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お宅訪問

 木の家に近付くと、その大きさに驚かされる。両手を広げても、今のこの体なら20人くらいで手を繋いでも届かないくらいだ。

 扉の上には等間隔で窓が付いていて、日の光を取り入れて生活しているのだろう。木の葉から零れる光と相まって、いい間接照明になっていそうだ。

 俺はさらに上を見上げてみた。ん? 生き物の顔のようなものが見える。両目に鼻、口と思われるものが付いているのだ。すると両目が開き、目がこちらを向いてきた。


「リン、また、変なものを取ってきたのか…。いや、今回は連れてきた…か。まあ、賑やかな方がワシは楽しくていいがの……」


「見てみて、エンデ。風の精霊にほら、花の妖精の卵よ! 今日は良いものにいっぱい出会えたわ!」


リンは満面の笑みで答える。どうやら樹の妖精の体を家として利用しているらしい。


「初めまして、エンデ? 俺はソラって言います。宜しくお願いします。」


「あぁ、宜しく…。ゆっくりして行きなさい…」


エンデはそういうと、目を閉じて沈黙してしまった。


「エンデは樹の妖精の中でも長生きのおじいちゃんなの。あまり起きれないし、動けないから体の中を使わせてもらってるの!」


え? 樹の妖精の体の中で生活しているの!? まあ、生活できているのだろうから大丈夫なんだろう。そう思っていると、リンは勢い良く扉をバーンと開ける。

 すると、猫のようなかわいい動物がリンに向かって飛びついて「んにゃ~」と鳴きついている。どうやらリンはかなり好かれているらしい。頭をリンの顔に擦り続けながらゴロゴロ喉を鳴らしている。


「リンお姉ちゃん、お帰り~。みーにゃがまた寂しがって泣いてたよ。怪我も治ったんだし、今度一緒に連れて行ったら?」


 そこにいたのは10歳くらいの白髪の美少女エルフだった。どうやらこの子が【マシロ】らしい。

 瞳は灰色で、白のTシャツに白の半ズボン、そして白い肌。頭の先から足元まで全てが白い、名前の通り真っ白白助だ。

 リンはマシロに近付き、「ふふ~ん、これがマシロよ。可愛いでしょ~」と自慢している。リンもマシロと同じ服装なので、外見は似ていないが、仲の良い姉妹に見えた。


「俺はソラ。マシロちゃん、宜しくね」


「はい、宜しくお願いします。リンお姉ちゃん、ご飯の用意はできてるよ。ラピスにはいつもの通りお水を用意してあるからね。ソラは何か食べれるの?」


「マシロ、ソラは風の精霊だから味覚はないの。だから食べ物はあげなくて大丈夫よ。大気中の魔素で十分なんだから」


 俺はそう聞いて、確かにこの森に入ってから体が軽くなった気がしていたが、どうやら自然と大気中の魔素を取り込んでいたのだと分かった。

 どうやら俺に必要なのは魔素で、食事は必要ないみたいだ。

 リンとマシロはテーブルに向かって移動し、椅子を引いて席に着く。みーにゃはリンの首に纏わりついてマフラーの様になっている。羨ましすぎる!

 ラピスは持っていた妖精の卵が付いてる花を植木鉢に入れた後、マシロの肩に降りて、マシロからお水を貰っている。

 何この状況、尊さで埋め尽くられている!! 俺がもし人間の姿だったら盛大に鼻血を出しているか悶絶していたに違いない。


 「ソラ、申し訳ないけど、扉を閉めてくれる? 後は適当に寛いでね。日も落ちてきたし、魔力とか色々なことは明日に教えるわね」


 俺は扉を閉めたあと、近くにあった木の脚立に腰を掛けて、まずは家の中を見回した。

 扉から見て左側に小さな棚があり、棚の上には植木鉢が並んでいる。その一つに妖精の卵付きの花が生けられている。

 奥には二つのベッドが見える。リンとマシロの寝床だろう。右手にはキッチンが見える。

 包丁と鍋以外は木で出来た調理器具ばかりだ。そして中央にテーブルと椅子が並んでいる。

 俺は家の中を見終えると、リンとマシロの食事を眺めていることにした。

 どうやらご飯は茸と野菜のスープみたいだ。リンは美味しそうに食べている。

 時折みーにゃにも野菜スープを与えている。みーにゃもゴロゴロ喉を鳴らして美味しいと訴えているようだった。

 マシロはもくもくと食事を取っている。マシロは作った張本人だし、味見をしているから味が分かっているのだろう。

 ラピスは水をガブガブと飲んで「プハァー、生き返る~」と働いた後の一杯は最高と言わんばかりである。やばい、この光景だけで絶対ご飯が進む、こんな体じゃなかったらご飯だけでお腹いっぱいになったはずだ。


「尊い…」


「ん? ソラ、なんか言った?」


「心の声が零れてしまっただけだ、恥ずかしいから気にしないで」


「あっそ」


 俺は食事の光景を眺めていると、マシロの近くの床が動いている感じがした。

 俺は床に近付いてみると、床に扉が付いていた。どうやら床の下にも部屋があるらしい。

 すると扉が少し開いて、そこにいる何かと目が合った。


「うぉ、なんかいる!」


 俺が驚いたせいか、床の扉は締まり、リンに「ソラ、うるさいわよ」と注意されてしまった。

 俺は床の扉が開いて何かいたと説明すると、マシロが「あ~、地下には茸の妖精のピナコがいるの。食事は先にあげたんだけど、気になって確認しに来たんだろうね」と教えてくれた。すると水を飲み終えたラピスが耳もとに近付いてきて、囁いてきた。


「茸の妖精がいることは内緒。ここに住んでいる皆は知っているけど、他の精霊や妖精に見つかると討伐対象で大変なの。詳しくは明日ゆっくり教えるから、それまで大人しくしててね」


 俺はやることがないので、この家の観察を続けた。窓の外はもう暗くなっている。でも家の中は薄暗いが明るい。窓のすぐ下に照明みたいなのがあるのだ。

 俺は何が光っているのか確認してみると、そこには茸が置いてあった。確か元居た世界でも茸だったり苔だったり、発光するのがあったな。

 この世界にも似たようなものがあるみたいだ、恐らくピナコが持ってきたか作ったに違いない。横に茸に被せるだろう木の蓋があった。これで寝るときは暗くするのだろう。


 う~ん、暇つぶしするものがない。ないならどうすればいいか、作るしかない! 俺はラピスに余っている木がないか尋ねてみた。ラピスはどれくらいの大きさがいいの? と返事をくれたので、指先くらいの大きさのが40個と脚立の枠くらいの大きさの木の板をお願いしたら、持ってきてくれた。


「こんなの、何に使うの?」


「まあ、見ててよ」


 俺は指先を彫刻刀の様な形にし、小さい木の板に王、玉、飛、角、金、銀、桂、香、歩の文字を刻み込み、大きな板には縦と横に線を入れ9×9のマス目を作った。

 そう、俺が作ったのは将棋だ。これほど暇つぶしに向いているのはそうそうあるまい。

 それにここにはリンとマシロ、そしてラピスがいる。ルールを教えれば対戦も出来るはずだ。

 案の定、リンが「何作ってるの?」と食いついてきた。

 俺は「簡単なゲームを作ったんだよ、リンやってみるか?」と誘うと乗ってきた。ちょろいちょろすぎる。

 俺はルールを説明し、まずは最初にリンと対戦することにした。


 「まさか…そんな…ありえない…」


 結果は10回やって10連敗だった。強すぎる、リンは活発系少女と思っていたが、文武両道少女だったらしい。

 俺は落ち込んですっかりとやる気を失くしてしまった。次はリンとマシロが対戦するみたいだ。

 今度はマシロが10連勝とリンに完勝してしまった。この姉妹、頭良すぎないか? リンは負けて悔しいのか床に転がって手足をバタバタさせて全力で悔しがっていた。まだまだ続きそうな気がする。

 結局リンはマシロに1回も勝てず、眠気にも勝てず、対戦中に寝てしまった。マシロの目もとろんとしてて今にも寝そうだった。

 マシロは欠伸を噛み締めながらベッドまで移動し、すぐさま寝息を立てて寝始めてしまった。ラピスは床に寝てしまったリンに掛け布団をかけてあげている。


「妖精も寝ることは出来るんだけど、あの子たちみたいに毎日寝なくて大丈夫なの。あの子たちが起きるまで、魔力とか色々教えてあげるわ」


「お願いします!!」


 俺はリンとマシロが起きるまでこの世界について教えてもらうことになった。

 あぁ、俺はこの子たちと出会えたのは幸運だと、初めて心の底から神様に感謝した。

エンデとマシロとみーにゃが参戦。マシロとみーにゃにソラが癒されてます。

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