表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/39

「その獣人は、王でした」

読んでいただけると幸いです

森の空気が、変わった。


 彼が一歩踏み出すだけで、

 夜の歪みが引いていくのが分かる。


 まるで――

 世界が、彼に従っているみたいだ。


「名前は」


 低い声に問われ、

 一瞬、言葉が詰まる。


「……リオ、です」


 口に出した途端、

 胸の奥がきゅっと縮んだ。


 もう名乗る相手なんて、いないと思っていたから。


「リオ」


 獣人は、その名を確かめるように繰り返す。


 不思議と、

 呼ばれただけなのに、

 身体の震えが少しだけ収まった。


「俺は、ガルド」


 短く告げられたその名に、

 思考が一拍、遅れる。


 ――ガルド。


 獣人族の王。

 人の国でも、子どもを黙らせるために使われる名前。


「……え?」


 間抜けな声が出た。


 逃げなきゃいけない。

 そう分かっているのに、足が動かない。


「やはり知られているか」


 ガルドは気にした様子もなく、

 僕の背後――森の奥へと視線を向けた。


「この先は獣人領だ。

 人間が一人で彷徨えば、朝を迎えられん」


 淡々とした事実。


 脅しでも、優しさでもない。

 ただの現実。


「……僕は、街を追い出されました」


 気づけば、そう口にしていた。


「行く場所は、ありません」


 一瞬、沈黙。


 次の瞬間、

 ガルドは迷いなく言った。


「なら、ここに来い」


 短い。

 選択肢もない。


「俺の城だ」


 心臓が、大きく鳴る。


「で、でも……僕は人間で……」


「関係ない」


 即答だった。


「お前は、夜の歪みが見える」


 金色の瞳が、真っ直ぐ僕を射抜く。


「それだけで、十分だ」


 十分――?


 今まで、

 邪魔だ、不吉だ、迷惑だとしか言われなかったのに。


「……怖くないんですか」


 思わず、そう聞いていた。


 ガルドは、ほんの少しだけ目を細める。


「怖いのは、歪みを放置することだ」


 その視線が、今度は僕自身に向いた。


「お前を失う方が、よほどな」


 言葉の意味を考える前に、

 胸の奥が、じんと熱くなった。



 獣人の城は、

 森のさらに奥、巨大な岩山を削って作られていた。


 近づくにつれ、

 僕の視界から歪みが消えていく。


「……楽、です」


 思わず零れた本音に、

 ガルドがちらりとこちらを見る。


「俺の領地だ。歪みは抑えている」


「……ずっと、こんな場所にいられたら……」


 言いかけて、口を噤む。


 そんな資格、僕にはない。


「ここでは、無理をするな」


 城門をくぐりながら、ガルドは言った。


「夜は外に出るな。

 必要なものは、すべて用意させる」


 それは、

 命令のようで、

 保護のようで――


「……外に、出ちゃだめなんですか」


 恐る恐る尋ねると、

 ガルドは足を止めた。


 少しだけ、

 本当に少しだけ、声が低くなる。


「出すつもりはない」


 はっきりと。


「お前は、俺の城に必要な存在だ」


 逃げ場のない言葉。


 でも、不思議と――

 怖くはなかった。


 胸の奥にあった、

 冷たい空洞が、

 ゆっくりと塞がっていく感覚。


 人の世界では、居場所がなかった。


 けれど。


 ここでは――

 この獣人の王のそばでは、

 生きていていいのかもしれない。


 そう思ってしまった自分に、

 僕はまだ、気づいていなかった。


ガルドかっこいいですね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ