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飛行機を作ろう

 マリンとノアの相手をしていていくつか分かってきたことがある。自我が芽生えているので俺の命令に背くことが出来るか試してみたところ、あっけなく命令を拒否することが出来た。どうやら俺の影響を強く受けているみたいだ。それにエンデに聞いてみたところ、精霊は妖精と違って成長が著しく遅いらしい。なので数週間で自我が芽生え、姿形も真似できるようになっているのはあり得ないくらいの成長速度のようだ。俺と同じく規格外の道を進むんじゃないかとエンデは心配していたが、俺は仲間が出来たようで少し嬉しかった。

 まだまだ試してみたいことがあったが、朝食の仕度が出来たようで、リンも起きてきた。リンはまだ眠そうな顔をしながら欠伸をしている。それでもお腹は空いているみたいでグゥグゥ腹の虫がなっている。朝食が終る頃には目が覚めたのか、昨日作った飛行機を片手に「早く行こう!」と急かし始めた。俺達はラピスとレイにお留守番をお願いして、家を後にする。


 リンは待ちきれないのか、道中、飛行機を投げ飛ばしては追いかけてキャッチを繰り返していた。そんなに乱暴に扱われると壊れそうなので何度も注意したが、聞く耳を持ってくれなかった。まあ、その飛行機にリンが乗るわけでもないし、目をつぶることにした。

 ドワーフの村に着くと、わらわらと村の人達が集まってきた。どうやら遠くからでもリンが飛行機を投げ飛ばしていたのが見えていたようで、気になっていたらしい。ガイアスを筆頭に職人達が前に出てきたが、皆お通夜でもあったのかと思うほど、暗い顔をしている。理由を聞くと、昨日将棋やオセロの乱闘騒ぎでミカの雷が落ち、一週間の禁酒を言い渡されたらしい。まあ、お客を掘っておいて飲み食いしながら馬鹿騒ぎしていたんだ。女性陣からお叱りが合っても仕方がない。気を取り直して、ガイアスが質問をしてくる。


「ソラ。これはなんだ? 飛行船を作るのに必要なものなんだろうが、これは空を飛べるのか? リンは投げ飛ばしている様に見えたが…」


 リンに視線を向けながら、俺に問いかけてくる。


「あぁ、プロペラを動かす構造を考えていて作ったんだ。ここにペダルっていうのがあるんだけど、これを交互に押すと、ここの歯車が回ってシャフトが回る。そしてシャフトの先にある歯車がプロペラに繋がる歯車を回してプロペラも回る。ペダルを漕ぐ力次第では空も飛べると思う。まあ、細かいところは調整が必要になるとは思うけどね。それにリンがこれに乗って空を飛びたいんだそうだ。飛行船程じゃないけど、結構大きい飛行機を作ることになると思うよ」


 ガイアスを含む職人達は簡単な説明でも原理をすぐ理解したみたいだ。どれくらいの大きさにすればリンが乗れそうか話し合っている。


「プロペラがどう動くかは分かったが、どうやって制御するんだ? これにはついてないだろう?」


 ガイアスは少し見ただけで、懸念点をドンドン指摘してくる。確かに、制御装置は必要だ。確か元居た世界ではフラップと言ってたかな? 俺は飛行機の翼の後ろ側にフラップを動かすことで揚力を増やして減速したりすることで上下左右に動かしていたことを分かる範囲で説明する。


「う~む、ロープを使って動かせば行けそうだな。だが、ペダルを漕ぎながらフラップの操作をするのは難しくないか? 分けた方が良いと思うんだが…」


 確かにペダルを漕ぐなら固定されたハンドルの方が圧倒的に漕ぎやすい。複座はあっちでもあったし、俺は複座にして機能を分けてみてはどうか提案してみる。


「なるほどな、機能を分けるか…。それでいこう! それでリンと誰が乗るんだ? お主が乗ってみるか?」


 俺はブンブンと首を振って拒否する。リンと一緒に飛ぶのはなんか嫌な予感がする。俺はマシロを推薦すると、マシロは快く了承してくれた。マシロは顔に出していなかったが、空を飛ぶ乗り物には興味があったらしい。飛行機のテストパイロットとしてリンとマシロが乗ることになった。

 ガイアスに試作の飛行機を渡すと、職人達は工房に戻っていった。あとはガイアス達が飛行機を作ってくれるのを待てばいい。リンとマシロを連れて、酒場で待つことにした。酒場に着くと、女性と子供達がゆったりと将棋とオセロを楽しんでいた。男性陣が全く見えないのは出禁が機能しているみたいだ。ミカが出迎えてくれる。


「やぁやぁ、よく来てくれた。昨日はうちの男共が悪かったね。当分は酒場に来ないからゆっくりしていきな」


 ミカはカウンターに戻ると、果実で作ったジュースを持ってきてくれた。リンとマシロは美味しそうにクピクピと飲んでいる。どうやら男性陣がいないとかなり暇になるようだ。ミカも椅子に腰を掛けて将棋やオセロを始めている。辺りを見回すと女性陣は将棋とオセロの2面打ちをしている。かなりはまっているらしい。子供にも容赦なく勝っているのが見える。リンとマシロもそれを見て、「私達も2面打ちしたい!」と女性陣に混ざって将棋とオセロを始めた。子供達の中には負けてばっかりで涙目の子もいるというのに大人げない…。見かねた俺は子供達の相手を買って出た。

適度に負けたり、もう少しで勝てそうな場面を作ってあげたりしていると、俺の前には子供達の行列が出来ていた。子供達の向けてくる無垢な瞳に答えてあげるべく。俺は頑張って将棋2、オセロ2の四面打ちで相手をしてあげる。さすがに4面打ちでは勝率はかなり低くほとんどが負けてしまった。子供達を全員捌く頃には精神的にかなり疲れが溜まっていくのを感じたが、子供達の満面の笑みを見ると、疲労が和らいでいく感じがした。

子供達は俺との対局に満足したのか、子供同士で将棋とオセロを遊び始めた。子供達から視線を外して、辺りを見回すと、マシロの前に女性陣が並んでいるのが見えた。どうやらマシロも4面打ちをしているらしい。そしてリンと女性陣を相手に完勝しているようだった。リンがかなり悔しがっているのが見える。マシロは涼しい顔をしているのでまだ余裕がありそうだ。俺は「まだ余裕があるなら6面打ちをしてみたらどうだ?」と提案すると、「いいよ、相手をしてあげるね!」と提案を受け入れてくれた。

 結果、6面打ちでもマシロの圧勝だった…。マシロのスペックは高いと思っていたが、これ程とは…。リンも混ざっているのでこちらの戦力不足ではないと思うのだが、想定以上の強さだった。俺は当分マシロとの勝負を避けることにした。だって、負けたくないし…。

 将棋とオセロで盛り上がっていた所、ガイアスが呼びに来た。どうやら飛行機の試作品が出来たらしい。リンは負けた悔しさを吹き飛ばす勢いでガイアスに飛びつき、「有難う」と感謝している。リンはガイアスに抱き付いたまま離れなかった為、その状態でガイアスは飛行機の所まで案内してくれた。


 そこにあったのはドワーフの家くらいの大きさの飛行機があった。複座で翼にはプロペラが一つずつ付いている。胴体には格納は出来ないが車輪が4つ付いている。これで離着陸も出来そうだ。運転席を見て見ると、ハンドルが付いていた。左右に回すと左右のフラップがそれぞれ上下して左右に曲がれるみたいだ。ハンドルを押したり引いたりすると左右のフラップが同時に上下した。これで上昇したり下降したり出来る。想像以上の出来て、俺は感動してしまった。涙を流せれば号泣していたと思う。

 リンはすぐさま運転席に乗って、ハンドルを左右に回したり、押したり引いたりしている。いや、リンが乗るのは後部座席だと思うけどね。マシロもリンが運転席に乗って困惑した顔をしている。リンは運転席で満足するまでハンドルを触った後、後部座席に移動して、マシロに早く運転席に座るように急かし始める。マシロはしょうがなさそうに溜息を吐いた後、運転席に乗り込んでいく。そしてリンがペダルを漕ぐとギャリギャリと大きな音を立てながらプロペラが回り始め、飛行機が少しずつ前進していくが、空を飛ぶ前に樹にぶつかり止まった。

 それはそうだろう。飛行機を作っただけで、まだ滑走路を作っていないのだ。スピードはでないし、助走する距離も圧倒的に足りない。リンが「なんで~、全然飛べないじゃない!」と文句を言っているが、あまりにもせっかち過ぎる。俺は皆に飛行機が出来ただけでは空が飛べないこと。飛ぶためには助走するための整地した滑走路が必要だということを説明した。

 ガイアス達は説明を聞いた後、難色を示した。滑走路の知識などないし、家を建てる前に整地することはあっても非常に時間がかかるからだ。飛行機が飛べないことにリンが段々と落ち込んでいくのが目に見えて分かる。俺は滑走路にはトレント達に協力してもらえばすぐ出来るのではないかと提案する。樹を移動させれるし、空地をすぐに作れるのだ。俺はガイアスに村の近くで空地にしても大丈夫な場所を聞いてみると、魔法の練習場として使っている空地を提供してくれた。それを聞いたリンの機嫌がぐんぐんと戻っていく。俺はガイアス達に練習場まで飛行機を移動させるようにお願いをして、トレント達が休んでいる場所に向かうことにした。

 

 トレント達の所へ向かうと、ユングが快く出迎えてくれた。他のトレント達もたっぷり休んだせいか起きてるものがほとんどだった。これは好都合だ。俺はトレント達に飛行機の話を説明した。飛行機が飛ぶためには整地した滑走路が必要なこと。それをトレント達に協力してほしいとお願いする。ユングは快く了承してくれた。フェリーゼのこともあるし、文句は誰からも出なかったからだ。

 トレント達を引き連れて練習場に向かうと、少し開けた場所に岩がいくつか置いてある空地に出た。どうやらここがドワーフ達の魔法の練習場らしい。ガイアス達が飛行機を囲んで待っていた。

 トレント達が来た途端、練習場の整地は物凄く早く終わった。樹は移動され、空地の土はトレントが通って慣らしていく。邪魔な岩は脇の方に退かされ、あれよあれよと、長方形の空き地が完成した。真ん中には地面を慣らした滑走路がある。距離にして500mくらいだろうか? それくらいの距離があれば多分大丈夫だろう。高台とはいえ、鳥人間コンテストの長さは50mもなかった気がする。


 飛行機を滑走路の端に移動させると、マシロが操縦席に、リンが後部座席に乗り込む。そして、リンが魔法で身体強化をして、目一杯ペダルを漕いでいく。ギャリギャリと大きな音を立てながらプロペラがぐるんぐるんと回り、それに合わせる様に飛行機がドンドンと加速していく。滑走路の半分まで行ったところで徐々に車輪が浮き上がり、そして飛行機が飛びだっていった。

 飛行機が飛び立つと、周りから「うぉぉぉおおおおおお」と歓声が上がった。


「すごいぞ、ソラ! 本当に空を飛ぶ道具がワシ達の手で作れるとは思わなかった! この達成感は気持ちいいな。あとでワシ達も乗らしれもらおう。リンとマシロだけじゃもったいない」


 ガイアス達は次に誰が乗るのか大騒ぎしながら決め始めた。ガイアスは一番を譲る気は更々なさそうだ。あと一人誰にするかで揉めている。俺はどうせ全員乗るだろうから順番なんてどうでもいいと思うんだけどな~と心の中で思った。

 飛んだ飛行機を観察していると、ゆっくり右に旋回したり、左に旋回したりしている。マシロが飛行機がどう動くのか色々試しているようだ。そして上昇させたあと、ゆっくりと下降して滑走路に戻ってきた。一通りの操作を終えたみたいだけど、何か様子がおかしいように見える。飛行機が上手く滑走路に着地すると、プロペラが回らず、止まってしまった。何かあったのか近寄っていくと、リンが汗だくになりながら疲れ切っていた。ペダルを頑張って漕いでいるがプロペラが回っていない。

 ガイアス達が調べた結果、木製の歯車が摩耗してしまい、上手く回らなくなってしまったらしい。試作段階だから何か不具合が出るとは思っていたが、部品が一回で摩耗するとは思わなかった。俺は元々は歯車とシャフトは金属製だったことを説明すると、後日、金属製で歯車とシャフトを作ってくれることになった。飛行機に乗れないと分かったガイアス達はまたお通夜みたいな暗い顔をして、がっくりと肩を落としていた。

飛行機の試作品が出来ました。リンの脚力で木製の歯車が摩耗して使い物にならなくなります。リンの脚力は凄い…。

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