敵意
一体全体どうしたものか……あちらこちらに蔓延る病原体が激しく蠕動し、蝕み、破壊し、腐らせていく。私が幾ら抵抗しようとも、身体を揺すり、炎を吐き、嵐を巻き起こして至る所に怒りをぶつけようとも、この病原体の侵略行為は止まるところを知らない。
吹き止まぬ嵐の如く、荒れ狂う大海の如く、傍若無人なまでに世界を呑み込む岩漿の如く、考えられ得る、ありとあらゆる凄惨の限りを尽くしては来たものの、実のところ、効力が有ったとすれば其の刹那のみにすぎず、病原体共は又繁殖し、私を破壊して蝕み、腐らせていく。正に悪夢としか言い様がない。
全てが夢ならばどれほど安楽し、歓喜しようものか。考えるだけで気が狂いそうだ。体中が奴らに侵されていくのには嫌気がさしてきた。奴らは私の表皮に楔を打ち込み、ボコボコと歪な形の出来物を拵えたり、ある時には、私の体に元々無いものまで築き上げてしまった。喩えて言うならば、腕がもう一本生えて来たり、尻尾が出てきたりする事だ。
私は其れを〈増設〉と呼称し、忌み嫌う。どうしても避けられない事なのだ。先程申した通り、憤怒による〈増設〉の切除を試みてはいるのだが、少し目を瞑って起きる度に、元通り〈増設〉が施されており、更には〈増設〉箇所が増えている事もある。
いたちごっこだ。
忌むべき病原体共に侵され続けたこの哀れで醜い体を見たまえ。今では元の形を忘れてしまうほど変形してしまった。私は今年で何歳になるのかも忘れてしまった。頭の中までぐちゃぐちゃに荒らされてしまったみたいだからな。寛大なる宇宙の主が居るとするならば、私を一刻も早くこの賤しく、浅ましい呪縛から解き放ち、病原体共に死の鉄槌を下し賜えと毎日懇願しているよ。
遠き宙のトモよ。君達に被害が及ぶ前に何とかしなければならない。
奴らはとても貪欲だから、温床に成り得る可能性があれば何処へでも行きかねないよ。
もう、私の体は保たないかもしれない、それ以前によく此処まで保ったものだよ。だから奴らの繁殖は未来永劫続くはずは無いのだが、くれぐれも注意したまえ。その病原体の名は〈人間〉と呼称している。
2007年12月の作品。




