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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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完全獣化

読んでいただけると幸いです

歪みの中心は、息をしていた。


 抑え込まれ、縫い止められ、

 それでも心臓のように脈打っている。


 ガルドは、その中心に膝をつく。


 剣を支えに地面へ手を突き、

 魔力を流し込む。


 ――中和。


 歪みが軋み、押し返される。

 だが、消えない。


 吸われる。

 魔力が、理性が、判断が。


「……っ」


 喉に血が上がる。


 歪みが囁く。


 ――限界だ

 ――守れなかった

 ――まだ足りない


 過去の戦場が、視界に重なる。

 倒れた兵。

 歪みに呑まれた命。

 叫びすら残らなかった者たち。


 背後には、まだ守るべき国がある。


「……黙れ」


 だが声に力はない。


 歪みは、最奥へ触れてきた。


 長く封じてきたもの。

 王として越えてはならない境界。


 ――獣。



 背骨が鳴る。


 骨が軋み、

 筋肉が引き裂かれる。


「――ぐ、ぁ……!」


 喉から漏れた音は、もはや人のものではない。


 魔力の流れが反転する。

 制御の力が、破壊衝動へと変質する。


 爪が伸び、

 鎧が裂け、

 肩が盛り上がり、

 顎が歪む。


 視界が赤く、低く、広がる。


 完全獣化。


 それは切り札ではない。

 王が最後まで拒んできた、破滅だ。



 歪みが、歓喜した。


 制御を失った魔力が濁流となり溢れ出す。

 抑え込まれていた歪みが、一瞬だけ押し返される。


 だがそれは中和ではない。

 ただの衝突。


 ガルドだったものが、立ち上がる。


 巨躯。

 獣の輪郭。

 王の面影は、ほとんど残っていない。


 次の瞬間、

 前方の人間兵がまとめて吹き飛んだ。


 歪みへ、獣が突っ込む。


 爪で裂き、

 牙で噛み、

 魔力で押し潰す。


 空間が耐えきれず、悲鳴を上げる。


 敵も、味方も、区別はない。


「――下がれ!!」


 誰かが叫ぶ。


 だが、止まらない。


 理性は沈み、

 判断は溶け、

 そこにあるのは、

 戦場そのもの。



 歪みは、確かに押し返されている。


 だが代償は明白だった。


 このままでは、

 すべてが壊れる。


 歪みも、

 国も、

 王も。


 戦場は凍りついていた。


 歪みという災害と、

 完全獣化した獣王。


 二つの破滅が、正面から噛み合っている。


 その外縁へ――

 必死に駆ける影が、確かに近づいていた。


 もし、ここで止める者がいるとすれば。


 それはもう、

 王ではない。

ガルドも耐えきれず獣化しちゃいました

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