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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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「王は、檻に入る」

読んでいただけると幸いです


 眠れなかった。


 正確には――

 眠ることを、選ばなかった。



 隣で、

 リオの呼吸が、

 規則正しく続いている。


 小さく、

 温かい。


 それだけで、

 胸の奥の獣が、

 何度も、

 爪を立てた。



(……近すぎる)


 ガルドは、

 ゆっくりと、

 息を吐く。


 抑えろ。

 鎮めろ。


 ――王であれ。



 だが、

 脳裏に、

 昼の光景が蘇る。


 崩れ落ちる石。

 間一髪で、

 引き寄せられた体。


 もし、

 ザイードがいなかったら。


 もし、

 一瞬でも、

 遅れていたら。



 ――想像しただけで、

 視界が、

 赤く染まった。



 身体が、

 軋む。


 抑えていたはずの変化が、

 じわりと、

 表に出る。


 指先が、

 僅かに、

 爪を帯びる。


 呼吸が、

 深く、

 低くなる。



(……駄目だ)


 ここで、

 完全獣化すれば、

 気配だけで、

 番を起こす。


 それだけは、

 避けなければならない。



 ガルドは、

 そっと、

 寝台を抜けた。


 月明かりの差す、

 奥の部屋。


 獣化抑制の結界が張られた、

 王専用の間。



 扉を閉めた瞬間。


 ――理性が、

 一段、

 外れた。



 骨が鳴る。


 肩が広がり、

 背骨が、

 獣の形へと引き延ばされる。


 毛並みが、

 皮膚を覆い、

 視界が、

 夜に適応していく。


 完全獣化。



 黒と金の混じる巨躯が、

 月明かりの下で、

 静止する。


 唸り声が、

 喉の奥で、

 震えた。



(……殺す)


 思考は、

 単純だった。


 番を狙った者。


 直接、

 手を下していなくても、

 関係ない。


 牙を向けた時点で、

 敵だ。



 床に、

 深く爪が食い込む。


 石が、

 ひび割れる。


 このままでは、

 城を出る。


 影を引き裂き、

 牙を振るう。


 それが、

 獣の本能。



 ――そのとき。


 結界の向こうから、

 微かな気配。



「……ガルド?」


 眠たげな、

 それでも、

 はっきりとした声。



 獣の動きが、

 止まった。


 金の瞳が、

 扉を見る。



(……来るな)


 願った。


 だが、

 足音は、

 近づく。



 扉が、

 ゆっくりと、

 開く。


 そこに立っていたのは、

 リオだった。


 無防備な、

 人の姿。



 獣の喉が、

 低く鳴る。


 恐怖ではない。


 衝動。



「……来るな」


 獣の声。


 荒く、

 必死な警告。


「今の俺は、

 ――危ない」



 それでも、

 リオは、

 一歩、

 踏み出した。



「……知ってます」


 震えている。


 それでも、

 逃げない。


「でも……

 一人で、

 苦しまないでください」



 獣の前で、

 そんなことを言う人間は、

 一人しかいない。



 次の瞬間。


 巨躯が、

 床に伏せられた。


 牙を、

 隠すように。


 爪を、

 石から離すように。



 ――自ら、

 檻に入る。



(……勝てない)


 敵ではない。


 この存在には。



 リオが、

 そっと、

 額に触れる。


 獣の熱。


 それでも、

 拒まれない。



「……守ります」


 小さな声。


「一緒に」



 その言葉で。


 暴走寸前だった本能が、

 ゆっくりと、

 鎮まっていった。



 夜明け前。


 獣は、

 再び、

 人へ戻る。


 だが、

 ガルドは、

 はっきりと理解した。



 ――次に、

 番を狙う者が現れたら。


 もう、

 檻には、

 留まれない。


 それでも。


 この人間がいる限り、

 王は、

 理性を選ぶ。


 それが、

 最も、

 危険な覚悟だとしても。


負担がキツそうですね

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