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後始末

 俺とラピスが家に着く頃には辺りは明るくなっていた。そして家に着くなりエンデから叱られた。


「お主等、どうやったらこうなるのだ? ここまで森全体がざわついたのは千年前の人外戦争以来だぞ! トレントやドワーフ、エルフの里からそれぞれ使者が来た。リンが問題を起こしたのであろうとやってきたのだ。リンは自分のせいにされて、今は不貞腐れておる。まあ、日頃の行いのせいではあるのだが、見ているこちらも気を揉んだのだ。説明しなさい」


 俺は魔法の練習で行ったことを終始報告した。ラピスは協力しただけで、全責任は俺にあることも強調した。それを聞いたエンデは大きな、それはとても大きな溜息を吐いた。


「…はぁ~、お主ら。魔法の練習は今後は控える様に。そして今回使用した魔法は以後使用することを禁ずる。ラピス、協力を求められても応じない様に。ソラ、リンやマシロにも謝っておくように。特にリンは不貞腐れて不貞寝をしておるみたいだ。エルフの里の者が来たせいで、尚更な…」


「分かってるわ、エンデ。あたしはもうソラの練習には付き合わないと心に決めたもの。ソラも分かったわね?」


 ラピスは俺にそういって、早々に家に入ってしまった。どうやらラピスには少し愛想を尽かされたみたいだ。まあ、自業自得なので仕方ないか。俺は肩をがっくりと落としながら溜息を吐く。


「ソラ。トレントを通してドワーフやエルフの里にはワシが説明をしておく。お主は自重するように気をつけよ。それよりも気がかりなのは北に住む魔族のことだ。ソラが使用した魔法が魔族の住んでいる地域に落ちていたら、大変なことになるかもしれぬ」


 どうやら、北に見える山脈を超えた先に魔族の住んでいる地域があるらしい。攻撃を受けたと捉えられたらどうなるかわからないみたいだ。


「北に住む魔族は滅多にはこちらに来ぬ。だが、来た場合にはソラ…。心しておくように…」


 最後はエンデから投げやりな言い方をされてしまった。魔族とはあまり交流をしていないせいか、どう対応していいのかわからないのだろう。魔法が吹っ飛んでいって嫌な予感がしていたが、当たってしまいそうだ。だが、確認のしようもないので、今は家に入って、リンやマシロに謝罪をしなければならない。どちらにしても気が重くなった。

 家に入ると、聞いていた通り、リンはベッドに潜り込んで不貞寝しているみたいだ。みーにゃも一緒に潜り込んで心配しているのか「んにゃ~んにゃ~」と泣き声が聞こえる。マシロはリンがお腹が空いてもいいように、食事を作り置きの準備をしている。


「ただいま。リン、マシロ。申し訳ない。俺の不祥事のせいで迷惑をかけたみたいで…」


「………」


 リンはだんまりを決め込んだみたいだ。なんの返答もない。マシロはラピスを甘やかしている。どうやら、俺に協力しただけで自分も被害者なのと散々説明したのだろう。マシロはこちらを見ると、少し溜息を吐きながら悲しい表情で「ソラ。過ぎたことはしかたないから、次からは気を付けてよね」と軽く注意するだけだった。

 マシロはリンに鍛えられ過ぎなんじゃないか? 俺は逆にマシロの感覚を心配してしまった。


「ソラ。リンお姉ちゃんのことは、今はどうしようもないから、別なことをやりましょ。そういえば、畑に作った竈に使う調理器具がないからドワーフの村まで頼みに行こうと思ってるの。ソラも一緒に来て、謝罪も直接した方がいいでしょ」


 マシロはリンの扱いに慣れているようで、今は何をしてもダメみたいだから別なことをしようと、竈用の調理器具のためにドワーフの村へ行こうと誘ってくれた。気遣いも出来るマシロ。最高過ぎる。


「ドワーフの村へ行くにしても、何か必要なものはあるのか? 買うためにお金とか必要なのか?」


「お金? そんなものないわよ。ドワーフの人たちとは物々で交換しているの。今回はドレッシングやマヨネーズ、洗剤があるからいっぱい交換できると思うわ」


 どうやら、ドワーフとのやり取りは物々交換らしい。俺の作ったものがあるおかげで色々交換できると、マシロは満面の笑みを浮かべている。楽しみで仕方ないみたいだ。


「なあ、マシロ。包丁を見せてくれよ。その包丁はドワーフから交換したものだろ?」


 俺はこの家にある唯一の金属であろう包丁に目を付けた。マシロは「そうよ、よくわかったわね」と包丁を見せてくれた。包丁は手入れはされているみたいだが、多少刃毀れが目立っていた。キッチン周りを見ても砥石らしいものはない。


「刃毀れしてきているな。これ研ぎ直してもらったらどうだ? 若しくは砥石を調達するとか。あとは万力も持って行った方がいいかもな。ラピスに作ってもらったけど、木製よりも金属製の方がいいと思う。この万力も交換条件に使えそうだ」


「それもそうね。じゃあ、ソラは万力をお願い出来る? ラピス、リンお姉ちゃんとお留守番をお願いね」


「分かったわ。リンのことは任せなさい! ソラ。何回も言うようだけど、くれぐれも変なことをしないようにね。マシロの言うことをしっかり聞くのよ!」


 段々とマシロがお姉さんかお母さんに見えてきた。しっかり者のマシロに全力についていこうと心に決めた!


「じゃあ、行ってきます。ソラ。行きましょ」


 俺は一緒にマシロと家を出る。マシロは木の籠にそれぞれ大きさの違う小樽を入れている。どうやら、大きさでドレッシングやマヨネーズ、洗剤が分けられているらしい。あとは指摘した包丁くらいか。俺もこれで何が交換できるのかワクワクしてきた。

 マシロはスイスイと道を迷わずに、ドワーフの村へ向かっているみたいだ。魔力探知しても目印なんて何もないのに、不思議がっていると、マシロが教えてくれた。最初にドワーフの村を見つけたのはリンなんだそうだ。それでマシロと一緒に交流を深めていたらしいのだが、リンが色々とやらかすので出禁を食らってしまい、ドワーフとの交流はマシロ任せになったんだそうだ。

 リンは色んなところでやらかしてるんだな。今回の件もリンのせいと思われても仕方ないよね。

 そして目印としてリンが岩を所々に配置して迷わない様にしてくれたんだそうだ。マシロのためにせめてものお詫びってところかな? リンも可愛いところがあるじゃん。確かに、所々に岩が配置されているのを思い出した。そのおかげで道に迷わないんだな。

 マシロと会話しながら歩いていると、遠くの方から煙がモクモクと上がっているのが見え、カンカンと鉄と鉄がぶつかる音が響いてきた。どうやら鎚で何かを叩いているようだ。

 そしてドワーフの村へと到着した。ドワーフの家の見た目は竪穴式住居を土壁で作った感じの住居だった。家の中心には煙突があり、柱の役目もしているようだ。ざっと建物を見ただけでも50以上はある。かなり大きい村のようだ。

 村を警備しているドワーフ達だろうか。こちらを見て険しい顔をしていたが、マシロを見た途端、ニコニコと満面の笑みでこちらに向かってくる。


「おー、マシロちゃんじゃないか! 元気にしてたか? 今日はどうしたんだ、精霊と一緒なんて初めてじゃないか!」


「こっちはソラ。その…。今朝問題を起こしちゃった人なの。迷惑かけちゃったようだから、謝罪も兼ねて来てもらったの。村長はいますか?」


 俺を見るなり、警備をしていたドワーフ達の満面の笑みが険しい顔に変わっていく。


「俺が村長を呼んでくるからここで待っててくれ。マシロちゃんはこの椅子でも使っててくれな。それじゃ行ってくる。お前たちは見張っていろよ」


 ドワーフの一人が村長を呼びに村の奥へ走っていく。残ったドワーフ達はマシロを見るときは好意的な顔を向けるが、俺に対しては、警戒心むき出しの顔で見てくる。扱いの差が酷い…。まあ、マシロは上手くやっているから印象がいいのだろう。初対面の俺は警戒されても当然だなと、肩をがっくり落とす。これから謝罪しないといけないのに気分がめげてくる。

 村の奥か明らかに酒に酔っていそうなガタイのいい年配のドワーフが歩いてきた。見た感じ村長みたいだが、朝からお酒を飲んでいたみたいだ。若しくは昨日からオールで飲み倒していたかだな。陽気に笑いながらこちらに近付いてくると、マシロが立ち上がり、挨拶を始めた。


「ガイアスおじさん、こんにちは。お久しぶりです。こちらはソラっていいます。今朝の件での謝罪と紹介をしに来ました」


「ガッハッハッハ、お主か、村があんなに大騒ぎになるなど久々だったぞ! 気に入った、許す!」


 いきなり許す発言をされてしまった。どうやら相当酔っているみたいだ。隣にいる夫人に肘鉄をくらいながらもガイアスは上機嫌に笑いながら話を続ける。


「ドワーフはエルフと違って過ぎたことをネチネチと根に持たん。エンデやマシロが面倒をみるというのだ。ワシはエンデとマシロを信じる! だが、ソラ。それを裏切るようなことをすればどうなるかわかるな?」


 ビリビリと魔力とは違う凄みのあるプレッシャーを感じる! 内心は相当怒っているのかな? いや、どちらかと言うとエンデとマシロを信用しているみたいだ。俺は「肝に銘じます」と答えると、ガイアスはマシロに目を向け、顔をくしゃくしゃに綻ばせながら話始めた。


「マシロ、久しぶりだな! 今日は他に何か用があるのか? ワシが直々に対応してやろう」


「今日は他に、包丁の研ぎ直しと鍋などの調理器具が欲しくて来ました。ソラのおかげで新しいものが出来たので、ドワーフの皆さんにも試してもらいたいものがあるんです」


 マシロはドレッシングとマヨネーズ、そして洗剤を紹介していく。ドワーフの女性陣は興味津々のようだが、男性陣はピンと来ていないみたいだ。どうやら料理と洗濯は女性陣がするもので、男性陣はしないみたいだ。それよりも男性陣は俺の持っている万力に興味があるようだ。視線が痛い。


「ガハハハ、そうかそうか、いいだろう。じゃあ、まずは酒場へ行くか。そこでドレッシングとマヨネーズとやらを試してみよう。こっちだ」


 ガイアス自ら案内してくれるみたいだ。案内してくれる場所が酒場とかまだ飲むつもりなのだろうか…。他のドワーフ達はそれを聞いてそれぞれの持ち場へ戻り始めた。俺はそれを見ても逃げたなと悟ったが、ガイアスの人となりを知らないので、様子を見ることにした。

 ガイアスの後についていくと、大きな長屋の建物に着いた。壁の一部が開いており、中と屋外にテーブルと椅子がたくさん並んで、かなりの人数が飲み食いできる場所となっていた。


「ここが酒場だ。ミカ。つまみのサラダとフライドポテトをくれ。一つずつで良い」


「あいよ。あら、マシロちゃんじゃないか。元気そうでなによりだね。今果物のジュースを作ってあげるから待ってな」


 マシロは「有難う、ミカおばさん」と言いながら、果物のジュースを貰い、クピクピと美味しそうにジュースを飲んでいる。周りを見渡すと、ドワーフの子供達がマシロを遠目からチラチラとこちらを見ている。どうやらマシロを見ているようだ。

 それに気づいたミカが「あの子たちは、マシロに告白して振られたさ。でも忘れられないのか、ああやってたまに見に来るのさ」と子供たちの秘密を暴露し始めた。それに気づいた子供たちは恥ずかしいのか逃げてしまった。マシロはドワーフ達にとって、アイドル的な存在なのかも知れない。皆マシロに対して優しい気がする。きっと気のせいではないと思う。


「ほら、サラダとフライドポテトだよ。たんとお食べ」


 当たり前の様にマシロの前に料理が出されていく。頼んだのはガイアスなんだけどな。見た感じサラダとフライドポテトの味付けは塩だけみたいだ。マシロは木の籠からドレッシングとマヨネーズを取り出し、サラダにドレッシングを、フライドポテトにマヨネーズをかけていく。


「ガイアスおじさん、ミカおばさん。ドレッシングをかけたサラダとマヨネーズをかけたフライドポテトを食べて感想を聞かせて」


 マシロがガイアスとミカにドレッシングのかかったサラダとマヨネーズのかかったフライドポテトを勧めていく。二人とも躊躇なくサラダとフライドポテトに手を伸ばして口に運んでいく。すると二人とも驚いた表情で次々とサラダとフライドポテトを手に取っていく。どうやらかなり美味しいみたいだ。


「なんだこれは! 物凄く美味しいぞ。味も濃くてお酒に合いそうじゃないか。 ミカ! エールを一杯頼む。」


「ガイアス、あんただけズルはさせないよ。あたしも一杯飲みながら頂こうかね」


 二人ともお酒を追加し、飲みながらサラダとフライドポテトを食べ進めていく。そしてすぐにサラダとフライドポテトはなくなってしまった。ミカはキッチンに戻り、追加のサラダとフライドポテトを作り始めた。どうやらこれから酒盛りが始まりそうだ。

 二人の反応を遠目で見ていたドワーフ達もソワソワしだしている。いや、皆の分のドレッシングとマヨネーズはないんだけどね。マシロもそれに気づいているみたいで、ミカに「ドレッシングとマヨネーズはもう少ししかないよ」と教えている。

 それを聞いた周りのドワーフ達は皆ガックリと肩を落としながら、ガイアスとミカが美味しそうに飲み食いしているのを眺めているしかなかった。俺はそんなドワーフ達を見て同情したが、交換条件としてかなり手ごたえがあるのを感じた。

ドワーフの性格上、あまり気にされませんでした。でもマシロが関わると話が変わるみたいです。マシロはアイドルになれるかもしれません。

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