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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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28/39

最初の一撃は、夜明け前に

読んでいただけると幸いです

夜が、裂けた。


正確には――

裂いたのは、人間側だった。



城壁の上で、魔術の光が走った。


赤でも青でもない、

鈍く濁った白光。

威嚇のための魔術じゃない。


(……撃つ気だ)


次の瞬間、地鳴り。


境界線の外側で、大地が抉れた。

土と石が舞い上がり、

結界代わりに設けられていた監視塔の一本が、音を立てて崩れる。


完全な侵攻ではない。

だが――明確な攻撃。



「伝令を走らせろ!」


「負傷者を後方へ!」


怒号が飛び交う。


城は、もう戦場だった。



僕は城壁の内側、

指揮塔へ続く回廊を走っていた。


足音が重なる。

獣人たちの動きは速く、迷いがない。


(……本当に、始まったんだ)



指揮塔の上。


ガルドは、すでにそこにいた。


鎧を身にまとい、

片手には大剣。

獣人王としての威圧が、周囲を圧倒している。


「状況」


短く、鋭い声。


「第一魔術射、境界線越え」


「死者は?」


「今のところ無し。だが次は――」



「十分だ」


ガルドは遮った。


「これは宣戦布告だ」


人間国は、もう言葉を捨てている。


「全軍、第一防衛陣形」


「深入りはさせるな。

 だが――逃がすな」


命令は簡潔で、容赦がない。



その背中を見て、

僕は息を呑んだ。


(……王だ)


迷いがない。

怒りすら、制御されている。



「リオ」


呼ばれて、我に返る。


「ここから動くな」


有無を言わせない声。


「戦場を見るなとは言わん」


「だが、踏み込むな」



「……分かりました」


喉が、少しだけ渇く。



その瞬間。


再び、光。


今度は、城壁に直撃した。


防護陣が悲鳴を上げ、

空気が震える。



獣人たちの間に、ざわめきが走る。


「第二射!」


「今度は距離を詰めてきている!」



ガルドの目が、鋭く細まる。


「……調子に乗るなよ」


低く、獣のような声。



彼は、大剣を肩に担いだ。


「俺が出る」



周囲が、息を呑む。


「王!」


「前線に立つのですか!」



「当然だ」


即答。


「王が退いて、

 誰が前に出る」


一瞬、視線が僕に向く。


「リオ」


「ここにいろ」


短い言葉。


だがそこには、

命令と――信頼があった。



「必ず戻る」


それだけ言って、

ガルドは城壁を越えた。



獣人王が前線に立った瞬間、

空気が変わった。


怒号。

咆哮。

獣人たちの士気が、一気に跳ね上がる。



(……強い)


剣を振るう姿は、

まるで嵐だった。


人間の魔術陣が崩れ、

前衛部隊が後退する。


完全な侵攻じゃない。

だが、押し返している。



そのとき。


胸の奥が、ひくりと痛んだ。


理由は分からない。

ただ、嫌な予感だけがあった。


(……近い)



ザイードが、血相を変えて駆け上がってくる。


「リオ!」


息を切らしながら。


「人間国、別働隊を確認」


「狙いは――」


一瞬、言葉を切る。


「王ではない」



僕の背筋が、凍る。


「……僕ですか」


ザイードは、否定しなかった。



前線で王を引きつけ、

裏から――番を奪う。


一度、失敗している策。


それでも、

諦めていない。



遠くで、再び爆音。


ガルドは、まだ前線だ。


(……言われた通り、待つべき?)


心臓が、早鐘を打つ。


でも――



(僕は、守られるだけの存在じゃない)


そう決めたはずだ。



剣の音。

魔術の光。


戦争は、もう始まっている。


そして――

僕も、その渦の中に足を踏み入れようとしていた。


リオ!気をつけて

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