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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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代償

読んでいただけると幸いです

歪みは、最初は制御されていた。


 少なくとも――

 そう見えていた。


 人間側の前線に並ぶ魔導兵たちは、

 互いに距離を取り、地面に刻んだ魔法陣に立っている。


 詠唱は短く、効率化され、

 代償も最小限に抑えられている――はずだった。


「第一段階、維持!」


 指揮官の声が飛ぶ。


 歪みが生まれる。


 空間が、薄く、静かに揺れる。


 獣人兵が弾かれ、

 戦果は、確かに出た。


「成功だ……」


 誰かが安堵の息を吐いた、その直後。


 魔導兵の一人が、膝をついた。


「……っ?」


 異変に気づいた仲間が、声をかける。


「おい、どうした」


 返事はない。


 次の瞬間。


 その魔導兵の背中が、内側から裂けた。


「――っ、が……!!」


 悲鳴は、途中で歪む。


 声帯が、

 空間に引き延ばされ、

 言葉にならない音に変わる。


 身体が、

 ねじれ、

 折れ、

 歪みに引きずり込まれるように消えた。


「……っ!」


 一瞬の沈黙。


 だが、指揮官は叫ぶ。


「続行しろ!

 歪みは安定している!」


 安定など、していない。


 次の歪み。


 今度は二人の魔導兵が、

 同時に顔を歪めた。


 鼻血ではない。


 血が、黒い。


「内臓が……逆流して……」


 言い終わる前に、

 喉が、内側に引き込まれた。


 首が、ありえない方向に曲がる。


 倒れた。


 もう、動かない。


「……問題ない!」


 指揮官は声を荒げる。


「術式は機能している!

 代償は、想定内だ!」


 想定内。


 その言葉が、

 兵たちの心を冷やした。


 歪みは、段階を上げる。


 三重。


 四重。


 空間が、厚みを持ち始める。


 その瞬間――

 兵士たちにも影響が出た。


 歪みの近くにいた歩兵が、

 突然、叫び声を上げる。


「足が……抜けない!」


 地面に縫い止められたように、

 動かない。


 いや――

 動けないのではない。


 足だけが、空間に固定されている。


 次の瞬間、

 上半身だけが前に進み、

 身体が、引き裂かれた。


 血が飛ぶ。


 叫びが飛ぶ。


 だが、歪みは止まらない。


「下がれ!

 歪みから距離を取れ!」


 遅い。


 歪みは、

 距離を意味のないものに変える。


 五つ目の歪み。


 それは、

 味方を巻き込み始めた。


 魔導兵の詠唱が乱れ、

 術式が、互いに干渉する。


 歪みが、歪みを喰う。


 その反動が、

 術者たちへ一気に返る。


「――あ、ああああ!!」


 十数人の魔導兵が、

 一斉に崩れ落ちた。


 皮膚が波打ち、

 骨が浮き、

 目が、ずれる。


 人間の形を保てない。


「……やめろ……」


 誰かが、震える声で呟く。


「もう……限界だ……」


 だが、

 指揮官は退かない。


「止めるな!」


 歪みは、

 すでに兵器ではない。


 連鎖災害だ。


 使えば使うほど、

 周囲を巻き込み、

 術者も兵士も、

 無差別に壊していく。


 それでも、

 人間側は止められない。


 止めた瞬間、

 歪みの反動が、

 一斉に返るからだ。


「……戻れない」


 誰かが呟く。


 歪みを展開している限り、

 生き延びる可能性がある。


 だが、

 解除すれば――

 全員が、まとめて壊れる。


 だから、

 続けるしかない。


 歪みの中で、

 人間兵は死に、

 魔導兵は壊れ、

 それでも前線は押し出される。


 ガルドは、

 その光景を、前線から見ていた。


「……狂気だ」


 敵を斬るよりも、

 胸を抉る光景。


 歪みは、

 獣人国を押している。


 同時に――

 人間国自身を、確実に殺していた。


 それでも。


 人間側は、

 まだ、やめない。


 まだ、

 壊れきっていない者がいる。


 戦場は、

 さらに深い地獄へ、

 踏み込もうとしていた。

両国とも普段は自国の結界で歪み被害は少なかったけど

禁術で歪みを扱うとこんな事になっちゃうんですね

怖い怖い

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