魔法の練習 後編
さっきまでは弾系だったからな。今度は斬撃系がいいかな? 風で斬撃と言えば鎌鼬辺りか。確か空気中に出来た真空に触れると切れるだったか? 俺は魔力をブーメランのような形に変化させ、魔力内の空気を抜いて真空にしていく。よっし、出来たかな? まずはこれで試してみよう。
俺は空地にまだ点在している岩に向かって、ブーメランを投げてみる。……エアーボムの時より酷い。投げたら曲がって戻ってきたのだ。危うく俺の体が切れるところだった。ラピスからは「なんか戻ってきたんだけど! 刺さった場所で切り傷みたいなの出来てるし、どんな魔法を作ったのよ!」と文句を言われてしまった。
「空気中に真空を作って触れると、風で切れたみたいになるんだけど、それをさっきのブーメランに封じ込めて投げたんだ」
「もう、ノーコンなら投げずに、さっきみたいに弾を出すイメージで飛ばしてみたら? いちいち投げる動作なんて効率悪いわよ」
ノーコン扱いに効率が悪いと言われてしまった。これは凹む。
俺はラピスのアドバイスを受けて、今度は魔力を弓矢の鏃のような形に変形させていく。そして先ほどと同様に空気を抜いて真空状態にして、エアバレットの要領で岩に向けて撃ってみた。
岩に矢が当たると、スガァアンという音とともに岩に切り傷のような跡が複数出来ていた。これは弾を込めずに使えるから使い勝手がいいかもしれない。この魔法は『エアーアロー』と名付けることにした。
「ほら、上手く言ったでしょ? うふふん。あたしに感謝するといいわ」
ラピスは両手を腰に当てて、踏ん反り返っている。俺は「ラピス先生のアドバイスのおかげです。有難う御座います」と褒め称える。ラピスの機嫌がドンドンと良くなっていくのが見て取れる。これでさっきの汚名が少しでも返上されたらいいな。リンはともかく、マシロには知られたくない。
さてと、次はどんな魔法を作ってみようか。丸ノコのような形で飛ばしてみたら凄い斬撃魔法になる気がするんだが、飛ばすイメージがわかない。いや、盾をボウガンのイメージで射出すればいけるか? よし、試してみよう。
まずは、右腕をボウガンのように形を変形させていく。次に魔力を丸のこの形に変形させて、ボウガンにセットする。そして岩に向けてボウガンのように射出するイメージで発射する。真っすぐに岩に向かっていき、岩が横に真っ二つに切れた。成功だと思っていたら、ラピスに「それ、風魔法じゃなくない? 魔力を変化させて作ったものよね?」と言われてしまった。そういえば風なんて込めてない。まあ、風魔法じゃなくても使えるのだからそれでいいじゃないか。俺は前向きに考えることにした。この魔法は『マルノコカッター』と命名した。
「う~ん、あとは何があるかな~? 試してみたいのはあるけど、威力が凄いことになりそうなんだよね」
「どんなに凄いものなの? イメージでいいから見せなさい」
俺はイメージしたものをラピスに思考を読み取ってもらう。ラピスは余程危ないと思ったのか腰を抜かしながら文句を言い始めた。
「あんた馬鹿ぁあ? そんな危険なもの実現したらどうするつもりよ。危な過ぎて許可出来ないわ!」
俺がイメージしたのは遠心力を利用したロケットだ。前の世界では実証実験で成功していたのを耳にしたことがある。弾速はマッハ(約1225km)を超えていたと思う。この世界に火薬や原油などがあるか分からないが、これを使えばマッハを超える弾速が可能のはずだ。ラピスに協力を仰ぎたいが全力で拒否されてしまった。試すだけ試してみたいのだが、どうすればラピスは協力してくれるだろうか。うん、全力で人間のせいにしよう。
「ラピス。人間たちがどんな方法で攻めてくるか分からないんだ。あるには越したことはないと思うんだけど、それでもダメかな?」
ラピスは人差し指を眉間にぐりぐりと押し当てながら「むむむむむ~」と悩んでいる。もう一息かな? 俺は全力で頼み込む。
「ラピス先生。一度でいいから試させてください。ラピス先生が頼りです~」
「はぁ~、仕方ないわね。一度だけよ? で、何をすればいいの?」
俺はラピスに遠心力を作るために必要なものを木材で作って欲しいと頼む。作ってもらうのは回転させるためのギア二つ、ロケットを括りつけるための柱とロープ、そして前腕くらいの大きさのロケットだ。ロケットといっても丸太を成形したものだけどね。これがあれば簡単な遠心力のロケットが作れると思う。
ラピスは「ちょっと待ってなさい。いい大きさの樹を探してくるわ」と言って森の中に入っていった。俺はその間に地面に簡単な設計図を書いていく。柱の上下に回転させるためのギアをつける。ギアには風を受けやすいように受け皿のような彫りの加工も施しておく。柱の中央には突起を作り、そこにロープを括りつける。そして最後にロープをロケットに括り付ければ完成だ。よし、これでまずは試してみよう。
ラピスがふらふらしながら帰ってきた。どうやら持てる限界の丸太を調達してきてくれたみたいだ。ありがたい。俺は地面に書いた設計図を見せて、ラピスに丸太を加工してもらう。
「ゼェー、ゼェー、ソラ。出来たわよ…」
どうやら部品が完成したようだ。「ラピス先生有難う、大好き~」と感謝を込めて言ったのだが、「あなたに大好きって言われると、なんか気持ち悪いわ」と嫌々な顔をされてしまった。俺はラピスに好きって言うと気持ちがられることを心に留めておく。
作ってもらったはいいが、魔力だけで覆って出来るものじゃないな。体を変形させて組み込んでいくしかないか。俺は部品が体に収まるように変形させていく。最終的にはお相撲さんのような体系になってしまった。まあ、お腹周りだけ蝸牛のような形になっちゃったけどね。
まずは、軸となる柱をセットしていく。次に柱の上下にギアを、そして柱の中心の突起部分にロープを引っかけて、ロケットにロープを括り付けていく。じゃじゃーん。これで完成だ。まあ、試作品としては及第点だと思う。さっそく、試してみよう。
俺はまず、部品それぞれに魔力を纏わせ、耐久性をあげていく。次に柱周りの空気を抜き、真空状態にしていく。これで遠心力の時にかかる空気抵抗を軽減するためだ。そしてギアに風を勢いよく当てていく。ギアがヒュゴゴゴゴゴゴと音を立ててドンドンと回転していく。ギアが回転していくにつれて柱が高速回転し、ロープで繋がれているロケットが遠心力でドンドン加速していく。
俺はロケットがドンドン加速していくのが楽しくなってきたので、もっと加速させようとギアにもっと強い風を当てて、ドンドンとロケットを加速させていった。すると、ロープが持たなかったようだ。ロープが切れた途端、バァアアアアアアンッ大きな音を響かせながらロケットがすっ飛んでいってしまった。ロケットの作り出す衝撃で樹々がワシャワシャと騒めき、それに驚いた鳥や魔物たちの悲鳴のような鳴き声がそこら中から聞こえてきた。
俺はロケットを見失ってしまったが、どうなったのかはすぐに分かった。遠くに見える山々の一部の山頂が吹き飛んでいたのだ。やべぇ~、やっちまったな~こりゃ。全身の体に身の毛もよだつ寒気を感じる。こんな体になってからは初めてかも知れない。色々とやらかしてまずい気がする。そう考えていたのは俺だけじゃなかったようだ。
「ババ、バ、馬鹿なんじゃないの! だから、言ったのに、あたしし~らな~い」
ラピスは俺のことなんか見向きもせずに、この場を離れて家に向かっていそいそと帰ってしまった。俺も長居はしたくなかったので、ラピスを追うように家に帰ることにした。
一応今回の魔法は『ロケットマグナム』と名付けることにしたが、多方面からの苦情により、封印することになった。
魔法の練習で飛んでもない威力の物が完成しました。頑張れば宇宙までロケットを飛ばせるかも知れません。




