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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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「近すぎる、距離」

読んでいただけると幸いです

 最初の違和感は、

 朝ではなく――

 昼前に来た。



 窓から差し込む光が、

 やけに眩しい。


 目を開けると、

 見慣れない天井。


 ……王の私室だ。


 思い出した瞬間、

 身体が、

 じん、と熱を持った。


「……?」


 起き上がろうとして、

 止まる。


 ――力が、

 うまく入らない。


 だるい、

 というより、

 満ちすぎている感覚。


 血が、

 静かに騒いでいる。



「起きたか」


 低い声。


 視線を向けると、

 ガルドがいた。


 鎧は外し、

 簡素な衣服。


 それだけで、

 圧がある。


「……はい」


 声が、

 少し掠れた。


 その瞬間。


 ガルドの視線が、

 鋭くなる。


「……喉」


「え?」


「乾いている」


 そう言って、

 水を差し出してくる。


 受け取ろうとして――

 指が、

 触れた。



 ――熱。


 一瞬で、

 身体の奥が、

 跳ねた。


「……っ」


 思わず、

 息を詰める。


 ガルドも、

 はっきりと、

 動きを止めた。


 金色の瞳が、

 細くなる。


「……今の」


「触れただけで……」


 それ以上、

 言葉にならない。



 ガルドは、

 ゆっくりと距離を取った。


 ――取った、はずなのに。


 気配が、

 薄れない。


 むしろ、

 強く感じる。


 心臓の音。

 呼吸の間。


 まるで、

 自分の中に

 流れ込んでくるみたいだ。


「……番の初期反応だ」


 低く、

 抑えた声。


「お前の身体が、

 俺を“基準”に

 調整を始めている」


「……基準」


「近くにいないと、

 落ち着かない」


 はっきりと、

 言われる。



「……じゃあ……」


 不安が、

 胸に浮かぶ。


「離れたら……」


「拒絶反応が出る」


 即答。


 ――重い。


 けれど、

 逃げ場のない声じゃない。


「だから」


 ガルドは、

 視線を逸らした。


「……今は、

 俺が離れる」


「……え」


 意外すぎて、

 声が漏れる。


「本来なら、

 逆だ」


 低く、

 自嘲気味に笑う。


「だが、

 お前が混乱している」


 拳を、

 ぎゅっと握る。


「……俺が近くにいすぎると、

 抑えが利かなくなる」



 空気が、

 一気に重くなる。


 ――抑え?


「……ガルド」


 名前を呼ぶ。


 それだけで、

 胸の熱が、

 少し落ち着く。


 彼が、

 ゆっくり息を吐いた。


「……その呼び方」


 苦しそうに、

 呟く。


「反則だ」



 ノックの音。


「王。

 失礼します」


 ザイードだった。


 扉の隙間から、

 状況を察したらしい。


 視線が、

 僕とガルドの距離を測る。


「……始まりましたね」


 淡々と、

 確信を持った声。


「番の同調」


 ガルドは、

 短く頷く。


「しばらく、

 離宮を使う」


「……王が?」


「俺がだ」


 即断。


 ザイードは、

 片眉を上げた。


「それは……

 城が落ち着きませんよ」


「知るか」


 即答。


「こいつが

 優先だ」



 ザイードは、

 一瞬だけ、

 目を閉じた。


「……承知しました」


 そして、

 僕を見る。


「今は、

 王を呼ぶ時は

 名前で」


「……はい」


「それだけで、

 繋がりが安定します」


 助言。



 扉が閉まる。


 部屋に、

 再び、二人。


 ガルドは、

 寝台の端に座り、

 距離を保った。


「……すまない」


「謝らないでください」


 自然に、

 言葉が出た。


「……嫌じゃないです」


 正直な気持ち。


 ただ、

 戸惑っているだけ。


 ガルドは、

 静かに目を伏せた。


「……俺は」


 少しだけ、

 声が低くなる。


「お前に、

 触れたい」


 その告白は、

 荒々しくない。


 だからこそ、

 胸に刺さる。


「だが、

 今は……」


「……はい」


 続きを、

 言わせなかった。



 しばらくして。


 身体の熱が、

 少し落ち着いてくる。


 呼吸が、

 揃っていく。


 ――同調。


 これが、

 始まり。


 触れていないのに、

 離れていない。


 番になった実感は、

 甘さよりも先に、

 静かな確信として、

 胸に残った。


 これから、

 もっと、

 近づきすぎる。


 その予感だけが、

 はっきりと、

 そこにあった。


(つがい)

同調が始まりましたね

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