戦闘の後始末
戦闘終了後、俺は勝利の余韻に浸りながら、撃破した大きめの蠍の残骸のところまできた。蠍がどうやって動いているのか、そしてどう指示を出していたのか確認するためだ。尻尾の付近は損傷が酷くて見れたものじゃないな。コクピットにはどうはいるのだろうか?
「ソラ。ここを見て見ろ。コクピットの上に蓋みたいなのが付いているぞ。ここから出入り出来そうだ」
直径50cm程の金属製の蓋がそこにはあった。真ん中に取っ手があり、引いてみたらあっさりと開いた。それもそうだよな。逃げるのに必死で閉める余裕なんてないだろうし。そう思っていると横からリンに体当たりされて、「私がいちば~ん」と言いながらコクピットに乗り込んでしまった。まずい。色々やらかされる可能性があるので、俺も急いでコクピットに乗り込む。
「リン、むやみやたらに触るんじゃないぞ。まだ動くかも知れないんだからな」
「リンは気になったものを見つけたときはいつもこうだ。それはソラだってわかっているんじゃないのか?」
ガイアスも後に続いてコクピットに降りてくる。三人が乗り込んでも少し余裕がある。どうやら、指揮官機は5人乗りみたいだ。椅子も五席ある。一番前にある2つの席にはレバーが二つ、ペダルも二つある。一番前の席は機体の操作が主な役割みたいだ。真ん中も2席ある。正面には油圧系の様なメーターがたくさん並んでいる。真ん中の席は動力関係の操作や確認を行っていたのかな? 最後の奥の席はひじ掛けにボタンがある以外特に気になる点はなかった。恐らくこのボタンで信号を発信し、指示を出していたに違いない。
俺は一通り、コクピット内を見終えると、リンがいきなり顔を覗き込んで「もう触ってもいい?」と目をキラキラさせながら上目遣いで見つめてきた。「前の席からな」と溜息をつきながら言うと、リンはすぐに前の席に座り込み、レバーやペダルの操作をし出した。なんの反応もないところを見ると、動力が動いていないのだろう。リンはつまんなそうに頬をぷくーと膨らませている。
「ソラ。この蠍の動力源はこれじゃないのか? 何かを嵌め込むような凹みもある。それがないせいで動かないのではないか?」
ガイアスが奥の席の後ろにある扉の先に見える球体を指さした。球体には色々な箇所にチューブが引かれており、素人目からしても動力源であろうと推測できるものだった。何を嵌め込むのだろう。俺は凹みを触ってみると、ゴゴゴと音がして蠍が動き出した! 俺はビックリして咄嗟に凹みから手を離すと、キュゥウウウンと音がなって蠍が動かなくなった…。
「もしかして、ここには魔石を嵌め込んでいたのではないか? お主の体は魔力そのものみたいなものだからな。ワシも魔力を纏った状態で触ってみよう」
ガイアスが手に魔力を纏わせて、球体の凹みに触る。すると、蠍がまた動き出した。どうやらこの蠍は魔力を動力にして動いてみたいだ。魔石を電池に例えると、あの球体は電池ボックスでチューブは銅線かな? 駆動系も気になるが、専門知識ないから見ても分からなそうだな~。
「ソラ~。ガイアス~。もう一回やって! 私動かしてみたい!」
リンはこちらを他所に楽しむ気満々だ。蠍が動き出したら周りにいるドワーフやトレント達に攻撃されかねないので、断固拒否した。ガイアスも同じ意見のようだ。首を縦に振っている。リンはがっくりと項垂れてつまんなそうに席にもたれかかっていく。
「一通りは見れたかな。ガイアス、敵の死骸や蠍の残骸はどうする? 敵を弔う習慣とかあったりする?」
「なぜ敵を弔わなきゃならん。森の中で放置すれば魔物が片付けてくれるからそのままだが、今の状態だと腐って辺りがダメになりそうだからな。土に埋めるくらいだな。蠍はトレントに任せればよかろう」
どうやらドワーフの習慣では、敵を弔う習慣はなさそうだ。俺達はコクピットから出ると、外で死んでいる人間はドワーフ達が、蠍はトレント達が土に埋めることになった。その上にトレント達が移動させた樹を元の場所に戻していけば、元通りの森に戻っていった。
「敵が破壊した森の再生にはどれくらいかかるの?」
「トレント達が本気でかかれば数年と言うところか…。死ぬ気でなら数日……かな」
なんか歯切れが悪いな。俺は気になったので追及をした。
「死ぬ気で? どういう意味だ?」
ガイアスによると、トレントは成長過ぎると、二つの選択肢があるそうだ。一つ目はエンデの様にその場で動けなくなり、家の代わりの様に大きくなり続けること。そしてもう一つが、命を賭して森に還ることなんだそうだ。文字通り死ぬ気で森を再生させることが出来るが、最後は枯れて果てて死んでしまうらしい。
「今のトレント達の数では、難しいだろう。それに奴らが来たらまた破壊されてしまう。森の再生は奴らが来なくなると断言出来てからだろうな」
ガイアスが髭を撫でながら険しい顔でそう答えてくれる。確かに人間達がまた攻めてきたら元も子もない。
「まあ、そんなことは後で考えればいい。今はまず、帰って勝利の宴が先だ。体力の余ってるもの。先に村に戻って宴の準備を!」
戦闘に参加していた女性陣が名乗りを上げて、村に向かって森の中を走っていく。ドワーフの女性もそうだけど、この世界の女性陣は体力ありすぎじゃない? 俺はリンに視線を向けながらそう思った。
「ソラ。私もお腹空いたわ。早く帰りましょ!」
さっきの落ち込みはどこへ行ったのやら……。俺はリンに手を引かれながらドワーフの村へ帰ることにした。
今回は少し短め…。
この世界の女性陣は男性より逞しいのかもしれない…。




