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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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「王の影に立つ者」

読んでいただけると幸いです

 朝の城は、ひどく静かだった。


 石造りの廊下を渡る風が、

 遠くで低く鳴るだけで、

 獣人たちの話し声は聞こえない。


 窓から差し込む光は淡く、

 森の緑を通しているせいか、

 どこか冷たい色をしていた。


 僕が歩くと、

 周囲の獣人たちは自然に距離を取る。


 露骨な拒絶ではない。

 むしろ丁寧すぎるほどの配慮。


 ――それが、余計に僕を不安にさせた。


「……今日は、城が落ち着かないですね」


 窓辺に立つガルドに、そう声をかける。


 城門の方角から、

 普段よりも鋭い気配が流れ込んできていた。


「側近が戻った」


 簡潔な答え。


「俺の右腕だ」


 胸の奥が、ひくりと鳴る。


 王の右腕。

 この城で、ガルドの次に強い影。


 ――僕の存在を、どう判断されるだろう。



 謁見の間は、

 高い天井と冷たい石床に囲まれていた。


 一歩足を踏み入れただけで、

 空気が張り詰めているのが分かる。


 玉座の前に立つ獣人は一人。


 ガルドよりわずかに背が低いが、

 身に纏う静けさは、刃物のように鋭かった。


 黒に近い濃灰の髪。

 光を吸うような、黒豹の耳と尾。


 その尾が、音もなく揺れた瞬間、

 視線が――真っ直ぐ、僕を射抜いた。


「……人間、ですか」


 低く、冷静な声。


 空気が、一段冷える。


 反射的に、

 ガルドが僕の前へと半歩出た。


「近づくな」


 それは警告ではなく、

 命令だった。


 黒豹の獣人は即座に膝をつく。


「失礼しました」


 深く頭を下げ、名乗る。


「私はザイード。

 黒豹族の獣人にして、獣人王直属の側近」


 立ち上がってもなお、

 その視線は鋭いままだった。


「人間を城内に置く前例はありません」


 事実だけを並べる口調。


 胸が、じわりと締め付けられる。


「説明は必要か」


 ガルドの声が、低く響いた。


「……いえ」


 ザイードは首を振る。


「結界が異様に安定しています」


 ゆっくりと、空気を読むように言葉を選ぶ。


「夜の歪みが、

 この城では沈黙している」


 黒豹の瞳が、僕を捉える。


「原因は、あなたでしょう」


 断定だった。


 逃げ場のない視線。


「黒豹族の感覚でも、

 はっきり分かるほどに」


 沈黙。


「だから、確認に来ました」


 ザイードは、ガルドを見る。


「王が、

 何を理由に囲っているのか」


「俺が決めた」


 それだけで、全てが終わった。


 ザイードは一瞬だけ目を伏せ、

 やがて、深く頭を下げる。


「……承知しました」


 異論はない。

 それが側近の答えだった。



 謁見の後。


 長い廊下を歩く途中、

 ザイードが足を止めた。


 石壁に差し込む光が、

 黒豹の毛並みを鈍く照らす。


「あなたは、

 自分を過小評価しすぎています」


 淡々とした声。


「王は、

 無意味な存在を城に置きません」


 その言葉が、

 ずしりと胸に落ちる。


「……それでも、

 僕は人間です」


「ええ」


 即答だった。


「だからこそ、外に出せば危険だ」


 静かな断言。


「人の国にとっても。

 ――あなた自身にとっても」


 ザイードの尾が、ゆっくりと揺れる。


「覚えておいてください」


 低く告げる。


「狼は、守るために囲い、

 豹は、失わないために見張る」


 意味深な言葉を残し、

 彼は足音もなく去っていった。



 夜。


 部屋の窓から見える森は、

 闇に沈んでいた。


 それでも、歪みは見えない。


 城全体が、

 巨大な殻のように、僕を包んでいる。


 ガルドは、窓辺に立っていた。


「……側近の方、

 怒っていましたか」


「いや」


 短い否定。


「納得した」


 それはそれで、

 逃げ場がない。


「……僕、

 ここにいていいんでしょうか」


 不安が、声になる。


 ガルドは振り返り、

 金色の瞳で、真っ直ぐ僕を見た。


「いるべきだ」


 迷いはない。


「お前がここにいない方が、

 よほど問題だ」


 その言葉は、

 重く、確かで、

 拒む余地がなかった。


 黒豹の側近が認め、

 獣人の王が囲う。


 僕はもう、

 簡単に外へ戻れる存在ではない。


 その事実を、

 城の静寂が、

 じわじわと染み込ませてくる。


ザイードさんもなかなかに男前っぽいですね

豹人だとグイン・サーガ思い出します

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