決意2
読んでいただけると幸いです
最後の一人が、喉を押さえたまま崩れ落ちた。
短い音。
それだけで、地下通路は再び静寂に包まれる。
血の匂いは、濃い。
だが――
歪みの気配は、ない。
僕は、壁に手をついて息を整えた。
「……終わった?」
自分の声が、やけに遠く聞こえる。
軽装。
刃は細く、反射を抑えた黒塗り。
呼吸を殺すための口当て。
――完全に、
潜入部隊。
「ええ」
ザイードが周囲を警戒したまま答える。
裏では、
こうして静かに、
確実に。
「……僕だけを」
呟くと、ザイードが視線を寄こす。
「そうでしょう」
僕は、倒れた人間の顔を見る。
若い。
でも、迷いはなかった。
命令を遂行するためだけに、
ここまで来た顔だ。
(……この人たちも、
戦場では使い捨てにされてる)
胸の奥が、
じわりと重くなる。
でも。
同情している暇は、なかった。
僕は、顔を上げた。
「……行く」
ザイードが、すぐに理解したように目を細める。
「戦場ですね」
「うん」
短く答える。
「ここにいても、
次が来るだけだ」
それに――
嫌な予感が、消えない。
歪みの気配は、
地下にまで、
確実に届き始めている。
ガルドが、無事なはずがない。
「護衛を――」
「最小限でいい」
言葉を被せる。
「これ以上、
人を割かないで」
ザイードは、しばらく僕を見つめた。
そして、静かに頷く。
「……分かりました」
その声は、重い。
地上へ向かう通路を進むにつれて、
空気が変わる。
遠くから、
低く、鈍い衝撃。
地面が、
揺れている。
歪みが、
戦場で本格的に使われている証拠。
「……お願いだから」
思わず、呟く。
「……立ってて」
誰にともなく。
地上に出た瞬間、
熱と、血と、怒号が一気に押し寄せた。
視界の先で、
獣人たちが、じわじわと押されている。
人間側の奥――
歪みの中心が、
脈打つように揺れていた。
そして。
見えた。
前線の、さらに前。
全身に傷を負いながら、
一歩も退かず、
剣を振るい続ける背中。
「……ガルド」
声は届かない。
それでも、
僕は走り出す。
怖い。
足が震える。
でも――
あの背中を、
一人で戦わせるわけにはいかない。
歪みが世界を壊そうとするなら。
僕は、
王のいる場所まで行く。
戦場の中心へ。
最も、
生き残れない場所へ。
戦場に向かうリオ
強くなったね




