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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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歪みの中心に

読んでいただけると幸いです

ガルドは、一人で歩いていた。


 前線でも、後方でもない。

 最も歪みが濃く、最も近づくべきでない場所。


 空間が、呼吸している。


 伸び、縮み、脈打つように揺れ、

 地面は波打ち、空は裂けかけている。


 ――ここが、中心だ。


 獣人兵は、誰一人として近づいていない。

 近づけないのではない。

 近づけば、壊れると分かっているからだ。


「……」


 ガルドは、足を止めない。


 歪みが、王の存在を感知したかのように、

 ざわりと蠢いた。


 耳鳴り。

 視界の端が、ずれる。


 だが――

 踏み込む。



 歪みの中心には、人間側の魔導兵がいた。


 いや、

 “いた”と呼べるかどうかも怪しい。


 立っている者もいる。

 だが、立ち方がおかしい。


 首が、傾きすぎている。

 腕の関節が、逆を向いている。


 それでも、詠唱は止まらない。


 歪みを維持するために、

 彼らは自分の身体を、燃料として投げ込んでいる。


「……続行、だ……」


 一人が、掠れた声を出す。


 直後、

 その男の胸が内側から潰れた。


 骨が砕ける音。


 血が、

 歪みに吸われて消える。


 それでも――

 歪みは、強まる。



 周囲では、人間兵も倒れていた。


 歪みの反動。

 魔導兵の崩壊に引きずられた結果だ。


 耳から血を流し、

 白目を剥き、

 泡を吹いて痙攣している。


 誰も助けない。


 助ける余裕も、意味もない。


「……兵器じゃないな」


 ガルドは、低く吐き捨てる。


「これは――

 自殺だ」



 歪みが、収束を始める。


 中心に向かって、

 すべてが引き寄せられていく。


 空間が、軋む。


 ガルドの鎧が、

 見えない圧にきしんだ。


 足元の地面が、

 紙のようにめくれ上がる。


「王、戻れ!」


 遠くで、誰かが叫ぶ。


 だが、

 ガルドは振り返らない。


 ここを止めなければ、

 前線が、

 街が、

 国が、消える。



 歪みの中心で、

 最後の魔導兵が、崩れ落ちた。


 顔の半分が、

 すでに人ではない。


 眼球が、二つとも、

 別の方向を向いている。


「……終わりだ」


 ガルドは、剣を構える。


 歪みは、

 もう制御されていない。


 術者が死んでも、

 止まらない段階に入っている。


 暴走だ。



 空間が、悲鳴を上げる。


 次の瞬間、

 歪みが、爆ぜるように広がった。


 獣人兵が、吹き飛ばされる。

 人間兵も、巻き込まれる。


 敵味方の区別は、ない。


 死体すら、残らない。


「……来るか」


 ガルドは、歯を食いしばる。


 ここが、

 最悪だ。


 最も濃く、

 最も危険で、

 最も近づいてはならない歪み。


 それでも――

 王は、ここに立つ。


 理性のまま、

 耐え切れるか。


 それとも。


 歪みは、

 王を中心に、

 さらに収束し始めていた。


 戦場は、

 次の破滅を、

 息を殺して待っている。

どうなるんだろ

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