表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/39

覚悟

読んでいただけると幸いです

「――危険だ」


 玉座の間に、硬い声が落ちた。


「人間を番にした王が、獣化衝動を制御できる保証はない」

「暴走すれば、国が揺らぐ」


 ざわめきが広がる中、ガルドは玉座に座ったまま動かなかった。


 否定しない。

 弁明もしない。


 ――その恐怖は、正しい。


 己の内に棲む獣の大きさを、誰よりも知っている。


 やがて、ガルドは静かに立ち上がった。


「もっともだ」


 低く、短く。


「だから制御できねば、王でいる意味はない」


 一歩、玉座から降りる。


「言葉で信じろとは言わん」


 胸の奥で、獣が反応する。

 ――挑め、と。


「見せる」


 断定。


「獣化しても、俺は暴れん」


 空気が、張りつめた。


「地下の儀式の間を使え」

「誘発式魔術も許す」


 自ら逃げ場を断つ。


「制御できなければ、王位は返上する」


 リオの胸が、痛む。


 ――それほどの覚悟を、背負わせている。



 地下の儀式の間。


 石の冷気が、肌にまとわりつく。


 魔術陣が起動した瞬間、ガルドの内側で“それ”が目を覚ました。


 ――来たか。


 獣化誘発。


 本能を直接揺さぶる、荒々しい魔力。


 血が熱くなる。

 視界が、わずかに赤に染まる。


 壊せ。

 叩け。

 踏み潰せ。


 頭の奥で、獣が吠える。


「……始めろ」


 声を出したことで、かろうじて人であると証明する。


 肩が、勝手に広がる。

 骨が、内側で軋む。


 ――油断すれば、一歩で持っていかれる。


 ガルドは、歯を食いしばる。


 この衝動を知っている。

 戦場で、何度も味わった。


 だが今は、違う。


 壊してはならない。

 守ると決めた。


「……下がれ」


 リオに向けた声。


 近くにいられると、獣が喜ぶ。

 独占欲が、牙を剥く。


 ――噛みつきたい。


 その考えが浮かんだ瞬間、背筋が冷える。


 それだけは、絶対に違う。


 一方で、リオは動けずにいた。


 ガルドの気配が、あまりにも濃い。


 獣の熱。

 押し潰されそうな威圧。


 怖い。

 正直に、怖い。


 けれど。


 離れた瞬間、彼は一人で獣と向き合う。


 それが、どうしようもなく分かってしまう。


 ――ここにいなければ。


「……聞こえなかったか」


 ガルドの声が、獣の低さを帯びる。


「今の俺は、危険だ」


 それは警告であり、必死な制御だった。


 リオは、足の震えを抑えながら、半歩前に出る。


 触れない距離。

 だが、逃げない距離。


 胸が、張り裂けそうになる。


 ――もし、抑えきれなかったら。


 それでも、目を逸らさない。


 ガルドの内側で、獣が吠えた。


 近い。

 奪え。

 囲い込め。


 爪が伸び、床に食い込む。


 石に、ひびが走る。


「……くそ」


 吐き捨てる。


 理性が、獣の首を締め上げる。


 ――違う。

 こいつは、獲物じゃない。


 守ると決めた存在だ。


 獣が、激しく抵抗する。


 身体が、震える。


 今ここで完全に変われば、終わりだ。


 だが――。


 リオの匂いが、鼻を打つ。


 落ち着いた呼吸。

 必死に保たれた平静。


 逃げない選択。


 それが、強烈に胸を打つ。


 ――信じている。


 その事実が、獣を縛った。


 ガルドは、深く息を吸う。


 一度。

 二度。


 呼吸に、意識を集中させる。


 戦場で身につけた、生存の術。


 爪が、ゆっくりと引っ込む。


 牙が、消える。


 熱が、少しずつ引いていく。


 理性が、戻る。


 地下の空気が、静まった。


 リオは、ようやく息を吐いた。


 膝が、かすかに震える。


 ――抑えられた。


 彼の意思で。


 ガルドは、顔を上げた。


「……見ただろう」


 低く、確かな声。


「俺は獣になる」

「だが、理性を捨てん」


 一瞬だけ、リオを見る。


 そこにあるのは、獣ではなく――選んだ男の目。


 この瞬間、

 地下の儀式の間は、

 恐怖ではなく、

 信頼によって越えられた。

これで一応獣化の心配は無くなったかな?

これから人間たちとの戦争の話になっていきます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ