檻の外で鳴る鎖
読んでいただけると幸いです
夜明け前、城はまだ眠っていた。
ザイードは王の私室の前で足を止め、扉に手をかけ ることなく気配だけを読む。
空気に残る獣の名残は濃い。だが、暴走の痕跡はな い。
(……抑え切ったか)
それがどれほど危険なことか、彼は知っている。
背を向け、影を呼ぶ。
昨夜から今朝にかけて城内を動いた者、すべてを洗い出すために。
一方、私室の中。
ガルドは窓辺に立ち、夜明けの光を睨んでいた。人の姿をしていても、背中に宿る緊張は獣のそれだ。
「……眠れましたか」
背後からの問いに、短く息を吐く。
「少しな」
完全な嘘ではない。
意識を手放せただけで、十分だった。
振り返ると、リオが立っている。
昨夜、結界の中に踏み込んだ人間。
恐怖を知ったうえで、離れなかった存在。
「……無茶をした」
責める声ではない。
自分自身への言葉だった。
リオは一度、謝りかけてから首を振る。
「違います。選びました」
「俺が獣であることをか」
「あなたが、あなたであることを」
その瞬間、扉が叩かれた。
「王」
ザイードの声は、いつもより低い。
差し出された書状には、南境諸侯の正式な請願が記されていた。
表向きは「番の安全確認」。
実際は、王の獣化が制御されているかを公の場で証明せよ、という要求。
拒めば弱さ。
応じれば、番が晒される。
リオは迷わず一歩前に出た。
「行きます」
ザイードが咎める前に、ガルドが視線で制した。
「選択だ」
王の声だった。
「俺が檻に入るか、王として牙を見せるか」
視線がリオに向く。
逃げ道を残した問い。
「後悔するか」
「一人で守られる方が、後悔します」
その答えで、すべてが決まった。
「分かった。檻に入らない王を見せる」
ザイードは静かに片膝をつく。
「影は、命を賭けて守ります」
城は朝を迎え、何事もないように動き出す。
だがその内側では、すでに逃げ道のない試練が口を開けていた。
試されるのは、王の理性。
そして、番であることの真の代価。
嵐は、もう目前だった。
これからちょっと説明くさいかもしれないです




