表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/39

暗躍するもの

読んでいただけると幸いです

 人の国、王城。


 静まり返った謁見の間で、

 宰相がゆっくりと紙を畳む。


「……これで、確定ですな」


 誰も否定しない。


 獣人王は、

 人間側の要求を「交渉」として扱わなかった。


「保護の名を借りた強奪だと、

 見抜いている」


 老魔術師が、苦々しく呟く。


「ならば、外交は終わりだ」


 王の声は、低く、冷たい。


 感情はない。

 あるのは、国家としての判断だけ。


「夜の歪みは、国境線に関係なく広がる」


 王は、地図に指を置く。


「獣人領だけが安定すれば、

 人の国は、いずれ内側から崩れる」


 沈黙。


「……彼一人で、

 均衡が変わっている」


 宰相が静かに言う。


「それを、

 他国に握らせておく理由はない」



 命令は、宣戦布告という形を取らなかった。


 あくまで、

 境界の安全確保。


 あくまで、

 不測の事態への対応。


 言葉はいくらでも用意できる。


 実際に動く者たちには、

 ただ一つだけが伝えられた。


「獣人領に侵入する。

 目標は一名」



 夜明け前。


 国境沿いの森に、

 異質な気配が集まり始める。


 魔術師。

 結界技師。

 護衛兵。


 正規軍ではない。

 だが、素人でもない。


 ――戦争にはしない。

 だが、失敗も許されない。


 そのための部隊。


「結界解析、開始」


「獣人領の結界は、

 生き物のように反応します」


 低い声で指示が飛ぶ。


「力で破壊するな。

 歪みを“引き寄せて”、薄くする」


 術式が展開される。


 空気が、わずかに震えた。



 獣人領。


 城の高台で、

 ザイードが、ふと足を止める。


 黒豹の耳が、微かに動いた。


「……来るな」


 空気の流れ。

 地脈のざわめき。


 そして、

 夜の歪みが、不自然に引っ張られている。


 獣人の感覚が、

 警鐘を鳴らす。


「王に、即時報告を」


 影が走る。



 同じ頃。


 城の奥で、

 リオは胸を押さえていた。


「……変だ……」


 歪みが、

 いつもと違う。


 自然に湧き、

 自然に消えるものではない。


 ――引きずられている。


 誰かが、

 無理やり、

 こちらへ“繋ごうとしている”。


 恐怖が、

 背中を這う。


「……来ないで……」


 小さな声は、

 城の厚い壁に吸い込まれた。



「王」


 謁見の間。


 ザイードが片膝をつく。


「境界結界に、

 人為的干渉を確認しました」


 ガルドの金色の瞳が、

 一段、鋭くなる。


「どの程度だ」


「破壊ではありません」


 冷静な報告。


「穴を開け、

 歪みを流し込む準備です」


 一瞬の沈黙。


 それは、

 奪取作戦の前兆だった。


「……人間は、

 話を聞かなかったか」


 低く、獣人王が呟く。


「ええ」


 ザイードの声も、冷たい。


「彼らは、

 “必要だから奪う”という論理を、

 正当化しました」



 ガルドは、立ち上がる。


 その一歩で、

 城の空気が変わった。


「迎撃準備」


 短い命令。


「ただし、全面戦争にはするな」


 ――境界線を越えさせるな。

 ――だが、血は流れる。


「人間に、

 “奪えない”と理解させる」


 それが目的だった。



 夜。


 獣人領の外縁で、

 結界が、静かに歪む。


 人間側の術式が、

 完成しつつあった。


「……繋がるぞ」


 魔術師が息を詰める。


 その瞬間。


 森の奥から、

 低く、腹に響く咆哮が返った。


 空気が、凍る。


「――来た!」


 影が、動く。


 獣人たちが、

 境界線に現れた。


 それは、

 まだ戦争ではない。


 だが――

 もはや交渉の続きでもない。


 夜の歪みが、

 再び、揺れ始める。


 人の国と獣人の王。


 どちらが引くかは、

 もう、

 言葉では決められなくなっていた。

クソ!

人間め、卑怯な!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ