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異世界犬妖精 -Demi god of talent-  作者: 亭恵
最果ての樹海の犬妖精
18/34

寡黙なカブトムシ黒いオニ

 八月中に投稿する予定でしたが間に合いませんでした。申し訳ございません。

 少し視点を変えてみました。気に入って頂けると幸いです。

・・・・気に入らなくても、あまり厳しく言わないで頂けると有難いです。

 物事は逆らえない流れと言う物があるらしい。

 だが、本当に逆らうことが出来ないとは逆らうとか、そう云うことを考える暇すら無い。あれよあれよと物事が進んで行って、気付いたらどうしてこうなっているのだろうと首を傾げる物なのだ。

 この場所で暮らして一週間・・・・ようやく落ち着いたと思った時、しみじみと心の底からそう思った。

 私の名はライという。この名は主殿から賜った名前である。

 主殿はドラゴンを瞬殺する猛者であり、空を音より速く飛び、深淵のごとき知恵を持たれる。こういっては何だが言っていて信じられない存在である。特に鼻歌混じりに男の娘・・・らしく料理など作っておられるのを見ると特に・・・・・・・。

 まあ、それも料理中の主殿がナゼか何人もいるのを見ると吹っ飛んでしまうのだが・・・・何でも【分身】というらしい。

「使いたければ教えてあげるよ~~~。」

 などと主殿は軽くのたまうが、それに引っかかると地獄をみるとは最古参の二人の言であり、身を持って知った教訓でもある。

 ・・・・・平たくいうと主殿は訓練に関しては容赦と言う物が一切無い。

 まあ、欠点がある事は主殿を親しみやすくするし、死ぬほどキツイが死なない様に注意してくれるので安心だ・・・死ぬほどキツイが。大事なことなので二回言わせてもらった。

マンガと呼ばれる物に有った言い回しの一つだが、スライム達が面白がって使っているのを聞いているうちに我々にもいつの間にかうつってしまった・・・・・・主殿は文化ハザードがどうの色々言っていたが、最終的には「ま、いっか。」と言われていたので特に問題は無いのだろう。


 話を元に戻そう。主殿に出会う前、我は一族と共に最果ての樹海の深部でモンスターを狩って生活していた。モンスターとは自分達にとっては餌であり、稀に強い個体に出会っても翔翅で飛んで逃げてしまえば追い付ける者などいなかった・・・・・今にして思えば私は慢心していたのであろう。

 前兆は巣の周囲にいるモンスターの様子が変わったことだった。今まで居なかった強いモンスターが出現したり、今までいたモンスターも強くなったり亜種になったり・・・・・・。

 念のため住処を移すべきだという意見も出たが、原因もはっきりしないのに逃げ出すのは種族の誇りが許さないと長老達が主張したため実現しなかった。

 レイなどは「何かあってからじゃあ遅いでしょうが。そもそもあの老人ボケどもは・・・(30分)」と憤慨していたが、しばらくしてその何かは現実となる。

巣にフレイムドラゴンが襲来したのだ。

 不意を打たれたため、多くのビートルが飛び立つことも出来ずに火球や爪牙、尻尾によってなす術無く殺されていく。種族の誇りがどうのと言っていた長老達は、真っ先に逃げ出そうとしてドラゴンの吐く火球に撃墜された。

「時間を稼ぐ!!」

 レイが魔術を放ちながら巣穴から飛び出していった。反論する時間も躊躇する時間も無い。レイが命がけで作った僅かな時間で渾身の力で空に飛び立つ。・・・・・そして目にしたのは仲間達の骸だった。


 次の瞬間、私の中から撤退という言葉が消えた。

 後先を考えずに最大威力の雷を叩きつける。だが、効いてはいるが鱗に阻まれ内部にまでダメージを負わせられないし、次の瞬間数十発の火球が飛んでくる。しばらく前から奴は吐く火球の威力を落として数で押してくる様になってきた。全力で回避して死角に回り込むが、段々コチラの動きに慣れてきたのか直ぐにコチラを補足される・・・・・手詰まりだ。僅かな絶望が心を掠めた瞬間、凄まじい衝撃が身体を襲う。尻尾による攻撃だと悟ったのは地面に叩きつけられた後だった。

「・・・・クッ!!」

 再び飛ぼうとするが先ほどの一撃で翔翅が折れてしまった様で、どうやってももう飛ぶことは出来なそうだ。

 だが、今の私に諦めるという選択肢は存在しない!!勝利を確信して近づいてくる奴に攻撃を仕掛けるべく相手に悟られない様に用意をする。相手の攻撃が触れた瞬間に限界を無視した最大出力、最高収束で雷撃を放つ。そんなことをすれば自分の体も耐えられないだろうが・・・・・何構うものか。奴が勝利を確信して爪を振りかぶる。待ってろ・・・・その面ぶっ潰してやるからな。


 次の瞬間、何かが奴と私の世界を分断する・・・そう表現するしか無い断絶が突然私と奴の前に現れた。背筋に走る悪寒とか稲妻とか云うのもおこがましい何かに突き動かされ振り向いて、笑って手を振っている主殿を見た瞬間に心の底から思った・・・・・ヤバイと。

 『アレト タタカッテハイケナイ』と危険を感じる全ての感覚が狂ったように絶叫している。かといって、どうやったらアレと闘わずに済むかなど分かるはずも無く、そうこうしている内に走馬灯さえ見え始め、来世では交渉術とか弁論とか勉強しようと固く心に誓うまでの所要時間0.37秒。

 グルグルと凄まじい速度で廻りながら一向に考えの纏まらない私の思考を中断させたのは、皮肉にも先ほどまで私の思考を独占していたドラゴンだった。怒りの咆哮を上げて、どうやらアレと戦う気らしい。先ほどまで有らん限りの殺意を向けていた相手に対して、今は憐れみしか湧いてこない・・・・・・・ていうかムリだって絶対。勝てる訳無いってアレに。

 結果は案の定、相手の動きに全く付いていけず、必殺のファイヤーブレスはいとも簡単に無効化され、挙句に何か凄まじくヤバイ感じのする一撃で瞬殺された。見事なまでの一撃必殺でした。

 余りに見事な技だった、戦えば必ず殺されると確信するほどに・・・・それは逆に私の度胸を据えさせた。分かりやすく言うと「もーどうにでもなりやがれ。」と自棄になったのだ。だが、その覚悟も

一瞬で体中の損傷が消え、「や、大丈夫だった?」と軽く話しかけられたことで台無しになったのだった。

 結果としてレイを含む四人の命が助かり、安全な住処まで与えられた。主殿がいなければ全員死んでいたろうから、一生かけても返せない恩を受けたことになる。戦闘力も生活力も差が有り過ぎて役に立てるどころの話では無く、むしろ凄い勢いで負債が増えているようなきがする。そんなことを自宅の縁側で“たぶれっと”でマンガを読みながら考える・・・・・うん、“かふぇおれ”はやはり美味いな、“ほっとけーき”との相性も抜群だ。たっぷりと“めーぷるしろっぷ”をかけて喰らう。ウン、美味い。レイはドラゴンを喰って甲蟲人となったことで五指を持った器用な両腕を手に入れた。さらに、主殿から料理を教わることで非常に腕を上げた。特に“ほっとけーき”の味は主殿のソレに及ばぬが絶品である。

「美味・・・・・・・。」

「・・・・まあ、気に入ってくれたんは嬉しいんやけど、にーやん、そろそろクーやんへのお礼とか考えんと。コレの材料もクーやんが作ってるもん貰ったもんやし。」

 レイの奴は主殿のことをクーやんと呼ぶ、不敬ではないかと思うのだがレイの奴は料理のおかげで主殿と非常に仲が良いので文句は言えない。だが、生まれてからずっと一緒にいた妹には何が言いたいか分かった様だ。

「本人がクーやんでええって言っとるんだからええやん。ていうか、羨ましいならにーやんも一緒に料理習おうや、にーやんは確かに並みの女より遥かに強いけど一応男の娘・・・なんやから、料理の一つも出来へんと婿の貰い手がのうなってしまうで。」

 むう、我が妹ながら痛い所を突、確かに世間ではは家庭に入って家事をするのが普通だ。私は亜種として生まれたために一族の中で戦闘力がズバ抜けていた、。そのため、貴重な戦力として扱われたため、家事などしたことが無い。だが、世間では家庭を持っても良いお年頃だし、さらに言うならココでは戦闘力はズバ抜けているとは言えない。トップとの差は考えるだけ馬鹿らしいレベルだ。・・・・・・そうだな料理にも挑戦してみるのも良いかもしれないな。


 この後起こった食中毒騒ぎ(別名:死のハンバーグ事件)により彼は厨房に永久立ち入り禁止となり、レイとアカ及びスライム数名が希少能力レアアビリティ【猛毒耐性】を手に入れたのは余談である。

 




◆◆◆◆◆◆◆◆




 昨日から自分達三人の運命は激変した。それはもう怒涛の勢いで。

 俺の名はクロという。しばらく前はゴブリンエリートだったが現在は隠鬼(オニ)という全く聞いたこともない種族に変わってしまった11歳だ。

 ゴブリンは他の種族より成長が早く10歳くらいで成人とみなされる。その分寿命も短く、ゴブリンのままだと30歳ぐらいで老いて死ぬ。もっと長生きしたければ上位種化グレードアップして他の種族に成るしかないのだが、ゴブリンは非常に弱い種族のため出来る者は殆んどいないのが実情だ。かくいう俺もゴブリンエリートという他よりは恵まれた立場ではあったが、半ば無理だろうと諦めていた。

 だが、此処に来て出された死ぬほど美味い飯をたらふく食って、今まで経験したことも無い心地良い布団という物で寝た所、上位種化グレードアップどころか伝説でしか聞いたことが無い位階上昇ランクアップをしていた・・・・・・・。ちなみにココのボスに隠鬼(オニ)の寿命がどれくらいか聞いてみた所、「え~~~と、とりあえず300年はイケるんじゃない?」とのこと。

 ・・・・・・しばらく口を開けて真っ白になってしまった俺を誰が責められよう。として生まれたからには強さを求めるのは世の摂理だが、こうもアッサリ与えられると正直俺はどうしたら良いのか分からん。そこで、知恵の廻る者に頼ることにした。

「それで、僕の所に来た訳かい・・・・・。」

 と、困った顔をしているのは弟のアオだ。今回の件でワイズホーンという、これまた良く分からない種族になっっている。非常に家庭的で優しく、前の村にいた時には非常にモテていた。もちろん、身の程知らずの馬鹿どもには俺がシメておいたが・・・・・。

「正直、僕も戸惑ってるんだ。魔力が恐ろしいほど上がっちゃって・・・・・。」

 そうか、アオの手に余るならば俺がどう考えた所で如何にもなるまい。それにしても、ゴブリンメイジの時のアオの魔力も大したものだったが、今はそれがさらに増大しているのか・・・・・・シャレにならんな。

「二人とも何をそんなに悩んでるんだよ?」

 丁度、アオの所に来ていた俺の親友のアカが不思議そうな顔をして聞いてくる。コイツは今回の件でドラグオーガという種族になり身体が凄く大きくなった。おかげで一人用のこの部屋が少し狭い。ボスから貰ったという“ぽてとちっぷす”という物をバリバリと食っている。

「ん?何だコレ欲しいのか?いいぞ。あと3袋ほど貰ってるから。」

 コイツは良くも悪くも、裏表が無い良い奴なんだがなあ・・・・・。あ、少し貰おう・・・・美味いなコレ!シンプルな塩味が絶妙だ!!

『『バリバリバリバリバリバリバリバリバリ』』

「・・・・で、何しに来たの?」

っは!!ついつい夢中で食ってしまった。アオの冷たい視線が痛い。・・・・後で俺もボスに貰いに行こう。

「まあ、何だ腹が減ってると良い考えは浮かばねえよ。」

 おう、アカの奴アオの冷たい視線を物ともしねえ。時々スゲエなアイツ・・・・・。

「貰った力をどうするかとか考える前に、まず使える様にならないと駄目だろ。色々考えるのはその後だ。」

 ・・・・・・驚いた。アカが珍しくマトモなことをいっている。しかも凄く的確。

「どんな力も使いこなせなきゃ意味が無いし、そのためにはキチンと訓練しないと駄目だ。」

 ・・・・・スゲエよアカ!!オマエひょっとして本当は天才なんじゃないのか。アオも驚くを通り越して呆然としてるよ。

 そうだな、まずは訓練してある程度力を使いこなせる様になってからじゃないと話にならない。俺達には色々悩む前にやることがあるってことだ。訓練出来る所が無いか、明日ボスに相談してみるか。

「って“ぽてとちっぷす”貰いに行った時、ボスが言ってた。」

「「お前の考えじゃ無いんかよ!!」」

 ・・・・・・感心して損した。






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