表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/39

「ここは、逃げ場のない場所だ」

読んでいただけると幸いです

 城の中は、静かだった。


 石造りの廊下は広く、

 獣人たちの足音が遠くに響くだけ。


 彼らは皆、僕を見ると足を止め、

 深く頭を下げた。


「……?」


 戸惑っていると、

 隣を歩くガルドが、低く言う。


「俺が連れてきた」


 それだけで、理由として十分らしい。


 誰一人、

 人間がここにいることを咎めない。


 それどころか――

 好奇の視線すら、向けられなかった。



 通された部屋は、

 城の奥、王の私室に近い場所だった。


 柔らかな毛皮が敷かれ、

 暖炉の火が揺れている。


「……立派すぎます」


「必要だ」


 短い返事。


「お前は、消耗している」


 そう言われて、

 初めて自覚した。


 身体が、重い。

 瞼が、落ちてきそうだ。


「……夜になると、どうしても……」


「無理をするな」


 ガルドはそう言って、

 僕の前に膝をついた。


 視線が、同じ高さになる。


 それだけで、

 心臓が跳ねる。


「触れる」


 確認するような一言。


 頷くと、

 大きな手が、そっと僕の手首に触れた。


 ――あ。


 熱い。


 でも、不快じゃない。


 触れた瞬間、

 頭の奥で鳴り続けていた痛みが、

 すっと引いていく。


「……楽、です……」


 息を吐くように言うと、

 ガルドの眉が、わずかに動いた。


「やはりな」


 低く、満足げな声。


「お前の歪み視は、俺の魔力で安定する」


「……じゃあ……」


「離す理由がない」


 即答だった。


 冗談でも、優しさでもない。


 ただの、事実。



 その日から、

 僕の生活は一変した。


 食事は、王と同じものが運ばれ、

 夜になると、必ずガルドが様子を見に来る。


「眠れ」


「……はい」


 それだけのやり取り。


 なのに、不思議と安心できた。


 夜。


 部屋の窓から見える森には、

 かすかな歪みが漂っている。


 でも、

 以前のような恐怖はなかった。


 城全体が、

 巨大な檻のように、

 僕を守っている。


 ……守っている?


 それとも。



 眠りに落ちる直前、

 扉が、静かに開いた。


 ガルドだった。


「起こしたか」


「いえ……」


 彼は、部屋の中に入り、

 躊躇なく僕のベッドの脇に座る。


 距離が、近い。


「……あの」


「逃げようと思ったか」


 心臓が、跳ねた。


「いいえ」


 反射的に否定する。


 嘘じゃない。


 少なくとも、今は。


「なら、いい」


 そう言って、

 ガルドは僕の髪に、そっと触れた。


 獣人の指は、

 少し硬くて、

 温かい。


「ここは、安全だ」


 低く、囁く。


「お前が外で壊れることは、許さない」


 それは――

 優しさなのか、

 執着なのか。


 分からない。


 でも。


 人の街で追い出された僕にとって、

 この言葉は、あまりにも甘かった。


 目を閉じると、

 その温もりが、

 確かにそこにあった。


 ――ここは、逃げ場のない場所だ。


 けれど同時に、

 初めて、

 「帰りたい」と思える場所でもあった。

魔力の相性も良かったようで

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ