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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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守りの影

読んでいただけると幸いです

城の奥は、異様なほど静かだった。


戦場に近いはずの時間帯。

それでも、風の音すら聞こえない。


(……静かすぎる)


胸の奥に、薄い膜のような違和感が広がる。


「足音が、減りました」


護衛の一人が小声で言った。


ザイードは、即座に視線を上げる。


「……消えた、ではない」


低く、抑えた声。


「溶けたな」


人間側は、来ていないのではない。

もう、入り込んでいる。



次の瞬間。


灯りが、一つ消えた。


音はない。

魔術の揺らぎも、ほとんど感じない。


(……遮断系)


かなり訓練された術師だ。



「隊列を詰める」


ザイードの指示は短い。


「気配を追うな。違和感だけを拾え」



その直後。


背後で、誰かが息を詰めた。


「――っ」


声にならない悲鳴。


振り返った時には、

護衛の一人が、膝をついていた。


首元に、細い刃。


血は、ほとんど出ていない。


(……いつの間に)



「動くな」


耳元で、囁く声。


冷たい。


刃が、リオの喉に触れる。



振り向かなくても分かる。


人間だ。


それも、前線に出る兵じゃない。


――奪うための兵。



「騒げば、殺す」


「抵抗すれば、時間を無駄にする」


淡々とした声。


感情がない。



(……本当に、僕だけを取りに来てる)



ザイードが、少し離れた位置で止まっている。


動かない。


動けないのではない。


――動かせない状況を、作られている。



床に、薄く刻まれた紋。


封殺陣。


一歩踏み込めば、

周囲ごと切り取られる。



「王は前線だ」


背後の男が、囁く。


「ここには来ない」



胸が、ひりつく。


(……分かってる)


ガルドは、前線にいる。


国を背負って。



「大人しく――」


男が言いかけた、その瞬間。


空気が、歪んだ。



「そこまでだ」


闇から、低い声。



黒い影が、壁から剥がれるように現れる。


ザイードだった。


さっきまで、

確かにそこには“いなかった”。



「……影か」


男が、初めて舌打ちする。



次の瞬間。


音は、ほとんどなかった。


刃と鉤爪が交錯し、

闇の中で、何かが弾ける。



同時に、周囲の壁から

さらに三つの影が浮かび上がる。


人間兵。


最初から、分散侵入していた。



「第二層、突破済みだ!」


どこかで、小さな声。


(……まだ、いる)



ザイードが、一歩前に出る。


完全に、僕の前を塞ぐ位置。


「リオ」


低く、短く。


「目を閉じろ」



その言葉の意味を考える前に――


闇が、裂けた。



――場面が、切り替わる。



前線。


風が、血の匂いを運んでいた。



獣人国と人間国の軍勢が、

静かに、しかし確実にぶつかり合っている。


派手な詠唱はない。


殺し合いだけが、積み上がる。



最前列。


ガルドは、剣を振るっていた。



一撃で、倒す。


二撃目は、必要ない。


迷いも、躊躇もない。



「前へ出ろ」


低く、腹の底から出る声。


「ここで止まるな」



王は、退かない。


前線を離れない。



だが――


一瞬。


胸の奥に、引っかかる感覚。



(……遅い)


報告が、来ない。


城からの連絡が。



ガルドは、歯を食いしばる。


それでも、振り返らない。



――前線が崩れれば、全てが終わる。


――城は、影が守る。


そう信じている。


信じるしか、ない。



戦場の向こうで、

人間軍が、静かに布陣を変え始めていた。


――奪取が失敗しても、

次の一手は、もう用意されている。


それを知る者は、

まだ、誰もいなかった。


開戦と同時に城に攻め込まれるのもどうかと思うけど人間側にも手練れがいるってことで!

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