お酒の準備完了
昼食が終わると、リンは竹とんぼを抱えながら、またドワーフの村へと行ってしまった。俺が明日行くの分かってるのかな? まあ、竹とんぼの構造を見ればガイアス達なら簡単に原理を理解出来るだろう。教える手間が省けたことを一応心の中で感謝をしておく。
俺は床の扉をコンコンとノックしてピナコを呼び出す。そして途中経過のお酒でも十分にガスが取れたことを報告して、お酒に必要な材料がないか確認すると、果物をたくさん集めて欲しいとのことだった。俺はマシロに協力を仰ぎ、二人で一緒に畑や周辺の森で果物を収穫しにいく。ラピスとレイは未精霊達とお留守番だ。森の中の果物を散策していたが、大半が齧られていた。魔物達が逃げている最中に急いで食べたのだろう。食べ残しがあちこちにあった。綺麗な果物を選別していたら日が少しずつ傾いてきた。
畑に戻ると、マシロは畑から適当に野菜を収穫していく。そして飼育小屋を横目に見ながら溜息を吐いている。卵を温めている間は確か産卵はしなかったと思うので、マヨネーズが作れなくて落ち込んでいるようだ。リンに後で鳥を捕獲しに行ってもらった方が良さそうだ。リンもマヨネーズの美味しさに惚れ込んでいる。マヨネーズが食べれなくなるのは死活問題だろう。
「マシロ。あとでリンに鳥を捕まえに行ってもらおう。ガイアスと一緒に見回りをしているんだ。どこかで鳥達を見ているかも知れない。すぐ見つかるさ」
「うん! そうだね。リンお姉ちゃんにお願いしよう!」
マシロは少し元気を取り戻したみたいだ。果物と野菜を抱えて家に戻ると、未精霊達を囲うようにみーにゃが、クッションとして上にラピスとレイが寝ていた。未精霊達は口をチャックの様にして、起こさないように訴えかけてきた。可愛いが凝縮されている光景を見て、心がほっこりした気分になってきた。マシロも似たような感覚なのか満面の笑みが零れている。ラピス達を起こさないように、俺はピナコに果物を、マシロは夕食の仕度を始めた。
夕食の仕度が終る頃には、リンが玄関のドアをバァーンと開いて、「ただいま~!」と元気よく帰ってきた。その音でラピス達が起きてしまったが、どのみち夕食なので起こす手間が省けた。
「ねぇねぇ、ソラ。 竹とんぼっていうの? あれ、ドワーフの村でも大好評だったわ! 子供の玩具としても、木材加工の練習としても良いってさ! 他にも何かあったら教えて欲しいって言ってたわ。」
「う~ん、そういえば、将棋はまだ教えてなかったんじゃないか? 玩具だとあとは
オセロくらいかな…。それと狩りや戦闘に使えるボウガンやバリスタは欲しいかな、特にバリスタは飛行船に搭載したい。でも引き金の部分が良く分からないんだよな。そこはガイアス達に相談してみた方が良さそうだ」
攻撃手段として魔法で岩と飛ばすエアバレットやエアバズーカを考えていたのだが、時間がかかるし、何より重たくて嵩張るのだ。バリスタで矢を木製にすれば、嵩張らないし、矢を設置すればすぐ撃てる。それに矢の先端を鉄製にすれば威力も上がる。いいこと尽くめなのだ。
「オセロ? ボウガン? バリスタ? また知らないものが出てきたわね。 ソラは色々知ってるから飽きなくていいわね」
リンが唐突に抱き付いてきた。俺は女の子に抱き付かれることに慣れていないので緊張して固まってしまった。心臓があったらバクバクしていたに違いない。リンは俺に抱き付きながら顔を体に埋めてクンカクンカしている。すると、驚いた顔をして「ソラの体吸うと、なんか力が湧いて来るわ! もっと吸っていい?」とこっちの許可を得ずに俺の体に顔を埋めてクンクンと吸い始めた。いや、それ俺の魔力じゃない? 俺はリンに吸われる度に魔力が抜けているのを感じる。
リンを力一杯で押しのけ、「いや、俺の魔力だから、吸うの禁止! 分かったか?」と注意すると、「えぇ~」と文句を言いつつも、「分かったわ…」と了承してくれた。
「それよりも、夕食の仕度が終わってるんだ。皆で夕食を取りなよ。あと、暇なときにでも鳥を捕まえて来てくれ。飼育小屋にいる鳥達は当分卵を産まないと思うからな、わかったか?」
「それは嫌、絶対捕まえてくる!」と頭を左右にブンブンと振りながら、席につき、夕食をバクバクと食べだした。この様子なら直ぐにでも鳥達を捕まえてきそうだな。マシロも一安心したのか席について、皆と一緒に夕食を食べ始めた。
夕食が終わると、走り回ったリンは早々にベッドで寝始め、マシロも食器の片付けが終わると同じく寝てしまった。ラピスとレイは昼寝をしたせいか、眠くないみたいだ。未精霊達と戯れている。
「ラピス、鳥達の件聞いていたと思うが、今の飼育小屋だと足りない気がするんだ。明日でいいから追加で作ってくれないか? ドワーフの村に行かないで留守番するんだろう?」
「そうね。あたし達は留守番をしようと思っていたから、それでいいわ。未精霊達にみーにゃ、それにピナコはあたしに任せなさい!」
ピナコが胸を張って請け負ってくれる。レイもウンウンと頷いている。家の留守番はこの二人に任せておいていいだろう。
「あと、ラピス。暇なら将棋とオセロを作ろうと思うんだけど、お願いできるか? 俺だと木材の加工がが上手く出来ないからな」
「将棋は分かったけど、オセロはどんなものなの? 貴方の思考を読ませて頂戴」
ラピスが俺の思考を読むと、「将棋より簡単じゃない。色を染めるのはドワーフの村へ行けば簡単に出来ると思うわ。直ぐに出来ると思うから待ってなさい。レイは見てなさい。今度から任せるから」と適当な木材を持ってきては、樹魔法で将棋とオセロを作ってくれた。以前は俺が線や文字を掘っていたのだが、樹魔法で再現してくれたおかげで、俺の出番はなくなった。嬉しい限りである。
暇なので出来立てホヤホヤの将棋とオセロをラピスとレイとやってみることにした。日が昇るまでやったみた結果、ラピスの勝率が一番高く、次に俺、そして最後にレイとなった。レイはまだ生まれて間もないから知能がまだ低いみたいだ。凡ミスが結構目立っていた。俺はビリにならなかったので少しホッとした。
日が昇って明るくなってくると、リンとマシロが起きてきた。リンは将棋とオセロを見るな否や「私もやりたい!」と目を輝かせながらぴょんぴょんと跳ねている。俺は負けるのが嫌なのでラピスとレイに相手を譲ることにした。その間にマシロは朝食の仕度をし始める。
朝食の仕度が終わるまでの勝率はリンがぶっちぎりの一位だった。馬鹿みたいな行動をする割にはリンの知能は高いようだ。えっへんと胸を張って威張り散らしている。ラピスとレイは少し悔しそうな顔をしている。まあ、繰り返しやってれば、そのうち皆強くなると思うけどね。
皆の朝食が終わると、床からトントンと音がした後、ピナコが顔を出してきた。
「ソラ~。アルコールの強いお酒が出来たよ~」
「有難う、ピナコ。引き続きお酒を造ってもらってもいいかな? まだまだ必要になると思うんだ。それにしてもこんな大きな樽よく持てるな。重くないのか?」
「分かった。出来る限り作っておくね~。これくらいの大きさの樽ならへっちゃらだよ~。ソラは持てないの?」
ピナコも案外力持ちらしい、ピナコと同じくらいの大きさの樽を軽々と二つも持ってきてくれた。俺が試しに持とうとすると全然持ち上がらなかった。あれ、俺って意外に貧弱なのかもしれない? その事実にガックリと肩を落としていると、リンとマシロが涼しい顔でひょいっとお酒の入った大樽を持ち上げていた。
「何落ち込んでるのソラ? ほら、さっさとドワーフの村へ行くわよ」
リンはともかく、マシロにも負けた…。俺はドワーフの村へ着くまで、ずっと落ち込んでいた。
お酒の準備が整いました。そしてソラは意外に貧弱でした。




