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祝勝会

 俺達はドワーフの村へ帰ってきた。村では残っていたドワーフとトレント、そしてピクシー達が出迎えてくれた。率先して出てきたのはマシロとミカだ。どちらもこちらの被害がないことに安堵した顔をしている。戦闘に参加しなかった人たちは荷造りを終えた後、皆が帰ってきた場合に備えて料理を作ってくれていたみたいだ。リンが「いいにお~い、お腹空いた~」とお腹をぐぅ~ぐぅ~と鳴らしている。それにつられたのか、戦闘に参加したドワーフ達はお腹を擦る者たちが続出する。ガイアスはミカに酒を持ってこいと手をクイックイッと口に持っていくジェスチャーをしている。

 ミカはそれを見て早々に酒場に戻っていく。戻っていく最中に何人かに応援を頼んでいる。今夜のお酒の消費量は凄いことになりそうだ…。まあ、俺は飲み食い出来ないから関係ないけどね。ドワーフ達が酒場に向かって歩いていくに対して、トレント達は村で一番外側にある井戸の周りで休憩をするみたいだ。確かに体の大きいトレント達が全員で酒場に集まることは出来ないだろうからしょうがないか。それにトレント達の主食は水みたいだからね。俺はそんなトレント達を横目で見つつ、酒場に向かうことにした。


 酒場に着くと、既にお酒を飲んでいるドワーフ達がいて、どんちゃん騒ぎとなっていた。皆、水の代わりにお酒をガブガブと飲んでいる。辺りを見回すと、リンすらお酒を飲んでいた。え、リンってお酒飲んでいいのか? 外見は中学生くらいだが、エルフだから年がいくつかわからない。女の子に年齢を聞くのも野暮だし、俺は見て見ぬふりをしてマシロを探した。マシロはミカと一緒にカウンターでお酒を出すのを手伝っていた。俺はマシロにリンがお酒を飲んでいるけど、大丈夫か聞いてみた。


「マシロ。リンがお酒を飲んでいるみたいだが、飲んでも平気なのか? エルフやドワーフ達はお酒を飲むのに年齢制限とかないのか?」


「一応お酒は、独り立ち出来る年齢からってことになってるから、ドワーフだと12歳、エルフだと15歳だから、私も飲めるよ? ただ、私はお酒が弱いみたいで、初めて飲んだ時の記憶がまったくないの。その時に私が色々やらかしたみたいで、リンお姉ちゃんとラピス、それにエンデから私は飲んじゃダメって言われているから私は飲まないんだ。お酒美味しくもなかったしね」


 どうやらマシロもお酒を飲もうと思えば飲めるらしい。でも下戸で色々やらかして禁止食らうって、どんなことをやらかしたのだろう? マシロの可愛い顔からはまったく想像が出来ない。キス魔やスキンシップが増えるなら大歓迎なんだけどな~。色々と妄想をしていると、ガイアスが酒場中央にあるテーブルの上に土足で上がり、「ちゅうも~く」と大きな声で言いだした。音頭を取るみたいだ。


「皆、良くやってくれた! ソラ、こっちにあがってこい! 一番の功労者はお主だ。」


 ガイアスは手招きをして、俺を呼んでいるが、俺は正直目立ちたくない。皆の視線が熱くて戸惑っていると、リンが俺を強引に引っ張って連れて行こうとする。


「ほら、ソラ。いくわよ~。私も一緒にいってあげるから~」


 足がもつれていて、いつもよりも力が入っていない。リンは既に出来上がっているみたいだ。顔も茹蛸の様に真っ赤である。逆に俺がリンを支える形になってしまい、気持ちが少し緩んでしまった…。俺は仕方なくリンを支えながらガイアスのところまで行った。


「ソラ。お主のアイディアのおかげで、人間達は追い返したし、皆無事だったのだ。何か皆に一言いってみろ」


 いきなりそう言われても、用意してないんだが…。皆が注目もしているし、頑張って言葉を捻り出す。


「えー、偵察を頑張ってくれたリンとガイアス、それに先頭に立ってくれたドワーフ達。そして攻撃の要であるトレント達がいてこそ、今回の勝利に繋がったと思います。私のアイディアだけでは成し遂げれませんでした。この場にいる皆に感謝を込めて、乾杯!」


 「うぉおおおおお、かんばぁああああい」と皆が一斉にジョッキに入った酒を飲みほしていく。ちらほら、俺に向かって酒をかけてくる人達がいるがやめてほしい。体を通り抜けで酒が無駄になるだけだから…。それに俺が支えているリンが巻き込まれてビチョビチョの真っ赤っかになっている。どうやら皆が飲んでいるお酒は果実酒みたいだ。お酒をかけられたリンは「もう、飲めないよ~」と寝言を言う始末である。これは二日酔いコースではないだろうか? まあ、俺は未成年だったから二日酔いの痛みが分からない。あとで後悔しても知らない。自業自得だからね。


 リンを引きずり気味に抱きかかえながら、酒場のカウンターにいるミカに「リンを休めさせたいから、空いてる部屋ない」と聞いてみると、マシロが「空いてる部屋も分かるし、私がリンお姉ちゃんを連れていくね」と軽々とおんぶして酒場の奥にある扉に入っていく。酒場には酔いつぶれるものも多く出るようで、宿泊スペースもあるようだ。そんなリンとマシロを見届けていると、ミカから酒を頭からかけられた。もちろん、酒は体を素通りしていく。


「ミカ。俺にお酒かけてても無駄になるからやめてくれないかな。嬉しいより勿体無い方の気持ちが勝っちゃうんだが…」


「悪い悪い。でも気持ちだけでも受け取って欲しいんだ。それだけ私達があんたに感謝してるってことをね。最悪、誰も戻ってこないんじゃないかとやきもきしていたからね…」


 ミカは遠い目をしながらどんちゃん騒ぎをしているドワーフ達を見つめている。確かに、負けたらこの村を捨てないといけなかっただろうからね。生まれた故郷を追われる気持ちは少しはわかる。俺は元居た世界に戻ることが出来ないだろうから、故郷に戻れないという点では同じだからね。


「ミカ、俺はあまり大騒ぎするのは得意じゃないんだ。トレント達にお酒を持っていきたいから何かないかな?」


「あぁ、じゃあ、ここにある強めのお酒を持っていきな。井戸にある水に薄めればトレント達も飲めるだろう。後のことは私に任せな」


 ミカは強めのお酒が入っている樽を持ってきた後、俺に向かって右眼でウインクをした。俺ははにかみながら樽を受け取り、その場を後にしてトレント達のところへ向かった。


 トレント達のところに着くと、酒場とは打って変わってとれも静かだった。皆寝ているようにも見える。


「お酒持ってきたけど、大丈夫か? もしかして皆寝てる?」


「……ん? あぁ。ソラか。ドワーフ達と違ってワシらはあまり騒ぐようなことなどしないからな。戦った後だというのにあそこまで良く騒げるものだ…」


 トレント達が次々に目を開けて、何事かと立ち上がっていく。ちょっと、寝ているところを起こしたみたいでばつが悪いが仕方がない。俺は持ってきたお酒を井戸水に入れてもいいか、トレント達に確認を取る。


「…あぁ、酒を少し飲むという話だったな。あまり強いと体調を崩してしまうからな。井戸水に入れて薄めてくれ」


 俺は許可をもらったことだし、井戸水にお酒を注いでいく。それを見たトレント達はそれぞれの根を少しずつ伸ばて、井戸水を飲んでいく。すると、次々とトレント達が横にゆっくりと倒れだした。俺はビクッとして驚くと、「あぁ、お酒を飲むと立っていられなくて倒れることがあるから、お酒を飲んだ後は横向きに倒れることにしておるのだ。気にしなくていい」とさらりと答えてくれるが、俺は気になる。


「そういえば、精霊は飲み食い出来ないのであったな。つまらなくてこっちに逃げてきたのか?」


「逃げてきたのは否定しないけど、賑やか過ぎるのはどうも苦手でね。しかもお酒が入っているからなおさらね……」


 俺は額に手を当てながら溜息を吐いた。それを察したのか、横になっているトレントの一人が、「ワシの上に座ってゆっくり休むといい、ここはあそこより静かだから少しは気持ちも落ち着けるであろう」と酒場の方に視線を向けながら言ってくれた。俺はお言葉に甘えてトレントの上に座り、空を見上げる。人間達が森を焼き払って煙が立ち込めているせいか、星が全然見えない。俺は休憩しながら、人間達に怒りを覚えつつ、今度攻めてきたらどう対処するか考えることにした。

祝勝会でリンとマシロがお酒を飲めることに驚くソラ。元居た世界の常識とは違うのでしょうがないと割りきします。そして音頭を取らされる…。軽いパワハラですね。

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