破壊と神権と駄女神と竜皇
投稿が2ヶ月半近く空いてしまいました。大変申し訳ございませんでした。
熱血バトルな展開を目指していたのですが・・・・・変な方向に話が行ってしまい、なんだか説明回のような感じになってしまいました。
おかしい点もあるかもしれませんがご容赦下さい。
門を出た瞬間に準備していた結界を出力全開で構築する。すでに此処は死地。一瞬の気の緩みも失敗も許されない。
敵は現時点で格上。己が全力を尽くして戦うだけでは明らかに不足。戦闘中に成長し、アレを凌駕することが勝利への絶対条件。状況は圧倒的不利。
まず接近戦に持ち込むべく距離を詰めようとした・・・次の瞬間。灼熱と呼ぶのも生ぬるいプラズマブレスが放たれる。
「・・・・・!!」
半端な防御は粉砕されるのが目に見えているので、こちらも魔術と能力で作った渾身のプラズマで迎撃する。・・・・・・威力はほぼ互角。最悪かなり威力を殺せるはず・・・が!!
「げ!!」
打ち負けた!!
この世界で獲得した予測系の技能才と、前世からダウンロードした戦闘理論やら予測技術の全てが危険を察知してくれたから何とか開始数秒で即消滅は免れた。しかし、流石に全てはかわし切れずに左腕を根こそぎ持ってかれた・・・・・・しかも回復しない?・・・・これは?
自分の魔術や特殊能力なら腕ぐらい瞬時に生えるはず。何しろ実際やってみたのだから間違いは無い・・・・あの時は凄まじく痛かった。む?今、腕が無くなったのに一切痛みを感じない?感覚を遮断している訳でもないのに・・・・・・。
容赦無く飛んでくる尻尾やブレスやらをかわしながら、必死に現状の把握とさっきの攻撃の解析に努める。さっきの攻撃のタネが分かるまでは迂闊に防御は出来ないので正直かなり厳しい。
「だからこそっ!!」
心に浮かぶのは、この世界に生まれる前に見た三柱の超神達。強くなると決めた以上はトコトンまで、奴らにワンパンいれる位は目指さないと!!決して転生させられる時、すっげー痛くて、“コノウラミ、ハラサズオクベキカ”とか思った訳ではない!!!
そのためには、この世界最強の竜を完膚なきまで叩き折って余すことなく踏み台にしなければ!!・・・・そのためには、あの攻撃を何とかしないと・・・技能才を使って限界まで短縮しても解析にあと10秒かかる。
噛み砕こうと迫る牙をかわして、あと8秒。
亜光速に加速されたプラズマの散弾を時空操作でやり過ごして、あと6秒。
尻尾による薙ぎ払い、高温のマグマによる追加攻撃付きを魔力障壁で正面から受けずに逸らして凌いで、あと4秒。
障壁の攻撃に触れた個所が分解、その結果から得られたデータから3秒の短縮に成功・・・あとラスト1秒。
此処まで連続攻撃を78回、さすがに相手の攻撃連携に穴が目立ってきた。とりあえず、コチラがネジ込めるのに十分な穴ができたので一発カウンターでかましておく。額に一撃を喰らい、派手に吹き飛ぶ巨体・・・・・やはりコチラの攻撃は通るか。
「解析終了。」
森羅万象辞典をひっくり返して調べた結果、あの攻撃は【神的概念媒介世界裁定権能】。分かりやすく言うと世界を自分の都合に合わせてしまうチート、神の力という奴だということが判明した。
調べるのに時間が掛かったのは、その情報に厳重に幾重にもプロテクトが掛けて有ったためだ。・・・・・とても性質の悪いプロテクトだった。掛けた奴は確実に凄まじく性格が悪い。どこぞの宇宙人が作り出した謎空間みたいにネジくれている。大宇宙の真理的なほど絶対に。
おっと、プラズマブレス・・・しかも今度は曲げてきた・・・無駄なことを考えている場合では無いな。
この世界では神は、それぞれに固有の【神権】を持っている。というより【神権】を持っていることが神の条件だ。例えば、今殺り合っている竜は【破壊】の神権を持っており、拠点に置いてきた駄女神も【闘争】の神権を持っている。
【神権】がもたらす恩恵は色々ある。まずは不死になる。これは言葉の通りの意味で【神権】を持っている物は肉体は老化しないし、この世界のいかなる手段を持っても殺せないのだ。とはいえ、ダメージは受けるし、さっきから竜が使っている【破壊】のような一部の神が持つ上位神権を使えば殺すことも可能だ。ゲームで例えるなら、どんなにダメージを受けても特定条件を満たさないとHPをゼロに出来ない設定になっているボスキャラだ。
って、攻撃が当たらないの焦れたのか、あの竜、広範囲に雷撃ばら撒いてきた・・・・悪手だな。雷撃は範囲は広いが真っ当過ぎる。一切捻りを利かせていないために物理法則通りの動きしかしていないので軌道が簡単に算出できる。簡単にかわし、ついでに闘気を纏った貫手の一撃を喰らわせた。腹を抉って内臓を抉りだしたはずだが、一瞬で再生しやがった・・・・可愛げが無い。
とはいえ、現状、相手の勘が異常に鋭すぎるため、相手の隙をついてのカウンターしか攻撃を当てられていない。再生されるとジリ貧なのは事実だ。
さらに特筆すべきはもう一つ、【神権】はそれが表わす特殊効果を持ち主にもたらす。例えばあの竜の持つ【破壊】は攻撃に当たった物は世界から作用されて例外無く破壊される。さらに世界から“破壊される前の状態”の記録すら破壊されるため、破壊された物は元から存在しなかったことになり回復はほぼ不可能になる。ゲーム的に言うとプログラムにハッキングして最大HPを減らされる様な物だ。
だが、全ての神が【神権】を使いこなせている訳では無く、性格や習熟によって発現する効果に如実に差が出てくる。下手に自由度がある分非常にシビアだ。例えば、駄女神の場合【闘争】を持っているが、効果は戦闘時に鋭い未来予知じみた直感が発動するだけ。
いや、結構凄いんだが自分は技能や能力を複数組み合わせて、同じかそれ以上の効果を得ることができるし、何より世界に直接作用する力が非常に少ない。【神権】の肝は世界に直接作用出来ることにあるので技能や能力で代替出来てしまう様な使い方は完全に宝の持ち腐れである。・・・帰ったら特訓でもしてやるか。
あ、竜の野郎、接近戦に持ち込む気か・・・・・・・しかし、体が大きい分、踏み込みが甘い。しかも接近戦の経験が余り無いので攻撃の繋ぎに隙がある。結果、カウンターを喰らうと。む、フェイント・・・・・バレバレ。出来た隙に相手の懐に入り込み百発ほど拳の連撃を叩きこんでみる。先ほどの攻撃は一瞬で再生された。だが、数で押した場合どうなるか・・・・やはり再生が少し遅い。一度に再生する容量が大きいとスピードが落ちるということは・・再生する量とスピードに限界がある。それなら、倒すにはそれを上回る飽和攻撃を加えれば良いな。
順調に相手の情報を引き出せているが・・・・・まだ引き出しがあるな、あの竜。何かデカイ切り札を隠している気がする・・・・ただの勘だが。
さてと。
「そろそろ、こちらも反撃だ。」
自分の魂の内部に接続する・・・・・必要なのは概念の断片【秩序と混沌】、【創造と破壊】。正直今まで効果や使い方が分からなかったために怖くて使えなかったが、目の前のお手本が何度も攻撃で使ってくれたので大体使い方は理解出来た。
竜の攻撃を捌きながら内側への接続に集中する。これ以上、これを使用するためのデーターをあの竜から得るのは無理だろう。だが、竜とは持っている概念の断片の力の総量が違いすぎる。制御に失敗したとして、自滅で済めば穏の字、下手するとこの世界のバランスすら崩れて世界崩壊なんて事態も起きかねない・・・・・・何考えて自分の中にこんな物騒なモン突っ込んだんだか、あの超神トリオ。まあ、あの竜に勝つには必要だけど。
ともかく焦らず、急いで、確実に、自分の中に有るソレを解き放っていく。ミスをしたら即破滅、気分は爆弾処理班だな、ド畜生。竜の奴は相変わらず容赦なく攻撃しやがるし・・・・・コレ終わったら覚悟しろよ。そんな恨みつらみの黒い感情も強引に集中力に換えていく・・・・一切の無駄は無い。
解放されて制御された二つの断片が存在の内側に染み込み拡散し、自分という器に合わせて形を変えて変質していく。それによって、外見こそ変化しないが存在の内側から断片によって凄まじい勢いで変えられていくのが分かる。有限な自分の中で無限に広がっていく概念という形の無い物を、気合いと根性という同じく形の無い物で抑えつける。自分にとっては永劫、客観的に見たらは一瞬の鍔迫り合いの結果、制御に成功する。
概念の断片【秩序と混沌】が【神権・秩序と混沌】に変化しました。
概念の断片【創造と破壊】が【神権・創造と破壊】に変化しました。
【神権】の獲得に伴い【神化】を開始します。
神号【輪廻の破戒者】を獲得しました。
神号【双極の担い手】を獲得しました。
神能【究極重合発動】を獲得しました。
超越特殊技能【神速学習】が神能【超速神練】に進化しました。
条件が満たされたので秘匿された魂の力 【始まり】が解放されました。
秘匿された魂の力 【終わり】の解放には条件が満たされておりません
【神化】を完了しました。
【神化】の完了に伴い神名【黒衣妖星神皇】を獲得しました。
「だっああああああああああああ。」
激情や歓喜やらがごちゃ混ぜになった咆哮を上げ、ようやく相手と同じ土俵に立つ。ついでに【神権】の創造の方を使用して左腕を修復する。さらに、その左腕を瞬時に変形させると、内部の空間に仕込まれていたビーム砲が一瞬で出現する。相手の目に狙いを付けて躊躇なくぶっ放す。よし、命中。ダメージはすぐに回復されたが、光なので視力は簡単には回復しない様だ。その隙をついて、お次はMBHによる砲撃で頭を狙う・・・・あ、MBHが【神権】で破壊された・・・因果地平の彼方とか消え失せろとか叫んだ方が良かったかな。
・・・いや、えっと、創造で左腕を作り直す時に元に戻すだけなのも味気ないので、折角なので少々改造した。さて次は何を試そうか・・・・電磁砲とか!!あ、駄目だ。これは弾丸必要なんだったけ、作っておくの忘れた。
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とりあえず作り直した左腕の性能は問題ない・・・・チョット調子乗り過ぎた。だが反省はしていない!!!
しかし、コチラの攻撃は相手の【神権】で全て破壊されてしまっている。ブラックホールさえ問答無用で破壊されたのには驚いた。結局、色々やって当たったのは意表を突いた最初のビーム砲だけ、以降の攻撃はコチラの手を読まれてましたね。学習能力が恐ろしく高いか、心眼の様な戦術系の技能才を持っているか、もしくはその両方か・・・・・自分の勘だと多分三番目だ。やはりこの竜は闘争本能に従うだけの獣では無い。術理によりそれを制御し、さらに学習して、その結果を即座に自身に反映させている。まさに古強者といった隙の少ない戦い方だ。さらに、自分の持っている【神権】は、どちらか片方でもあの竜の持っている【破壊】より上位なのにも関わらず押されているのは自分の方だ。【神権】の持つ概念と特性を研ぎ澄まし、上位のはずの自分の【神権】を一時的に上回り・・・いや、上回る状況を作り出して見事に互角以上に渡り遭っている。【神権】の使い手として、それを持つ戦闘者として、一つの頂点といえるかもしれない。まさに戦いの芸術品、赤い人も言っていたな機体性能が全てでは無いと。出来ればもっと良く見ていたいのですが・・・・・・。
『もう無理!限界!!なんとかしてーーーー!!!』
・・・・・あの・・・駄女神!!おめーは少しあの竜見習えよ!!【神権】の使い方なんてザ・駄目な例っていう感じだろうが!!あ、あと、あの竜の【破壊】の効果ですが現状自分にのみ適用されているので、他の物には攻撃のダメージしか受けていません。・・それでもエライ広い範囲が更地になってますけど。ですから駄女神と城壁の力で防げるはずです・・・・多分ギリギリ。
『ギリギリじゃねーーーー!!もう絶対無理だーーーーー!!!』
チッ、心話で大声出しやがって、あの竜にも聞こえてるんだぞ。性格的にやらないだろうけど、ソッチの方に効果付きの攻撃撃たれたらどうすんだ。防御してやること出来無いぞ、自分のことで精一杯だし、そういう【神権】なんだから。
『ゑ・・・・・・。』
そこまで考えて無かったんだな・・・・・・まあ、駄女神はともかく中の奴達に何か有ったら大変だ。非常に名残惜しいが早めに決着を付けさせてもらうとしよう。
【神権】を全開まで出力を上げ、制御のことは考えず暴走寸前まで持っていく。さらに二つの【神権】を共鳴させ、さらに出力を上げていく。森羅万象辞典をひっくり返した時に見付けた裏ワザ・・・・正直、機体の性能で押し切るみたいで余りやりたくはなかったんだが・・・・・正直あんな見事な戦い方を見せられたら特に。だがまあ、別にコレを使っても勝てる確率は上がる訳ではなく、むしろ学習能力はコチラが上なので長期戦の方が確率は上がる・・・しかし使えば確実に短期決戦で勝負がつく。まあ、そんな少々分の悪い賭けをする位には中の奴達のことは大事に思っている・・・・・駄女神の方はどーでも良し。
『ひどっ!!!!』
膨れ上がる力に対し身構える竜に掌に発生した無色の歪みとしか表現出来ないソレを叩き付ける!!
「「!!!」」
見事に着弾、次の瞬間その結果に驚愕する竜と駄女神。竜の中で暴れまわる様な存在感を撒き散らしていた【破壊】の力がその攻撃を叩き付けられた瞬間に一瞬でゼロになった。まあ、種を明かすとアチラより上位であることを利用した【神権】の強制停止。まあ、代わりにコチラの【神権】も使用不可になるが・・・・まあ、【神権】無しのガチンコの勝負はこちらとしても望む所だ。
「さあ、始めようか。」
神能【究極重合発動】を起動する。これは持っている技能才を良いトコだけを相乗できる反則技だ。例えば普通は炎と氷は威力を打ち消し合ってしまうが、コレを使うと逆に威力を高め合うことが出来る。原理?こっちが聞きたい。神の不思議パワーってヤツか?正直言って元理系出身としては納得しかねるのだが、良く考えたら技能才とかレベルも同じ様な物だった。
おっといかん。何と言うか神になって色々容量に余裕が出来たので、雑念が入りやすくなっている。平たくいうと、まだ神の精神と肉体を完全に制御出来ていない。このままでは相手に失礼だし、思わぬ反撃を喰らいかねない。集中だ、集中。
自身の中に意識を張り巡らせ、一瞬で精神と肉体を完全に掌握する。 脳裏に浮かべるのは遥かな前世の記憶・・・・強く在ることに憧れた、その原点。ソレを核として、この世界に来てから獲得した全ての技能才を紡ぎ、縒り合わせ、織り込んででいく。
「いっくぞおおおおお!!!!」
そして最後の仕上げとして、力の限り晴れ渡った大空へと跳躍する!!
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天を仰ぎ見る最強種、竜の皇。この世界の力と幻想の頂点。
眼差しの先には蒼穹高く飛翔する生まれたばかりの異邦神。
放たれるは異界の幻想。生まれ落ちてから僅か半世紀足らず、されど込められた幻想の純度は如何なる物をも凌駕する。
怒りと悲しみと無垢なる心からの信頼を胸に抱き。あらゆる苦難、障害を凌駕し、克服し、敗北してもさらに強くなり立ちあがる。
放たれる一撃は必殺、時代を超えて受け継がれ進化を続ける技。
時間を捻子曲げるほど魔力が、空間構造を焼き尽くしかねない熱量が、右足に集中し渦を巻き絶叫をあげる。
そして、えーと・・・・何か色々あらゆる意味で全てを台無しにする一撃が放たれる。
「ラ〇ダーーーーー、キイイイイイイイイック」
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竜の巨体が吹き飛び叩きつけられる。一瞬の全てが止まった様な静寂の後に凄まじい閃光と衝撃が荒れ狂った。
女神がどんどん駄女神に・・・・・。
一応、ヒロインの予定だったのにどうしてこうなったのでしょう。このままではヒロイン不在になってしまいます・・・・・・どうしましょう。