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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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「人に捨てられ、王に選ばれた」

読んでいただけると幸いです

異変は、境界の夜から始まった。


 獣人領と人の国を隔てる森。

 そこに張られている結界が――

 一晩で、異様なほど安定した。


 歪みが、消えたのだ。


 これまで、夜ごとに観測されていた空間の揺らぎ。

 魔術師たちが何度調整しても抑えきれなかった裂け目。


 それが、

 まるで「最初から存在しなかった」かのように、

 沈黙した。


「……あり得ません」


 人の国、王都の塔。


 老魔術師は、震える声で告げた。


「歪みは自然現象です。

 土地に根ざした“病”のようなもの。

 たった一夜で消えるなど――」


「だが、事実だ」


 重々しい声が遮る。


 王の側に立つ宰相が、

 冷たい視線で水晶盤を見下ろしていた。


「獣人領の境界を中心に、

 歪みは完全に沈黙している」


 そして。


「同時期に、

 街から追放された人間が一人、消息を絶った」


 老魔術師の目が、見開かれる。


「……まさか」



 その名は、

 すぐに掘り起こされた。


 リオ。


 夜になると、

 “見えないものが見える”と訴え、

 各地を転々としていた人間。


「村では家畜の異変が止まり」

「街では子どもの高熱が収まった」


 記録は、皮肉なほど整っていた。


「彼が滞在した場所では、

 必ず、歪みが一時的に弱まっている」


 王は、ゆっくりと指を組む。


「……偶然ではないな」


 老魔術師は、

 言葉を選びながら、続けた。


「もし彼が、

 歪みそのものを“認識”できる存在なら――」


「制御も、可能だろう」


 宰相が、静かに結論づける。


 室内に、重い沈黙が落ちた。


「……国家にとって、

 喉から手が出るほど欲しい力です」


 誰かが、そう呟いた。



「問題は」


 王が、淡々と告げる。


「彼が今、

 どこにいるかだ」


「獣人領です」


 即答。


「獣人王ガルドの城内に、

 保護――いえ」


 宰相は、わずかに言葉を切り替える。


「囲われています」


 王の目が、細まった。


「……獣人王は、

 気づいているな」


「間違いなく」


 老魔術師は、苦々しく頷く。


「結界の安定度が、

 異常すぎる」


「なら」


 王は、玉座に深く腰掛ける。


「外交だ」


 静かな声。


「“人間の国にとっても必要な人材だ”と、

 そう伝えろ」


 宰相の口元が、わずかに歪む。


「返還を求める、と」


「正式には、保護の申し出だ」


 王は、視線を上げる。


「拒まれた場合は?」


 一瞬の間。


「――代替案を用意する」


 老魔術師が、

 低く答えた。


「彼自身が、

 “戻りたい”と思う状況を作ればいい」



 その頃。


 獣人の城。


 リオは、理由も告げられないまま、

 城の奥へと移されていた。


 窓の外は、森ではない。

 岩壁だ。


「……ガルド?」


 問いかけると、

 王は短く答えた。


「人の国が、

 お前に気づいた」


 胸が、ひくりと鳴る。


「……やっぱり」


「狙いは、力だ」


 迷いのない断言。


「お前を“資源”として見る」


 その言葉に、

 過去の視線が、脳裏に蘇る。


 不吉だ。

 邪魔だ。

 役に立たない。


 ――いや。


 今度は違う。


 役に立つからこそ、奪われる。


「……僕は」


 声が、震える。


「どうなるんですか」


 ガルドは、

 リオの前に立ち、

 金色の瞳で、真っ直ぐ告げた。


「渡さない」


 短く。


「交渉も、取引も、拒否する」


 断言。


「お前は、

 俺の領の要だ」


 その言葉は、

 安心と同時に、

 重くのしかかる。


「……もし、

 人の国が諦めなかったら」


 ガルドの尾が、

 低く揺れた。


「その時は」


 低い声。


「囲いを、完全なものにする」


 ――外には、出られない。


 それは、

 保護ではなく、

 選択肢を奪うという意味だった。


 けれど。


 人の国に戻れば、

 僕は“守られる存在”ではない。


 “使われる存在”になる。


 その違いを、

 僕はもう、理解してしまっていた。


 城の奥で、

 夜の歪みは完全に沈黙している。


 嵐の前の静けさのように。


 そして、

 人の国と獣人の王、

 二つの影が――


 静かに、

 僕一人に向かって伸びていた。

なかなかに盛りすぎて設定を忘れてしまいそうです

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