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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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13/39

二人の距離

読んでいただけると幸いです

戦の痕跡は、

 城の中までは届いていなかった。


 けれど、

 空気だけが違った。


 どこか張り詰め、

 獣人たちの足音も、

 いつもより静かだ。


 リオは、

 城の回廊に立ち尽くしていた。


 戦場にいなかったはずなのに、

 身体が、ひどく重い。


「……ここにいれば、

 誰も傷つかないと思ってたのに」


 ぽつりと零れた言葉は、

 誰にも届かない。


 ――そう思っていた。


「それでも、

 人は来た」


 背後から、

 低い声がした。


 振り返ると、

 ガルドが立っていた。


 鎧は外されている。

 それだけで、

 戦が終わったことが分かる。


「……僕の存在が、

 理由ですよね」


 問いかけるような声。


 ガルドは、

 否定も肯定もしなかった。


「理由の一つだ」


 正直な答え。


「だが、

 お前がいなくても、

 いずれ衝突していた」


 王としての視点。


 それでも、

 リオの胸は、軽くならない。



 ガルドは、

 リオの前に立つ。


 距離が、近い。


「怖かったか」


「……はい」


 即答だった。


 嘘をつく気になれなかった。


「でも……」


 言葉を探す。


「……ガルドが、

 前に立っているのを見て、

 安心もしました」


 小さな告白。


 ガルドの尾が、

 ほんの少しだけ揺れた。


「……弱いな」


 低く呟く。


「王としては、

 褒められたものではない」


「……弱い、ですか」


「お前に、

 そう思われてしまうほどには」


 意味を考える前に、

 ガルドの手が、

 リオの肩に置かれた。


 温かい。


 それだけで、

 張り詰めていたものが、

 少し、ほどける。



「……僕、

 逃げられないですよね」


 今さらな問い。


 ガルドは、

 迷わない。


「逃がさない」


 短い答え。


 でも、

 そこには脅しがなかった。


「だが」


 続ける。


「縛るだけなら、

 最初からそうしている」


 リオは、

 ゆっくり顔を上げる。


「お前が、

 ここに留まっているのは、

 俺の命令じゃない」


 金色の瞳が、

 真っ直ぐ見つめてくる。


「選んでいる」


 その言葉が、

 胸に刺さる。



 リオは、

 しばらく黙っていた。


 そして、

 小さく頷く。


「……選びました」


 声は震えている。


「ここに、います」


 ガルドの手が、

 肩から背に移る。


 強くはない。

 だが、離さない。


「それでいい」


 低い声。


「なら、

 俺も選ぶ」


 王としてではなく、

 一個の存在として。


「お前を、

 独りにしない」



 夜。


 二人は、

 同じ部屋にいた。


 言葉は少ない。


 だが、

 沈黙は重くない。


 リオは、

 ふと気づく。


 歪みが、

 完全に静まっている。


 ――違う。


 静められている。


 ガルドが、

 何も言わずに、

 そこにいるだけで。


「……不思議ですね」


「何がだ」


「……隣にいるだけで、

 世界が、落ち着く」


 ガルドは、

 少しだけ目を細めた。


「それは、

 俺も同じだ」


 その一言が、

 胸の奥に、

 深く沈む。


 守られるだけの存在ではない。


 守るだけの王でもない。


 誰にも見えない場所で、

 確かに、

 絆が深まっていくのを感じながら。

「逃がさない」

言われてみたい〜

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