ある日森の中、侯爵に出会った。
五月中に投稿するつもりがダメでした。
森の中を障害物を擦り抜けながら、時速300キロ以上で疾走。前世の技術水準ですら狂気の沙汰とも言える無茶ですが、試行錯誤の末に完成したマシンは慣性制御術と移動補助術を駆使して軽々と悪路を走破し、木々の間を擦り抜けていきます。
「うんうん、制御も術式も今度こそ問題無いですね。良く出来ましたね。」
首筋を叩いて褒めてあげると、嬉しそうにいなないて応えてくれました。いやあ、三か月もこれに掛かりっきりでしたが、ようやく形になってくれました。この世界に来てから此処まで手こずったのは始めてじゃないでしょうか。
開発当初はマシンをゴーレムの術式か何かで制御すれば良いとか考えていたんですが、これが予想以上に難航しました。バイク形態は前世の知識を流用すれば簡単だったんですが、馬形態の制御が非常に難航しました。
良く考えれば分かることだったんですが、生物には百を超える大小様々な関節と筋肉、さらにそれを制御する脳や神経が在ります。馬の動きを再現するためには、これらも再現しなくてはならなかったのです。
いやあ、正直舐めてました。二足歩行ロボットが高度と呼ばれる訳が分かりましたね。
最終的には馬型の魔獣の魂から術式を作り出しすという反則技を使う破目になってしまいました。結果、『九十九神』といわれる従属神になってしまったんですけど、特に実害も無いですし便利だから良いいでしょう。
苦労した甲斐があって神獣を軽く凌駕する走破能力と戦闘能力、高い知性を併せ持つ超高性能神造ゴーレム。名前は百鬼夜行から取って、ヤコウと名付けました。良く懐いてくれて、とても癒されます。モフモフでないのが残念ですね。
そんなこんなで現在、最終調整を兼ねて遠乗りの最中です。風を切って樹海の木々を擦り抜け・・・・急停止しました。
「 あれ?」
感知領域に妙な反応が引っかかりました。何ですかね、コレ??
魔獣じゃないですし、拠点の住人とは違いますし・・・・アレ、魔力の質も大分違う、属性の偏りが少ないですね。とはいえ、癖が無い代わりに総量が小さく、器用貧乏な印象ですね。
・・・・・・アレ、ひょっとしてコレ、人族ってやつじゃね。
ああ、そういえばそんなのも居るってスーさんから聞きましたね。一応、この世界で一番、数多いんでしたっけ。普段一緒にいる皆さんに比べると個性が無いので本気で忘れてました。反応は三つ、三人ですか。
・・・・でも大丈夫ですかね。拠点で茂っている竜界樹のお陰で、この樹海の魔獣のレベルは以前に比べて格段に上がってまして、安全な経路とかの知識が無いと結構酷いことになるんじゃないかと・・・・。
あれ、この反応は・・・・魔獣に追いかけられとる。すでに遅かったか。まあ、見捨てるのもなんですし、犯罪者とかだった場合は改めて危険地帯にでも転移させてやれば良いですか。
「お願いしますね。」
ヤコウの首筋を軽く叩いて頼むと、一声啼いて応えてくれます。
「GYAOWWWWW!!」
・・・・いや、性能を優先して組み上げたので発声器官の方は在り合わせで適当にしたんですが・・・・・・やっぱり違和感バリバリですね。馬というより、ドラゴンの鳴き声ですから、コレ。気付いたのが9割方組み上げた後だったので、まあこれでも良いかなと・・・・まあ、その内気にならなくなるでしょう。
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さて、とりあえず、まだ三人とも生きてますか・・・・ヤコウの走力のお陰で一分も掛からずに現場に辿りついた自分は、現在姿を隠して例の人間達を観察中です。助けるのは簡単ですけど変な奴らだったら面倒なことになりかねませんし。
おーおー、追われてますね~~。アレはフレイムロックベア、中位魔獣の中で下級に属する魔獣で、平たくいうと溶岩で出来た熊ですね。肉は癖が強いですが味は良く、何より食べられる部位が多いので、現在の樹海で大型の魔獣の餌として生態系の下の方を支えてくれています。良くワイバーンの幼生とかに食べられてますね。
「くそ!!ロックベアの亜種に出会うなんて!!運の悪い!!!」
「どうする!!このままじゃ追い付かれるぞ!!!!」
いや亜種じゃないよ、上位種だよ。というかロックベアなんて下位魔獣、今の樹海には居ませんよ。皆、竜界樹の影響で上位種化しちゃったんですよね。
あ、そうこうしてる内に追い付かれた。・・・・・・・フレイムロックベアって樹海では結構足遅い方なんですけど・・・・。拠点の皆さん全員余裕で逃げ切れますし・・・・まあ、アレ相手に逃げるのはいませんけど。でも最近、皆さんドラゴンの肉の美味さに慣れてしまったせいで、あの熊を好んで狩って来る方は殆んどいないんですよね。下処理が面倒ですけど熊鍋にすると美味いんですけどねえ。
「レネ!!俺が此処で時間を稼ぐ!!若様を頼む!!」
「!!・・・・分かった。」
「!!フォル??!!」
若様?ああ、一人だけ装備が上等っぽいのがいますね。あの鎧はミスリル鋼製でしょうが・・・・あんまり質が良く無いですね。加工も不味いですですね・・・・いや、職人の腕は悪く無さそうですね。加工技術その物がまだ発達してないので職人の腕が活かし切れていないという所でしょうか。
「くっ・・・・私も。」
「若様は早く逃げてください!!」
「そうです!!!若様に何かあったらルーベンス侯爵家はどうなるんです!!」
え・・・・侯爵家。おいおい話の流れからして侯爵家の嫡男か?こんな所でなにしてんだよ。
「そうです。当主は部下を犠牲にしても生きなければなりません!!」
「先代に拾われた命!!惜しくはありません!!」
おいおいおいおいおい。嫡男じゃ無くて当主本人かよ!!責任者が最前線っていうのは、物語じゃあ美談になるが、現実にやられると責任放棄以外の何でもないぞ。教育どうなってんだ侯爵家!!
あ、盾を持っていたフォルさんとやらが吹き飛ばされた。そろそろ手を出さないと誰か死にますね。 しょうがないので亜空間から、投適用の巨剣、刃渡り2メートルほどを取りだしてブン投げます。この巨剣、ネタで作ったつもりだったんですが拠点の皆さまは普通に使用してます。ドラゴンの首を狩るのに最適なんだそうです。
回転した巨剣は狙い通りに見事に熊を真っ二つにして、ついでに多少の森林破壊を引き起こして手元に戻って来ます。同時に隠蔽を解いてヤコウと一緒に姿を現わしました。連中、えらく驚いてアホ面を晒していますが構いません。前世で会社員だった者として、責任の所在やらに付いて説教してやらねば収まりません。とりあえず・・・・・・。
「お前ら全員、正座しろや。」
「「「ヱ゛・・・・・・。」
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「・・・・なるほど。大体事情は理解しまた。」
全員正座させ、相手の事情を話させつつ説教かますこと一時間。大体の事情は呑み込めました。
「あの・・・・・・そろそろ・・・・足崩して・・・・良いですか。」
「ダメ。」
この侯爵、樹海という脅威に対する橋頭保として配置された、ルーベンスという城塞都市の領主らしいです。前にスーさんの話にも出て来た都市ですね。魔獣に対する最前線という性質上、強力な騎士団による軍事力と冒険者による対応力を併せ持ち。領主にも強い権限と侯爵という高い地位が与えられているらしいです。国の王室との血縁も深く、王女や王子が輿入れすることも多いとか。
それって優秀で邪魔になった王族を危険地帯に飛ばしたんじゃ・・・・・・と思いましたがいいませんでした。人間って奴は、どの世界でも同じことやりますねえ。
そんな事情からルーベンス侯爵家は武門の家で、代々魔獣討伐の先頭にたってきたんだとか。ところが、剣士として有名だった先代が数年前に突然暗殺され、急遽跡を継いだのが・・・・・。
「えと・・・・・・名前なんでしたっけ?」
「・・・・ルークですう。」
このルーク君だそうです。ちなみに男。ついでに他の二人、レネとフォルは女です。すっかり忘れてましたけど、この世界では女性の方が数が多く魔力も強い傾向があるので女性上位の社会なんでしたっけ。
そんな社会で男のルーク君が跡を継いだことで色々問題が、具体的にいうと下が上手く付いて来てくれず。そんあ矢先に樹海の方で異変が・・・・具体的には地皇竜と自分の戦いが結界の外に漏れて、色々影響が出ていた様ですね。この事態に対してルーク君は実績を挙げようと先走った結果・・・・・。
「今に至ると・・・・。」
「・・・・・・ハイ。」
「お前らも主人をキチンと抑えろ。」
「「面目ない・・・・・・。」
普段は御目付け役の婆やがいて抑えていてくれたんですが、現在は王都の方に用があるため不在だったそうです。ルーク君は先代には遥かに及ばないものの、強さ的には御付きの二人より強く抑えきれなかったとか。
まあ、説教はこの位にしますか。反省もしている様ですし・・・・。
「それで・・・・ルーベンスまでの道分かりますか?」
「「「・・・・・・。」」」
三人とも黙って首を横に振りました。・・・・デスヨネ~~~。
「とりあえず日も傾いてきましたし、私の拠点に案内します。道については知ってそうなのが居ますから。」
まあ、道はスーさんに聞けばわかるでしょう。それよりコイツ達を放っておくと面倒なことになりかねません。まあ、軍隊が来ても拠点の防衛システムなら簡単に迎撃できるでしょうが・・・・。まあ穏便にことが済むにこしたことはないですしね。
そんな訳で拠点に始めて外の人間を迎えることになりましたとさ。
ようやく場所が動くことが出来そうです。色々と複雑になってキチンと書くことが出来るか心配ですが、努力はしますので指摘等はお手柔らかにお願いいたします。