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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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「触れていい場所」

読んでいただけると幸いです

 扉が閉まった瞬間、

 空気が変わった。


 王の私室。

 厚い扉。

 外界を遮断する静けさ。


 ――誰も、見ていない。



 ガルドは、

 しばらく動かなかった。


 背を扉に預け、

 深く、長く息を吐く。


 その肩が、

 わずかに上下するのを見て、

 胸が締め付けられる。


「……限界だ」


 低く、

 正直な声。


「……ごめんなさい」


 思わず、

 そう言っていた。


「俺が、

 公の場に連れ出した」


 首を振る。


「お前は、

 何も悪くない」


 視線が、

 真っ直ぐこちらを向く。


 金色の瞳が、

 剥き出しの感情を宿している。



「……触れてもいいですか」


 自分でも、

 驚くほど静かな声だった。


 ガルドの呼吸が、

 一瞬、止まる。


「……許可を取るな」


 苦しそうに、

 笑う。


「拒否できなくなる」


 それでも、

 動かない。


 ――待っている。



 一歩、

 近づく。


 たったそれだけで、

 胸の奥が、

 熱を帯びる。


 ガルドの指が、

 迷うように動き、

 止まる。


 触れない。


 触れないまま、

 距離だけが、

 消えていく。



 僕は、

 そっと、

 彼の胸に手を置いた。


 ――鼓動。


 強く、

 早い。


「……生きてますね」


 小さく、

 言う。


 ガルドの喉が、

 鳴った。


「……お前のせいだ」



 次の瞬間。


 腕が、

 回された。


 乱暴じゃない。

 けれど、

 逃がさない抱き方。


 身体が、

 ぴったりと重なる。


 熱が、

 完全に一致する。


「……近い」


「離せない」


 即答。


「番だからな」



 額が、

 触れる。


 鼻先が、

 掠める。


 けれど――

 口づけない。


 寸前で、

 止めている。


「……どうして」


「今、

 触れたら」


 声が、

 低く、掠れる。


「お前を、

 壊す」



 胸が、

 きゅっとなる。


「……大丈夫です」


 小さく、

 でも、はっきり言う。


「僕は、

 選びました」


 その言葉に、

 ガルドの理性が、

 音を立てて揺れた。


 最初に変わったのは、

 耳でも、

 瞳でもなかった。


 ――体温だ。


 抱き寄せられた瞬間、

 ガルドの身体が、

 明らかに違う熱を帯びた。


「……っ」


 息を吸う音が、

 喉の奥で、

 低く震える。



 骨が、

 静かに軋む。


 音を立てない変化。

 だが、

 確実な変質。


 腕に回された手は、

 人の形を保っているのに、

 力の質が、

 すでに獣だった。



「……見るな」


 そう言いながら、

 視線を逸らさせない。


 矛盾した命令。


「……逃げるな」


 声は、

 もう、人のものではない。



 月明かりの中で、

 ガルドの身体が、

 ゆっくりと変わっていく。


 肩幅が広がり、

 筋肉の輪郭が、

 よりはっきりと浮かぶ。


 皮膚の上に、

 毛並みが現れる。


 黒と金が混じる、

 獣の体毛。


 顔つきも、

 完全に変わった。


 人の名残を残しつつ、

 獣の顎、

 鋭い歯。


 ――それでも、

 目だけは、

 僕を見ている。



「……怖いか」


 獣の声で、

 問いかけられる。


「……いいえ」


 喉が、

 少し乾く。


 でも、

 嘘じゃない。


「あなたが、

 誰か分かるから」


 その言葉に。


 獣の動きが、

 一瞬、止まった。



「……それ以上言うな」


 低く、

 切実な声。


「俺が、

 抑えられなくなる」


 ――もう、

 十分ぎりぎりなのに。



 それでも、

 彼は、

 ゆっくりと動いた。


 乱暴じゃない。


 獣の体で、

 人を扱うときの慎重さ。


 抱き上げられ、

 寝台に下ろされる。


 影が、

 覆いかぶさる。



 額が触れ、

 鼻先が掠め、

 そして――

 唇が、

 深く重なった。


 今までとは違う。


 逃げ場を塞ぐ、

 それでも、

 支配じゃない。


 選ばれている感覚。



 息が、

 混ざる。


 獣の吐息が、

 首元に落ちて、

 ぞくりとする。


 ガルドは、

 何度も、

 確かめるように、

 触れてから、

 必ず、止まる。


「……嫌なら、

 言え」


 獣の声でも、

 約束は、

 守られている。



「……嫌じゃない」


 そう答えた瞬間。


 彼の額が、

 僕の肩に落ちた。


 ――理性が、

 限界を越えた音。



 それ以上のことは、

 言葉にしない。


 ただ、

 夜が深くなり、

 月が、

 高く昇った。


 寝台の上で、

 獣と人が、

 同じ呼吸になるまで。



 気づいたとき。


 ガルドの体は、

 再び、

 人の形に戻っていた。


 けれど、

 腕は、

 しっかりと回されたまま。


 離す気は、

 ない。



「……すまない」


 人の声。


「獣のまま……

 触れた」


「……いいです」


 小さく、

 でも、はっきり言う。


「……あなたでしたから」



 しばらくの沈黙のあと。


 ガルドは、

 額に、

 静かな口づけを落とした。


「……もう、

 戻れないな」


 それは、

 後悔じゃない。


 確定の声だった。


 番として、

 獣として、

 王として。


 この夜で、

 すべてが、

 結ばれた。

やっとここまで来た!

余は満足じゃ

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