表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/39

前触れ

読んでいただけると幸いです

前線の空気は、重く沈んでいた。


叫び声は少ない。

派手な魔術も、ほとんどない。


それが逆に――

人間側が本気だという証だった。



「左翼、圧を上げてきます」


伝令の声は短い。


「術式は使っていません。歩兵主体です」



ガルドは、前を見たまま頷いた。


「構うな」


剣を握り直す。


「押し返せ。崩すのは向こうだ」



獣人たちは迷わず前に出る。


王が、退かない。


それだけで、士気は保たれる。



人間の兵は、無言で迫ってきた。


鎧は軽く、

動きに一切の無駄がない。


(……隠密部隊を、前線に混ぜている)


正面は囮。


その発想に、

胸の奥が嫌にざわついた。



――城。


思考が、そこへ引っ張られる。



(……考えるな)


歯を食いしばる。


今ここで王が迷えば、

前線は一瞬で崩れる。



「王!」


右から、敵が踏み込む。


ガルドは、踏み出した。



剣が閃く。


一撃。


人間兵の動きが止まり、

そのまま崩れ落ちる。



二人目。

三人目。


血が、地に吸われていく。



(遅い)


城からの報告が、来ない。



「前進!」


叫ぶ。


「今だ、押し切れ!」



獣人軍が、吼える。


地鳴りのような音。


人間側の陣が、わずかに歪む。



だが――

崩れない。


(……粘るな)


退く気配が、ない。


まるで、

時間を稼いでいるようだった。



「王」


側近が、低く言う。


「敵の布陣が、妙です」


「こちらを見ていません」



ガルドの金の瞳が、細くなる。


「……城だな」



即座に理解する。


奪う気だ。


正面からは、来ない。



「だが」


ガルドは、言い切った。


「俺は動かん」



側近が、一瞬言葉を詰まらせる。


「しかし――」


「ここを空ければ」


ガルドは、剣を振るいながら続ける。


「国が死ぬ」



一歩も退かない。


獣の本能が、吠えている。


――行け

――守れ

――番だ



だが、王はそれを噛み殺す。



「影がいる」


低く、確信に満ちた声。


「城は、任せてある」



それが、信頼であり、

覚悟だった。



人間側が、ついに後退を始める。


完全撤退ではない。


陣を引きながら、

こちらの出方を窺っている。



「深追いするな」


ガルドが命じる。


「ここで決める必要はない」



敵は、まだ手を隠している。


全面戦争には、

踏み切っていない。



ガルドは、剣先を下ろさない。


血の滴る刃を、

地面に向けたまま。



(……無事でいろ)


胸の奥で、

それだけを、強く思う。



――もし、影が折れていたら。


――もし、城が抜かれていたら。


考えない。


考えないが――

覚悟は、もう決めている。



そのとき、

遠くで、合図の狼煙が上がった。


城からではない。


敵陣から。



ガルドは、目を細める。


「……次の段階だな」



人間国は、退かない。


獣人国も、折れない。


そして――

王は、前線に立ち続ける。


すべてを背負ったまま。

何か起こるようです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ