邪法と霊と武士の心
いつの間にかお気に入りの登録が100件を超えていました。大変ありがとうございます。これに驕ることなく精進していきたいと思いますので、今後ともこの物語にお付き合い頂けると幸いです。
昼飯の後、一人で鉱山の図書室に来ています。スーさんとハムさんは昼飯を食った後倒れる様に眠っちゃいました。あの分だと明日の朝まで起きない感じです。回復魔術で体力は戻ってるんですから精神の問題でしょうか・・・もうちょっとタフさが欲しい所です。
少し気になったことがあるので調査に来ています。本棚や床を丁寧に調べて行きます。
「・・・・・・やっぱり、在りましたか。」
床に重い物を動かした跡が僅かに残っています。周囲を調べてみると、全ての本が無くなった本棚の一つに奥行きが違う段があり、奥の板を横にずらすと明らかに怪しい仕掛けが有りました。とりあえず【検索】使ってみますか。
「・・・・魔石を使った封印術ですか。しかも、かなり念の入った。よほど中の物を見られたくないようですね。」
希少技能【封印術】LV.5MAXを獲得しました。
特殊希少能力【封印解除】LV.5MAXを獲得した。
特殊希少能力【封印無効化】LV.5MAXを獲得した。
・・・・・・封印解除と封印術は色々役に立ちそうですね。お、本棚が動いて下への階段が現れました。・・・・明らかに空気が悪いですね。瘴気が立ち上っています。・・・やはり悪い方の予想が当たりましたかね。まあ、とりあえず行ってみますか。
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階段を下るとますます悪くなった空気と大き目の部屋が広がっていました。下手すると上の階より広いですね。研究資料らしき物が散乱し本棚に幾つかの本、実験用の機材、・・・・そして、たくさんの死体も有ります。
「やっぱな。」
人嫌いの賢者と聞いた時点で幾つかの可能性を考えていました。まあ、前世で私も人嫌いでしたが引きこもりでネックになるのは食糧とトイレです。前世みたいに食事に宅配ピザとか取れませんしコンビニも在りません、下水道すら無くてはトイレの始末も大変です。
一言でいうと、この世界では引きこもるのも大変だと言うことです。というより前世みたいに豊かで安全で無ければ引きこもりなんて出来ないということです。・・・前世って良い所でしたんですねえ。人間という種族が嫌いでも何らかの集団に属さないと最低限の安全も確保することが出来ません。一言で言うと、この世界では人付き合いが嫌いでもやらないと死にます。よほど自分の戦闘力が高くないとボッチで生きることは不可能です。
話ではそれほど強力な魔術師であったようでもありませんし、食糧もバルト村から分けてもらっていた様ですから、コミュニケーション力に問題が有ったわけでもなさそうです。むしろ別種族のコボルトと上手くやれるということは非常に高そうです。
何より前世で引きこもり予備軍であった自分の勘が、彼の話を聞けば聞くほど違和感を訴えやがるのです。ぶっちゃけスーさんから聞いた通りの人物像だとすると、そんな人間は引きこもったりしませんよ。
人嫌いの件が嘘だとすると、人里離れた所に住んでいる理由として考えられるのは・・・・犯罪等で人の社会で生きていけなくなったのか、人に見せられない様なヤバイことをするためです。
どうやら今回は後者の様ですね。本棚には死霊術の本に呪術の本、それに召喚術の本(しかも悪魔召喚について。)。さらに研究資料などもザッと斜め読みした所、恐らく自身を不死にする研究をしていた様です。
「・・・・・・人里離れた所に住んでいる一見人の良いオッサンが不死の研究ですか。ハッ、ある意味王道ですね。」
海外のB級ホラーとかでよくあるパターンです。カップルとか若者グループが犠牲になるんですよね。
恐らく研究資料として残してあるのでしょう。死体はかなりきちんと保存されてます。ほとんどが人間かそれに近い種族のと魔物が少々、同族はいないようです。近くに防具とかが纏めて捨ててあるので被害者は恐らく冒険者と思われます。
まあ、最寄の村で村民が行方不明になると騒ぎが大きくなるからでしょうね。小賢しい知恵は良く働く様です。冒険者でしたら行方不明になることも多いですし、身寄りの無い人も多いそうですからね。さらに、資料によると、生かして連れて来て実験材料にしたらしいですね・・・・・クズですね。
机の上にあるガラス瓶を手に取り、【検索】を掛けます。これは空間魔術で人間を入れることが出来る壺で中に入れると生命維持の魔術と行動不能の呪いが自動で掛かるそうです。
古代魔法皇国で罪人を輸送するために作られて遺跡の奥から発掘された物を、とある国王が手に入れて宝物庫に保管されていたのを盗賊が盗み、さらに盗品マーケットに流れたのをコイツが買った様です。・・・代金踏み倒してますけど。・・・・・アイテムに罪は無いので亜空間に放り込みます。
希少技能【呪術】LV.5MAXを獲得した。
特殊希少能力【時空牢獄】LV.5MAXを獲得した。
・・・・技能才手に入れてあまり嬉しくないのは初めてですね。まあ、役には立ちそうですが。
ついでに被害者の遺品と書籍は亜空間に放り込みます。ですが研究資料の方は胸クソ悪いので処分することにしました。纏めて山にして火を付けて焼き払いました。良く燃えて一秒も掛からずに綺麗に灰になりました・・・・。
次の瞬間。思考が加速し、その場を飛び退きます。
と同時に、見ただけで常人なら気分が悪くなる半分物質化した瘴気の塊がソコに着弾しました。その瘴気には意識不明になる呪いが込められています。まあ普通の人ならそうなんですけど、自分は【有害効果無効】のアビリティのお陰で別に当たっても状態異常にはならないんですよね。ちょこっと痛いのでかわしましたけど。
周囲に漂っていた瘴気が一か所に集まっていき一つの塊になって行きます。外観は適当に混ぜ合わせた肉団子ですね。集まって大きくなるに従って、人間やモンスターの手足とか顔とか内臓とかが生えてきています。凄く気持ち悪いです。
ですが・・・・遅い!!
さっきから十秒ほど経ってるんですけど。まだノタノタ集まってるんですけど!!今の自分なら攻撃、普通に数十発位叩きこめるんですけど!!詠唱がすっごく長い高位魔術でも唱えること出来るんですけど!!・・・・まあ、登場と変身、あと合体の途中には手を出してはいけませんね。様式美という奴です。とりあえず待ちの時間は相手に【検索】掛けて能力調べてますか。
群霊 LV.51
属性:霊
HP:5200 MP:2000
攻撃威力:120 命中精度:400
防御強度:500 魔力耐性:300 行動速度:250
特殊攻撃
瘴気弾(攻撃威力200 命中精度200 呪い付与)
精神攻撃(攻撃威力0 命中精度300 MP-200)
金切り声(攻撃威力0 命中精度800 有効範囲に状態異常:恐怖 麻痺)
特殊能力
霊化 LV.1
物理攻撃無効 LV.3
魂食いLV.2
いやあ、【検索】のレベルが上がって表示が分かりやすくなりましたね。前の表示より分かりやすくなりましたかね?自分ではこれで丁度良いんですけど。
霊化は霧状の気体になる能力ですね。その状態だと攻撃をほとんど受け付けなくなりますが、その状態では攻撃も出来なくなるみたいです。最初部屋に入った時に姿が見えなかったのは、この能力を使っていたからですね。便利ですね、気配も察知し難くなりますし隠密や偵察に役に立ちそうですね。でもレベルが低すぎて現在の残念な状況に・・・・・。
特殊固有能力【精霊化】LV.5MAXを獲得した。
・・・・・解析してたらゲット 出来ました。しかも上位バージョン!!まあ、物理攻撃無効と状態異常攻撃が面倒ですが自分には両方どうにかなりますし警戒する相手じゃないですね。・・・そろそろ登場シーンが終わるみたいですね。時間掛けすぎです。あ、終わった。
終わって二秒ほどウネウネした後、突然体中に数十個の口が出来ます。その後一斉にその口から大音量の叫び声が発せられました。
「おああああおおおOOOAAAAAAAAAAAあああああOOOOOOおおおおおOOOOAAA。」
はいはい、これが金切り声ですか。このスキルは要りませんね。まずは物理攻撃無効に物理攻撃をぶつけてみます。多分攻撃がすり抜けると思うんですけど、まあ実際やってみれば分かりますね。どうせやるなら思いっきりやりますか。・・・・・・・・覇!!!!
〈サクッ〉
あれ?切れた。
特殊希少技能【概念攻撃・切断】LV.5MAXを獲得した。
・・・技能を獲得してしまいました。どうも思いっきりやり過ぎたようです。【概念攻撃・切断】とは、まあ問答無用でブッた切る能力で、相手の防御とか特殊能力とかは全無視なので切れるはずですね。とはいえ相手は不定形なので切られても即死はしませんでした。・・・・HP半分になっちゃいましたけど。
次は少し手を抜いて・・・・・てい。
あ、思った通りですね。攻撃がすり抜けました。
希少能力【物理攻撃無効】LV.5MAXを獲得しました。
まあ、大体こんな物ですか。特に他にはコイツから得る物はないですね。さっさと終わらせますか。
・・・・・楽には済ませる気無いですけど。
【浄化】を発動します。霊系ならこれが効くでしょう。
「グオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおお。」
一気に浄化していきます。冒険者とみられる人達は浄化されて成仏していきます。・・・・この世界には仏いるんでしょうか?モンスターもついでに浄化しまして、最後に核になっていたと思われる奴が残ります。【検索】で観て見ると群霊では無く幽霊になっています。ついでに、こいつが元凶で間違いないことも確認済みです。
「消えな。」
【精霊撃】と【神霊素操作】と【纏絲勁】を重複発動した一撃を叩きこみます。
〈〈〈〈ズン〉〉〉〉
・・・・・チョッと世界が揺れました。いやあ、調子に乗ってヤっちゃったんですけどオーバーキルにも程が有りましたね。欠片も残さず消滅しちゃいましたよ。まあ、ヤバそうな能力を試せましたし良しとしましょう。
【精霊撃】が【精霊王撃】にバージョンアップされました。
【神霊素操作】が【神霊素制御】にバージョンアップされました。
・・・・さらにヤバそうな能力になっちゃいました。まあ良いでしょう。とりあえず最後は何か無いか調べます。天井と床に魔法陣が書かれています。この天井の魔法陣の真上にはベットがあり、そこで死亡した魔術師は不死に変化して床の魔法陣の上に出現すると言う仕掛けですね。しかし、研究が不十分だったため変化したのは最下級の幽霊、そこに無念の死を遂げた冒険者やらモンスターの霊体が入り込み融合して群霊になったと言う感じですか。しかも機密保持のため張った封印のため、この部屋から出られなかったんでしょう。
・・・・・・・外道の上に馬鹿で間抜けでは救いようがないですね。やはり、遠慮無くぶっ潰して正解だった様な気がします。
もう部屋には何も無い様なので出ることにします。この部屋のことですが誰にも言わずに無かったことにすることにしました。まあ、アレが成仏できるかは分かりませんが、此処の本が同族達の役に立ったのは事実。死んだ後の評判まで奪うことは無いでしょう。
焼き払ったあとに大地を操作して崩してしまえば誰にも知られることはないでしょう。火の魔術を使おうとしてチョっと面白いことを考え付きました。【魔術創造】と【検索】、前世の知識を使って、この世界にはまだ無いだろう属性の魔術を使ってみることにしました。・・・・・よっと。
特殊固有技能【白炎系魔術】LV.5MAXを創造しました。
特殊固有能力【白炎制御】LV.5MAXを創造しました。
・・・・・プラズマ恐るべし。チョッと舐めてましたわ。まさか部屋を欠片も残さず消滅させるとは思いませんでした。良く考えたら太陽と同じですからね。これ威力高すぎるので当分使わない様にしましょう。
【大地制御】で岩盤を崩して入り口を塞いでしまいます。これで誰も部屋が有ったことなんて分からないでしょう。
・・・・・しかしどうも自分は精神が少し変化しているようですね。あんなグロい物見たら前世の自分だったら恐怖ぐらい感じていたでしょうから。初戦闘の時は技能才頼みでしたから、恐らくその後でしょう変化したのは。何というか強さへの飢えみたいな物がいつも在るんですよね、もっと強く、もっと強くって。まあ気分的には悪くないので良いんですが。まあ、せっかくこんな世界に生まれたんです、史上最強、天下無双を目指してみるのも悪くないでしょう。
・・・・・・何だか少し楽しくなってきましたね。
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彼は薄々気付いている。森羅万象辞典からのダウンロードは単に武術や技術を使える様になるだけでは無いと。
いや、そもそも武術や技術とは付きつめれば生き様に直結する。思考の手順や方向性だと言っても良い。その技術が高度になればなるほど、攻撃や防御といった技術的な物以外に、その技術を十全に発揮するための精神を要求される。
コンマ一ミリで相手の攻撃をかわすことなど入り口に過ぎない。恐怖を完全に制御下に置くことなど出来て当たり前。
己が限りある力を持って、ちっぽけな誇りのために、この世の全てを敵に回しても戦う覚悟、武士の心。まともな人なら笑うだろう馬鹿な生き方。彼の魂には、そんな強者共の祈りにも似た夢もダウンロードされている。
誰よりも強く。万の敵を蹴散らし億の敵を蹂躙し、強さの彼方の果てまで何処までも。彼らの夢を呑み込んだ少年は獰猛な笑いを浮かべながら、この世界を生きていく
何とか一カ月に二回の投稿ができました。ギリギリでしたけど。
まだまだ主人公の内面が上手く表現できません。内面の変化が上手く伝わっていたら幸いです。