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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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15/39

日常

読んでいただけると幸いです

獣人国の朝は、早い。


 城の外庭から、

 低く伸びる号令と、

 金属の触れ合う音が聞こえてくる。


 リオは、

 窓辺に立ってそれを眺めていた。


 朝霧の中、

 獣人たちが隊列を組み、

 剣や槍を振るっている。


 動きは揃っているが、

 どこか自由だ。


 人の国の兵のような、

 息苦しさがない。


「……すごい」


 思わず漏れた声に、

 背後から低い声が返る。


「日課だ」


 ガルドだった。


 既に身支度を整え、

 簡素な外套を羽織っている。


「毎日、あんな訓練を?」


「狩りも戦も、

 身体が覚えていなければ死ぬ」


 淡々とした答え。


 けれど、

 どこか誇らしげだった。



 朝食の場は、

 広い食堂だ。


 王と同じ卓に座ることに、

 リオはいまだ慣れない。


「……本当に、

 ここでいいんですか」


「他に空いている席はない」


 そう言い切られると、

 何も言えない。


 食卓には、

 焼いた肉と、

 香草を使った濃いスープ、

 果実のパン。


 味は素朴だが、

 不思議と身体に馴染む。


「……美味しい」


「だろう」


 ガルドは短く答え、

 自分の食事を続ける。


 周囲の獣人たちは、

 それを当たり前の光景として受け入れていた。


 人間が王の隣にいることを、

 誰も特別扱いしない。



 城の中庭。


 昼になると、

 職人たちが集まる。


 武具を打つ音。

 革をなめす匂い。

 薬草を刻む音。


 リオは、

 鍛冶師の手元を覗き込み、

 目を丸くしていた。


「火、怖くないのか」


 声をかけられて、

 慌てて首を振る。


「……ここだと、

 頭が痛くならないんです」


 それを聞いた獣人は、

 不思議そうに笑った。


「じゃあ、

 この城は合ってるな」


 その一言が、

 胸に残った。



 午後。


 ザイードが、

 書庫で仕事をしていた。


 大量の羊皮紙を前に、

 淡々と目を通している。


「……いつも、

 そんなに静かなんですか」


「必要な音以外は、

 邪魔になる」


 視線を上げずに答える。


 だが、

 リオが近くを通ると、

 書簡をそっとずらした。


 無意識の配慮。


 それに気づいて、

 リオは少しだけ笑った。



 夕方。


 城下では、

 小さな市が立つ。


 獣人たちが、

 肉や毛皮、木工品を並べ、

 子どもたちが走り回っている。


 リオが歩くと、

 何人かが軽く手を振った。


 夜。


 焚き火を囲み、

 獣人たちは歌う。


 言葉の少ない、

 低くゆったりした旋律。


 リオは、

 少し離れた場所で、

 その光景を眺めていた。


「混ざらないのか」


 ガルドが隣に立つ。


「……いいんですか」


「嫌なら、誰も強制しない」


 それが、

 獣人国の日常だった。


 近づくのも、

 離れるのも、

 自分で選べる。


 リオは、

 小さく頷き、

 焚き火の輪に足を踏み入れた。


 誰も、

 驚かなかった。


 少し場所を空け、

 自然に迎え入れる。



 夜が更け、

 城に戻る道すがら。


「……人の国より、

 静かですね」


「無駄な言葉が少ない」


 ガルドは言う。


「必要なものは、

 行動で示す」


 リオは、

 その横顔を見る。


 言葉は少ない。

 けれど、

 置いていかれない。


「……僕、

 ここが好きです」


 ぽつりと零す。


 ガルドは、

 すぐには答えなかった。


 少しだけ歩調を緩め、

 低く言う。


「なら、

 それでいい」


 夜の歪みは、

 どこにもなかった。


 それが、

 この国の日常であり、

 リオにとっての、

 初めての「普通」だった。

そういえば書いてなかったなと思って慌てて日常パートをはさみました

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