を見ていたはずなのに全く気付かなかったこと。

 後に分かることであるが、聖国の神器である“夢幻の灯火”の効果によって認識の改変がされていたのだが、そのことは彼らには知る由もないことである。

 突然の異常事態。だが、彼らは直ぐに混乱から脱し、防衛戦の準備にかかった。

 彼らは色々と問題は多かったが、こと能力においては一般的な兵士の力量を超えている。恐らく同人数で組織として動かせれば王国最精鋭の第一騎士団とも互角に戦えるだろう。

 組織として動かせればだが・・・というか、もし軍上層部にその器量があれば彼らはこの場所には居なかっただろう・・・・・・。


「畜生!!!絶対ヤツラおかしいぞ!!!」


「障壁!!急げ!!!」


 とはいえ彼らは気付くのが遅過ぎた。既に相手は大規模攻撃魔術の用意を済ませいる。

 本来、砦にはそれに対する魔術障壁が用意されているのだが、

 神器による増幅を受けた、明らかに過剰な火力の雨が降り注ぎ砦は吹き飛んだ。

 その後もその暴虐は止まらず、軍の進路にある村と町を片っ端から焼き払いながら王国首都、シルバーバレーへと真っ直ぐ進んでいった。

 

「・・・・・・・・!?」


 再び意識を取り戻したドルネの目に飛び込んできたのはソードウルフの牙の様に滑らかな表面を持った石材で出来た天井だった。

 現状を把握するため、痛む体を押して横を見ると綺麗に並べられたベットに自分と同じ警戒任務に就いていた同僚たちが寝かされている。

 既に目が覚めている者とまだ意識が戻らない者が半々ぐらいで、全員治療がされており命に別状は無さそうだった。

 安堵して改めて周囲の状況を確認すると奇妙な部屋であった。

 まず、天井や床は一切継ぎ目や加工の後が殆ど無く、ベットは丸くした鉄材で作られており、全てが白い色に統一されている。

 使われている布団やシーツも全て真っ白で、無色透明なガラスが嵌め込まれた大きな窓から日光が降り注いで全てが目が痛くなるほど白さが際立っている。

 普段彼らが使用している衣類は染色すらされておらず、染色にしても防腐や防水のためのというのが一般的である。

 そのため、色は暗い色が中心であり、目が痛いほどの純白など金をいくら積んでも手に入れられない色だ。

 それなのに、この部屋は全てが白一色。

 目を覚ました者全員が部屋の雰囲気に呑まれ声を上げることが出来ないでいた。

 ・・・・・・・実を言えば日本でいう総合病院の病室を規模を大きくした物という感じのなのだが。

 残念ながらここは衛生の概念も普及していないファンタジーな世界。彼らの大袈裟なリアクションにツッコミを入れる人はおらず、傍から見ると少々間抜けな沈黙は続いていくのであった。

 沈黙の空間は入口のドアが開く音と間延びした声によって破られた。


 「はいはい~~西部国境砦に配属されておられた~第二十四衛士隊の皆さん、ついでに王国特殊偵察班の方三名ですね~~。あ、大丈夫ですよ。誰が特殊偵察班かは秘密にしとくんで。」


 入ってきたのは柔和な笑顔を湛えた開いているかどうか分からないほどの糸目の女性であった。

 マルノと名乗った彼女は一見して人のよさそうな風貌であるが非常に胡散臭い。ごく一般的な格好をして、ごく一般的な外見をしているのだが、何故か胡散臭い。むしろ、胡散臭さが服を着ているようだ。もうこれは一種の才能と言っていいと思われる。

 そして、口にした内容はさらに胡散臭く、その場にいる全員が警戒するに値する物であった。

 王国特殊偵察班とは、通常の部隊に密かに紛れ込み情報収集を行う秘密部隊である。

 書類上は国王の直属であり、隊員の情報は当然のことながら秘密であり、機密情報の中でもかなり上位に分類されている。

 この部隊にも当然配属されているのは皆分かっていたが、下手に詮索すると最悪、反逆罪になる可能性もある。皆、そんな事態は嫌なので、真っ当な王国軍人は彼らについて深入りをしない。

 だが、目の前の女はその配備人数を知っており、恐らくは誰が偵察班員か分かっている。

 この時点で彼らは布団をかぶって何も聞いていなかったことにしたいと思っていた。

 全員が不審の目をを隠そうともしない中、彼女はそれを一切気にせず、笑顔を湛えたまま話を進めていく。

 その様子に、敏い者達は気付き始めた。どうも自分たちは此処にいる時点で拒否権は無いのだということに。


「とりあえず、ゴチャゴチャ言うより見てもらった方が早いでしょう。トップの方達はついてきて下さい。」

 

 そう一方的に言うと彼女は背を向けて歩き出した。

 ドルネと主な幹部達は顔を見合わせて深いため息をついた後、他の選択肢を見つけることも出来ず、彼女に付いて歩き出した。

 病室を出た通路は馬車が六台以上すれ違えるほどの大きく、通路を挟んでさっきの部屋と同規模の部屋が幾つかのあるのが確認出来る。

 奥には階段も見え、窓にはガラスが嵌め込んであり、日の光が差し込んで非常に明るい。

 構造から全体を推測するとこの建物だけで並みの都市を超える規模であり、自分たちが広いと思っていた病室がただの一室に過ぎなかったことに全員が衝撃を受ける。

 明らかに自分たちの権限と容量を超えた、国家レベルの問題に巻き込まれつつあるということに、全員の胃がキリキリ痛み、ガンガンと頭痛が起きる。


(他国?いや、これほどの物が作れる国なんて無いぞ・・・・・・)


(王国にコレが作れるか・・・・・・・・・無理だな。)

 

(((((コレ、明らかにヤバイ展開だろ・・・・・・・・。)))))


 表面上は大人しく付いて行く彼らだったが、そこは優秀な兵士、周囲を潰さに観察しつつ頭はフル回転している。

 もっとも、さすがに魔術があるとはいえ基本、この世界の文明レベルは中世程度である。

 ミスリル鋼筋入り魔術強化コンクリート製七階建てビルディングは彼らの理解の外にあり過ぎた。

 優秀なはずの頭も基盤になる知識が全く無ければ、ただ空回りするばかりである。


 しばらく歩いてゆくと開けたところに出た。

 ビルの三階部分の外縁部に大きな広場が設置されており周囲を見渡すことが出来るようになっていた。

 そこから見える都市の威容に彼らは息をのんだ。

 この建物を中心にして石畳の馬車十台が並べられるほどの広さを持つ道路が数本放射状に伸びており、全く同じ形をした石造り二階建ての頑丈そうな家屋が規則正しく並んでいる。

 幾つかの区画に分かれたその周囲には農地や放牧地が整備されており、その周囲を非常に頑強そうな城壁で覆われている。

 規模こそこの国の首都に劣るものの、その考え抜かれた機能性や居住性は彼らが見たことのあるどの都市をも凌駕していた。

 

 「お待たせいたしました。」


 その声に我に返ると、広場には先着が何人かいた。

 二つの集団に分かれており、その一つの集団には見覚えがあった。

 というより自分たちの砦の近郊に配置されているはずの同僚たちである。恐らく彼らも自分たちと同じ経過を辿ってココにいることは容易に予測がついた。

 そして彼らから離れて集まっている集団を見て、比喩ではなく息が止まった。

 コボルトは王国において比較的良く見る亜人種であるが、そこにいる彼らは発する魔力が尋常ではなかった。毛色も澄んだ青や赤など見たことの無い色をしており、中には瞳の形が特殊な魔眼持ちさえいた。

 魔眼持ちはエルフなど魔力の多いと言われる種族にすら稀にしか現れ無いものであり、弱小種族と呼ばれているコボルトが持っているなど聞いたことが無い。

 まあ、それは何とか納得出来るとして、その奥にいる強靭そうな外殻に覆われた昆虫人や人の形をしたスライムなどは明らかに自分達とは生物としての格が明らかに違う。

 自分達では問題にすらならず、明らかに軍隊をもってしないと相手にすらならないだろう。

 さらにその奥にはそんな彼らすら凌駕する存在がいた。

 それは自分達を見回すと口を開いた。

 

「ふむ、全員そろった様じゃな。まずはと自己紹介から。ヴァルヘルム=ハムベルトという。主殿は気軽にハムさんと呼んでおるから、そう呼んでくれ。」


 

 

 

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