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この茸エッチ過ぎ

 リンが見つけて気になった茸を探しに行き、ラピスがそれを追いかける形で、またマシロと二人きりのお留守番となった。嬉しいけど、有難迷惑である。

 マシロはピナコに「リンが変な茸見つけたみたいだから、なんかあったら頼むね」とお願いしたあと、食器を片付け始めた。リンと違って出来る女の子である。

 俺は日課となりつつある、妖精の蛹が付いている花と未精霊に水を上げながら、そういえばピナコにお願いしたいことがあることを思い出す。


「マシロ。ピナコにお願いしたいことがあるんだけど、頼めるかな? アルコール強めの果実酒を作って欲しいんだ」


「分かったわ。果実酒になる果物を取ってきた後に、ピナコにお願いしてみるわね」


 マシロは機嫌がいいのか、鼻歌交じりに返事をしてくれた。食事の改善と洗剤での洗い物が余程嬉しいらしい。

 なんか邪魔するのもあれだし、俺は捕まった鳥を確認するため、家を出て畑に向かった。

 飼育小屋を確認すると、中央に区切るための板が設置され、左に黒い鳥、右に白い鳥が入っていた。2羽ともブルブルと震えている。怯えているのだろう。白い鳥の方を確認すると、卵が5個も産み落とされていた。どうやら白い鳥が雌らしい。

 たぶん、命の危険を察して産んだんだと思う。たしか、前の世界では命の危険が迫ると、子孫を残そうとすると何かで見た気がする。あれは薄い本の話だったっけか? 実際はどうかは分からないけど、似たようなことだろうと納得することにした。

 俺は魔力探知でも雄と雌の区別がつかないか試すことにした。結果は全く分からなかった。体の大きさも魔力の量もほとんど一緒なのだ。まあ、この鳥は色でわかるみたいだし、魔力探知では分からないことが分かっただけでも良しとするか。

 その時、森の方から物凄い勢いで走ってくる音が聞こえてきた。デジャヴかな? リンが帰ってくる気がする。俺は家の前で待機することにした。

 案の定、リンが変な茸を拾ってきたようだ。拳を上に振り上げたような形をしている。まだ食べてはいないみたいだ。後ろにはラピスが急いで追いかけているのが見える。


「ねぇねぇ、見てソラ! これ腕の形に見えない? 変な茸でしょ~」


「ぜぇ、ぜぇ。リンに食べない様に説得するの大変だったわ…。マシロやピナコに見せてあげなさいって言って、ようやく食べさせないで持ち帰れたわ…」


 俺はラピスに「お疲れ様…、水を飲んできたら?」と労いの言葉をかける。リンは俺の返答を待たずに、家に入っていく。どうやら、マシロとピナコにも見せるのだろう。俺とラピスも続いて家に入る。


「ねぇねぇ、見てマシロ。ピナコ。これ腕の形をした茸よ! 変な茸でしょ~」


「リンお姉ちゃん、変な茸だとは思うけど、ピナコに確認してから食べたりしてよね? 私は知らないけど、前にも大変なことがあったんだから」


 ガタガタと床が開く音がする。ピナコも上にあがってきたようだ。


「ふへぇ~…。それ、毒はないけど…食べない方がいいと思うよ」


「パクっ、モグモグ」


 リンはピナコが毒はないよと言った瞬間には茸を食べてしまっていた。どうやら好奇心を我慢できなかったらしい。ピナコは「大変~…、逃げないと~…」と言ってすぐ地下へ隠れてしまった。何か嫌な予感がする。

 リンの目がトロンとなり、全身に汗をかき始めた。女の子なのに妖艶な雰囲気が出てきている。するとリンはマシロに目掛けて突進し、押し倒した。馬なりの様な形となり、マシロは目を白黒させて驚いていると、リンがマシロにキスをしだした。まずは口、それから耳から首にかけて、キスをしたり舌で嘗め回したりしている。


「ぶちゅ~~~。んっ。ペロペロペロ~。マシロ大好き~」


「やめて、リン、お姉ちゃん。お、ねがい…」


 どうやらあの茸は媚薬の効果はあるみたいだ。リンがマシロにキスの嵐を決めている。俺は百合の光景に見入っていると、ラピスが止めに入るのが見える。するとラピスは鷲掴みされ、飴のようにベロベロとリンに舐められている。目に入ったものを見境なく襲っているようだ。


「リンン“ン”ン“、やめなばい…」


「リンお姉ちゃんの馬鹿ぁああああああ~」


 マシロがお叫びとともにリンの顎にアッパーカットを決めた。リンは声にならないような呻き声を上げながら、ドサッと倒れこんだ。顎に綺麗にアッパーカットが決まったんだ。当分は起き上がれまい。マシロとラピスの顔はリンにキスと舐められたせいでべちょべちょになっている。これもいいかもと思って眺めていると、マシロから魔力の威圧を受けた。


「ソラ。何をぼーと見てるの!! 止めなさいよね!!」


 マシロに怒られてしまった…。俺は精神的にボディーブローを食らってしまった…。これは凹む。

 マシロはリンを蔓でぐるぐる巻きにして、ベッドに乱暴に寝かしつけた。マシロは怒ると怖いみたいだ。俺は心に刻んでおく。


「ふぇ~…、終わった?」


 地下へ避難していたピナコが時間を見計らって戻ってきたらしい。


「あの茸は、【ゲンキノコ】って言って、食べた動物が発情するものなの…。持続時間は短いんだけど、その分効果が凄いの。まだ子供のリンだからあれくらいで済んだんだと思うよ…」


 やはり、媚薬の類だったか。子供のリンであの効果とか、大人だったらどうなっていたことやら。マシロは顔がぐちゃぐちゃで全身はリンの汗まみれになったせいか、水浴びをするみたいだ。俺は大量に作った洗剤を使って洗うように勧める。これで俺に対しての機嫌が少し良くなればいいなと思って。

 マシロは俺に「ありがと、あと水浴びは家の中で桶を使いながらやるから、ソラは呼ばれるまで外で待機してて」とそっけない態度を取られてしまった…。

 俺はガックシと肩を落としながら、家を出て、畑にある椅子に腰を掛けて溜息を吐く。今日はマシロと二人きりで最高だったのに、リンに振り回される形で失敗してしまった。俺はマシロに呼ばれるまでどう誤ればいいか、反省の弁を地面にかけるだけ書いた。


「ソラー。終わったよ。入ってきてもいいよー」


 どうやら、マシロの水浴びが終わったらしい。俺は家に入った後、早々に頭を下げて謝罪した。


「ごめん、マシロ。俺まだリンの暴走に慣れてなくてどうしていいか分からなかったんだ」


「こちらこそ、ごめんね。ソラは、まだ来たばかりでリンお姉ちゃんのこと分かってなかったのにね」


 マシロの機嫌が少しは治ったみたいだ。俺は頭を上げてると、謝罪の気持ちが吹き飛ぶほど驚いてしまった。マシロの髪がサラサラになり、白い肌は艶々でより一層白く見えた。どうやら洗剤を使って水浴びをしたせいだろう。可愛さが更に増して、俺の心がキュンキュンしているのを感じる。ラピスも一緒に洗ってもらったのか髪と肌が艶々して、羽は輝きを増していた。


「ソラ。洗剤をこんなに作ってくれてありがとう。こんなにさっぱりしたの初めてだわ」


 マシロとラピスは洗剤を使った水浴びに満足しているようだ。これからも洗剤造りよろしくとお願いされてしまった。うん、頑張ろう。

 リンの様子を伺ってみると、汗で全身ビチョビチョになったまま、蔓で簀巻きにされている。懐いているみーにゃですらマシロのベッドの上から遠巻きに眺めている。まだ起きないところを見る限り、ラピスが眠り魔法をかけているみたいだ。リンの顔に鱗粉がこびりついてる。正直、女の子がこんな格好のまま寝ているのには抵抗があるが仕方あるまい。自業自得だ。

 俺は家の中を見回る。マシロとラピスが綺麗になったので、部屋の汚れが気になったからだ。俺はこの機会にマシロとラピスに大掃除をすることを提案する。


「なあ、リンがこの状態だし、部屋の掃除をしないか? 二人ともさっぱりしたのにすぐ汚れるのも嫌だろ?」


「うん、そうだね。お姉ちゃんが動けない今がチャンスかも知れないね」


「じゃあ、洗濯物は俺に任せてよ。桶と洗剤は使わせてもらうよ。マシロはテーブルや床の掃除を、ラピスは高いところや細かいところをお願い」


「わかったわ。ソラ、洗濯物を干すなら蔓で作ったロープを使って外で干してきてね。家の中じゃ狭くて干せないから」


「了解。じゃあ、掃除を始めようか」


 俺はまず、桶に水を貯めることにした。次に洗濯物を集めて桶の中に入れる。最後に洗剤を入れた後、手の形を泡だて器のミキサーみたいな形に変形させる。これを回せば簡易洗濯機の出来上がりだ。桶に手を突っ込んでミキサーで右回転させていく。程よく回ったら、左へと逆回転にする。これを交互に繰り返し行うと、見る見るうちに桶の水が灰色になっていく。汚れている証拠だ。

 水を捨てる場所はどこだろ? マシロに聞いてみると、キッチン横に小さな井戸の様な穴があった。そこに使った水を捨てると、エンデが綺麗な水にしてくれるらしい。どうやらエンデには水を浄化する機能もあるみたいだ。ろ過機いらずである。俺は桶の汚れた水を捨てた後、綺麗な水を入れてすすぎを行う。水はほとんど汚れなかった。どうやら隅々の汚れまで落とせたらしい。簡易洗濯機に満足した俺は、残りの洗濯物も同様に洗濯していく。


 洗濯が終わったら、外に出て洗濯物を干すためのロープを樹と樹に括りつける。これで干し竿の代わりの出来上がりだ。俺は次々に洗濯物を干していくが、洗濯物がビチョビチョだ。しまった、脱水してない! どうするか悩んでいると、マシロが家から出て、こっちに歩いてきた。


「ソラ。洗濯物の水きってなかったでしょ。私に任せて、水魔法を使えば簡単に水きれるから」


 マシロは洗濯物に向け指を動かすと、なんと、洗濯物の水気がドンドン抜けていく。あっと言う間に水気がなくなったようだ。魔法便利過ぎ。


「これである程度の水気は抜けたと思うよ。でもまだ少し湿ってるから干して乾かさないとだめなの、仕上げはソラにお願いするわね。魔法の練習にもなるでしょ?」


 マシロはそう言うと家に戻ってしまった。どうやら俺に風魔法の練習がてら、洗濯物を乾かしてほしいらしい。先のことが見えている子だ。関心しながら俺は、息を吐く要領で風が出ないか練習を行う。結果は風を起こすことに成功はしたが、風量がいまいちだった。俺は手を扇風機の形に変えて、風を送る方が風量が強かったため、扇風機として洗濯物を乾かしていった。

 洗濯物が乾いたら、洗濯物を取り込み、綺麗に畳んでいく。これで洗濯物は終了だ。俺は洗濯物を持って家に戻ると、家の中が凄い綺麗になっていた。一部(リンのベッド)を除いては…。


「リンが大人しいから、掃除が捗ったわ~。まあ、すぐにリンが汚すだろうけどね…」


「私は定期的に掃除しるんだけど、リンお姉ちゃんが汚すの早いから最近は疎かになってたのよね」


 マシロは頬に手をあててリンの方に視線を向ける。ラピスは遠い目をしながらリンを見ている。この二人よくリンに付き合ってられるな。まあ、家族ってこんなものなのか。俺は元居た世界のことを少し思い出す。そういえば、俺は家族に迷惑をかけっぱなしで、何もしなかったな。後悔で気持ちがどんどんと沈んでいくと、何かを察したのかマシロが声をかけてきた。


「ソラ、ありがとう。ソラのおかげで、洗剤が手に入ってこんなに綺麗になったよ。これからも宜しくね」


 あぁ、マシロっていい子。俺はこの言葉に少し救われた気がした。もう過ぎたことを考えても気分が落ち込むだけだ。俺は「任せろ!!」と胸を張って返事をした。

媚薬効果のある茸でした。リンは相変わらず暴走してます。

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