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追放された人間は、最強獣人に囲われ溺愛される 〜世界の歪みが見える僕は、人の街では生きられませんでした〜  作者: ちび太


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「歪みが見える僕は、追い出されました」

読んでいただけると幸いです


 日が沈み、街の灯りが弱くなる頃――

 僕の視界には、本来あるはずのないものが浮かび上がる。


 空気の裂け目のような、歪んだ影。

 触れれば、世界そのものが壊れてしまいそうな、黒い亀裂。


「……また、増えてる」


 息を殺してそう呟いた瞬間、こめかみを鈍い痛みが貫いた。

 視界が揺れ、膝から力が抜ける。


 これが僕の“呪い”だ。


 夜になると、世界の歪みが見えてしまう。

 見えるだけじゃない。近づけば、身体が壊れる。


 けれど放っておくと、その歪みは広がり、やがて――

 誰かを傷つける。


 だから僕は、誰にも言わず、

 夜の街を一人で歩き続けてきた。


 その結果が、これだ。


「やっぱり、お前のせいだったんだな」


 松明の火に照らされて立つ人たちの視線が、

 僕を突き刺す。


「最近、家畜が暴れたのも」

「子どもが高熱を出したのも」

「全部、お前がいるせいだろ」


 違う、と言いたかった。

 僕はただ、歪みを抑えていただけなのに。


 でも、もう何度も同じことを繰り返してきた。

 この街でも、村でも、結果は同じだ。


「……分かりました」


 そう答えた自分の声は、驚くほど静かだった。


「今夜中に、出て行きます」


 誰も止めなかった。

 むしろ、安堵の空気が広がった。


 ――ああ。

 やっぱり、僕は“いない方がいい存在”なんだ。



 街を出て、森に入る頃には、

 月は高く昇っていた。


 歪みは、街の中よりも濃い。

 木々の隙間、地面の裂け目、空気の揺らぎ。


 吐き気をこらえながら歩いていると、

 不意に――


 視界が、震えた。


 今まで見てきたどの歪みよりも、

 深く、濃く、重い。


 思わず足を止める。


「……なに、これ……」


 歪みの中心。

 そこには、巨大な影があった。


 月光の下で、金色の瞳がこちらを見下ろしている。


 獣の耳。

 太い尾。

 人の形をしながら、人ではない存在。


 ――獣人。


 それも、ただの獣人じゃない。

 本能が叫んでいた。


 近づくな。

 逃げろ。


 なのに、身体が動かない。


「人間が、こんな場所で何をしている」


 低く、よく通る声。


 次の瞬間、

 僕の視界に映る“歪み”が――

 その獣人を中心に、静かに収束していくのが見えた。


「……見えているな」


 金色の瞳が、細められる。


「夜の歪みを」


 心臓が、大きく跳ねた。


 この“呪い”に気づいた人は、

 今まで一人もいなかったのに。


「怯えるな。襲わない」


 獣人は一歩近づき、

 僕の顎に手を伸ばしかけて――止めた。


「……触れれば、痛むのだろう」


 どうして。

 どうして、そんなことまで。


「人の街にいれば、いずれ壊れる」


 淡々とした声で、彼は告げる。


「ここに来い。

 お前は――外に出しておく存在じゃない」


 それは、保護の言葉なのか。

 それとも、檻なのか。


 分からないまま、

 僕はその金色の瞳から目を逸らせなかった。


 この夜から、

 僕の居場所は、人の世界ではなくなったのだから。


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