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お客さん

 俺とラピスが溜息をついていると、ドンドンと玄関を叩く音が聞こえた。直ぐにエンデから呼び出しがかかる。


「ソラとマシロにお客さんだ。ガイアスが直々に来るとは何をお願いしたんだ?」


 どうやら、来客はガイアスらしい。まだ数日しか経ってないのに、万力と鉄板が出来たのかな? マシロはまだお昼寝しているし、万力と鉄板をお願いしたのは俺だ。マシロの代わりに俺が対応するしかないな。俺は玄関を開けて、ガイアスの対応をする。


「やあ、ガイアス。マシロは今お昼寝中なんだ。俺が代わりに話を聞くよ。もしかして万力と鉄板が出来たのかな?」


「ガッハッハッハ、そうかそうか。起こすのも可哀そうだな。あぁ、頼まれていた金属製の万力と鉄板を持ってきた。万力に関しては試行錯誤して使いやすいように少しいじってある。どこに持っていけばいい?」


 う~ん、万力は家の中でもいいけど、鉄板は外で使うしな~。俺はラピスに視線を向け、エンデにお願いしたらどれくらいの時間で外にキッチンと同じものが出来るか聞いてみた。


「今起きてるから、頼めば直ぐよ。エンデ~。畑の近くの外側にキッチンが欲しいんだけど、作ってくれない?」


「家の中のと同じでいいなら直ぐにできるぞ。少し待っていろ…」


 パキパキ…メキメキ…と音が家の外側から聞こえる。家の中から変化は見受けられないが、エンデが何かしているのだけはわかった。俺とラピス、ガイアスは外に出て音がした方へ向かってみる。すると、畑の近くの家の外側にキッチンが出来ていた。家の中にあるキッチンと同じで脇には水を汲める井戸がある。


「これで外で料理することも出来るだろう。ワシは疲れたから少し眠らせてもらう。何かあったら起こしてくれ」


「有難う、エンデ。ガイアスはあそこのキッチンに万力と鉄板を置いておいてくれ」


「おう、万力をキッチンに置いておくが、鉄板はサイズが合っているか確かめないとな。あそこにある竈でいいのか?」


 ガイアスは辺りを見回して竈を見つけると、持っている鉄板のサイズが合うか置いて確かめていく。横のサイズは少し大きめだが、縦は少し長さが足りなくて隙間が出来ている。ガイアスは「サイズが少し合っていないな…」と険しい顔をしている。俺は「空気の循環のことを考えると縦の隙間はあった方がいいから大丈夫だよ。鍛冶仕事でも大事だろ?」と答えると、「ガッハッハッハ、確かに鍛冶でも風で空気を送って火力を調節するからな。ならこれでいいだろう。この竈に置いとくぞ」と竈に鉄板を設置してくれた。


「じゃあ、ワシはそろそろ帰らせてもらおう。リンが起きると絡まれそうだからな…」


 ガイアスが帰ろうとしたところ、家の玄関がバァーーーンと開いて、リンが「ガイアスみ~つけた~」と家から出てきた。どうやら少し遅かったらしい。リンはガイアスに向かって走り出し、タックルをかました。ガイアスは予想していたのか、リンのタックルを受け止め、バックドロップで後ろに放り出した。放り出されたリンはクルクルと前中をしながら着地し、反転してガイアスに向かって殴りかかった。ガイアスはそれを難なく手で受け流し、カウンター気味にラリアットを決めると、ズドォンと鈍い音がしてリンが大の字に倒れ込んだ。

 俺はリンが無事か駆け寄ると、ハァハァ言いながらニヤニヤと笑っていた。どうやら心配無用のようだ。


「アハハハ、やっぱりガイアスつよ~い。もっと遊ぼうよ、ガイアス。いいでしょ~?」


「リン、遊んでやってもいいが、場所を考えろ。だからお主はドワーフの村を出禁になったんだぞ!」


 ガイアスが辺りを見回しながらリンに説教を始める。俺も「こんなとこで今の続きやったら、外で料理が出来なくなるぞ」と脅す。リンは肩を落として珍しくションボリと落ち込んでいる。どうやらテンションが上がって周りが見えていなかったようだ。マシロも家から出てきた。こんなに騒げば、寝てなんていられないだろう。マシロも参戦し、リンを説教し始めた。「リンお姉ちゃん、今日の夕飯抜きにするからね!」と晩飯抜きをちらつかせると、「ごめんなさい、マシロ~。それだけは勘弁して~」と涙目になっている。


「それより、リン。お客さんに向かっていきなり何しているんだ? 知り合いだからって挨拶もなしに殴りかかるなんてどうかしてるぞ!」


「ぇ~、ガイアス相手なら挨拶代わりに良くやってたし、別にいいじゃない」


 リンは口を尖らせながらブーブーと文句を垂れているが、俺はガイアスとリンの関係性を知らない。俺はラピスとマシロに視線を向けると、二人は視線を逸らしながら、「リンはガイアスに戦い方を教えてもらって以降、出会うと場所を選ばずにこんな感じになるのよ…。それで出禁になったのよ…」とラピスが溜息をつきながら説明してくれた。どうやらガイアスはリンの戦いにおける先生だったみたいだ。それでも限度ってものがあるけどね。俺はこれを機に注意を念入りにしておくことにした。


「リン、今度から同じようなことをしたら、マシロに飯抜きにしてもらうからな。わかった?」


 リンは涙目になりながら首をブンブンと縦に振っている。どうやら、美味しくなってきた料理が抜かれるのは嫌らしい。効果てきめんだ。

 リンが落ち着いたところで、マシロに視線を向けると、マシロがガイアスに向かって「ガイアスおじさん。ハーブティーを出すから、少し休憩しましょ」と声をかけてくれた。さすが、マシロ。気が利く子だ。


「あぁ、少し、お邪魔させてもらおう。ここに来るのも久々だしな」


 マシロがガイアスを家に招き入れる。俺とラピスもその後に続いて家に戻った。

 家には椅子が二つしかないので、リンとガイアスが椅子に座り、マシロはキッチンでハーブティーを作っている。ラピスとレイはマシロの肩に座り、彼女に寄り添っている。ガイアスはそれを見て、「精霊だけでなく妖精も増えたのだな。この家は前よりも賑やかになっているようで何よりだ」と感心しているようだ。


「まあね~、私が見つけてきたのよ~。うふふ~ん、すごいでしょ~」


 リンは胸を張ってガイアスに自慢している。すると、木箱からガタガタと音がし始めた。それをリンが見逃さなかった。


「あれ? 木箱が大きくなってる。どうして?」


 リンが未精霊が入っている木箱を覗き込むと、「うわ~、未精霊が成長している~可愛い~」と笑みを零しながら未精霊を鷲掴みにしようとした。しかし、未精霊たちはリンの手をかいくぐり、器用に避けていく。リンが何度触ろうとしても、未精霊たちは避けるのだ。

 リンはがくっと肩を落としながら「なんで私は妖精と精霊に嫌われてるの…」と一人呟いている。日頃の行いだろうか。もしくはリンから危険なオーラがプンプンとにじみ出ているのかもしれない。ガイアスも未精霊が珍しいのか、手を伸ばして触ろうとした。すると、ガイアスは普通に触れた。それを見たリンは膝から崩れ落ち、更に落ち込んでいった。

 リンは自分だけが嫌われているのか確かめるため、俺、マシロ、ラピス、レイ、みーにゃにも未精霊に触ってみてと順番に試させていく。結果は全員が触れた。リンは更に落ち込み、ベッドに潜り込み不貞寝を始めてしまった。ガイアスはそれを愉快に思ったのか、「ガッハッハッハ、リンがここまで落ち込むなど珍しい。良いものが見れたわい」と笑いながら出されたハーブティーをガブガブと飲んでいる。

 ガイアスはハーブティーを飲み終えると、「もうそろそろ日が暮れるな。楽しめたし、ワシはこれでお暇しよう」と席を立つ。俺とマシロはガイアスの見送りのため、家の外までガイアスを送る。


「ソラ、マシロ。リンのお守は大変だろうが、あの子のような子がいると、退屈しなくて済むのだ。大事にしろ」


ガイアスが去り際にそう言い残し、森の中へ入っていってしまった。俺とマシロは目を合わせ、クスクスと笑い合いながら家に戻った。

リンはガイアスに軽くあしらわれています。ガイアスは結構強いです。

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