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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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異変

読んでいただけると幸いです

それは、少しずつ始まった。


 はっきりとした異変ではない。

 気のせいだと片づけられる程度の、違和感。


 最初に気づいたのは、リオだった。



 夜になると、

 歪みが見えないはずなのに――

 胸の奥が、ざわつく。


 視界は澄んでいる。

 痛みも、ない。


 なのに、

 身体の内側だけが、

 落ち着かない。


「……おかしい」


 寝台に横になっても、

 眠れない。


 鼓動が、

 少し速い。


 熱があるわけでもないのに、

 指先が、じんと痺れる。


 まるで、

 何かが足りない。


 ――いや。


 足りない、というより。


 届いていない。


 そんな感覚。



 一方で、

 ガルドにも変化は起きていた。


 訓練中、

 集中が途切れる。


 剣を振る手は鈍っていない。

 判断も、遅れていない。


 それでも。


「……」


 胸の奥に、

 不快な重さが残る。


 魔力が、

 過剰に滞留している。


 外へ放出しても、

 内側に戻ってくる。


 まるで、

 行き場を失ったように。


 ザイードが、

 それに気づいた。


「王よ」


「分かっている」


 短く返す。


「制御はできている」


「……制御できていることが、

 問題です」


 ガルドは、

 わずかに眉を動かした。


「本来なら、

 分散するはずの魔力が、

 一箇所に引き寄せられている」


 言わずとも、

 向かう先は同じだった。



 リオは、

 日に日に疲れやすくなった。


 歪みを見ていないのに、

 頭が重い。


 呼吸が浅くなり、

 食欲も落ちる。


 それでも、

 城を歩くと、

 不思議と楽になる。


 理由は、

 分かっていた。


 ガルドが近くにいるときだけ、

 症状が和らぐ。


 廊下ですれ違うだけで、

 胸の圧迫感が薄れる。


 声を聞くだけで、

 指先の痺れが引く。


「……おかしいですよね」


 ぽつりと零す。


 ザイードは、

 即答しなかった。


「獣人にとっては、

 珍しくありません」


「……人間でも?」


「本来は、起きません」


 静かな否定。


 それが、

 より不安を煽った。



 ガルドは、

 夜ごとに眠りが浅くなった。


 夢を見る。


 リオが、

 城の外に立っている夢。


 呼び止めても、

 振り返らない。


 目が覚めると、

 胸の奥が焼けるように痛む。


「……」


 魔力が、

 荒れている。


 意識しなければ、

 周囲を圧してしまうほど。


 王として、

 致命的な状態ではない。


 だが、

 個としては――危うい。


 触れれば、

 落ち着くことは分かっている。


 けれど、

 触れる理由が、

 まだ足りない。



 二人が顔を合わせると、

 奇妙な沈黙が生まれた。


 互いに、

 同じものを抱えていると、

 無意識に理解している。


 だが、

 言葉にすれば、

 越えてしまう。


「……最近、

 眠れていませんか」


 リオが、先に言った。


「ああ」


 ガルドは、

 嘘をつかない。


「お前は」


「……同じです」


 視線が合う。


 一瞬、

 空気が張り詰める。


 魔力が、

 微かに反応する。


 その場にいるだけで、

 身体が訴える。


 ――近づけ。

 ――離れるな。


 だが、

 まだ、踏み出せない。


 限界は、

 ある夜、同時に来た。


 リオは、

 立っていられなくなった。


 歪みはない。

 敵襲もない。


 それでも、

 膝が崩れる。


「……息が……」


 ガルドが、

 即座に支える。


 触れた瞬間、

 二人とも理解した。


 これ以上、

 引き延ばせない。


 リオの震えが止まり、

 ガルドの魔力が静まる。


 だが、

 それは一時的だ。


「……離れると、

 また、戻ります」


 リオの声は、

 かすれていた。


「分かっている」


 ガルドの声も、

 低く揺れる。


 守るために触れるのか。

 王として制御するためか。


 ――違う。


 これは、

 互いが耐えきれなくなっている。



 番になる前夜。


 二人は、

 それぞれの場所で、

 同じことを思っていた。


 このままでは、

 壊れる。


 拒めば、

 失う。


 選ばなければ、

 終わらない。


 身体が、

 心よりも先に、

 答えを知っていた。


 だからこそ。


 次の夜は、

 もう、

 逃げられなかった。

ついにこの時が

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