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マヨネーズを作ろう

「ぶぅううう~ん、ぶぅううう~~~ん。きぃいいい~ん、きぃいいい~~~ん」


 リンが昨夜、ラピスにお願いして作ってもらった木製の車と飛行機で遊んでいる。新しい玩具が増えて嬉しいようだ。満面の笑みではしゃいでいる。


「ねぇねぇ、ソラ! これで遊び方は合ってるのよね?」


「あぁ、合ってるよ。走る音と飛ぶ音もね」


 リンは気が済むまで玩具で遊ぶと、次は外に出かける準備をし始めた。マシロとラピスも同じく準備をしている。

 リンと俺が鳥の卵を取りに、マシロとラピスが油の取れる種と実を取りにいくのだ。解せぬ。なぜ、こんな組み合わせに…、マシロと組みたい! 切実に!! リンの重りは俺一人じゃ重すぎる気がする。ラピスに視線を向けると、ラピスは口笛を吹きながら視線を外していく。こいつ、確信犯だな。俺は溜息を吐きながら、リンに視線を戻す。


「リン、今日はみーにゃも連れていくつもりなのか? そんな首に巻いている状態で落ちないのか?」


「今日は森の探索じゃなくて、卵を見つけることが目的だからね。きっと大丈夫よ!」


 フラグかな? リンの大丈夫は当てにならない気がする。


「あたしとマシロは畑を中心に見て回るから、リンとソラは卵を宜しくね。ここら辺には鳥はいないだろうから広範囲で探さなきゃだめよ」


「鳥を見つければ、その近くに巣があるだろうから、大体の場所は分かると思うよ。爬虫類の卵は美味しくないと思うんだよね」


「ソラ~~~、早くいこ~~~」


早くいこ~ってもう行ってるじゃん! 俺はマシロとラピスに「行ってくる」と言った後、急いでリンを見失わない様に追いかけた。

 おぉ、森の奥は魔素が濃いせいか、体が軽い。前よりリンを追いかけるのが楽になっている? いや、よく見ると、リンはみーにゃを片手で支えながら走っている。言わんこっちゃない。それでも十分に速いんだけどね。

 だいぶ森の中を走ってきたな。


「リン、そろそろ樹の頂上まで登ろう。鳥が近くを飛んでいないか確認しよう」


「分かったわ、早く鳥を見つけて、卵をゲットしましょう」


 リンは涎が零れそうなのか、下顎を突き出して口を手で押さえ、涎が零れない様にしている。この食いしん坊さんめ。

 リンと俺はすぐに樹の頂上まで登って、辺りを見回してみた。


「う~ん。見えないな~。他を当たってみるか?」


「え? あそこに何羽か飛んでいるのが見えるわよ。見えないの?」


 リンが指さした方向へ視線を向けても、何も見えない。もしかして、魔力感知を強くしないと見えない感じかな? 俺は目に魔力を集めてみた。

 お、見えた。普段から体全体に薄く覆うような魔力感知しかしてなかったせいか、他の魔力感知が疎かになってたみたいだ。リンをよく見ると、目と足に魔力が多く集まっているのが見える。それでよく見つけることが出来たり、あんなに足が速かったのか。

 魔力の扱い方の差を思い知らされる。俺は意識しながらでもいいから、魔力感知をし続けることにした。


「4羽、いや5羽か? 結構大きい鳥がいるな、鳥と似たような魔力を追えば、巣が見つかりそうだな」


「ねぇ、ソラ。鳥って美味しいの? 生け捕りにした方がいい?」


 う~ん、鳥とマヨネーズだと唐揚げしか思いつかない。小麦は探せばあるだろうし、つなぎの卵は手に入るだろ。それに植物の油で揚げ物が出来るはずだ。ただネックなのは火か、竈を作って土の地面の上でやればなんとか出来るか? エンデに聞いてみないとダメそうだな。でもあるに越したことはない。捕まえよう。


「あぁ、美味しいよ。マヨネーズをつけたら最高だ、捕まえてみよう」


「分かったわ! 全部捕まえるわね!!」


 その瞬間、リンは一気に魔力を解放した。鳥が一瞬怯んだところを物凄い勢いで走って、まずは1羽に飛び膝蹴りを決める。それを見た鳥たちが逃げようとしている頃には回し蹴りが決まり、5羽全ての鳥が瞬殺された…。これ、生け捕りじゃなくね? まあ、結局は殺すことになるからいいのか。俺は深く考えるのをやめた。


「リンは魔物も狩ったりしてるんだよな? 血抜きとかも出来るのか?」


「うん。出来るわよ。首のところをこうして、卵が見つかるまでここで吊るしておきましょ。私の魔力が今ここらへんに充満しているから、魔物もきっと来ないわよ」


 リンは風魔法で鳥の首を切り、樹魔法で蔓を操り、鳥を吊るし上げて血抜きをしていく。かなり手慣れている。これで鳥肉をゲット出来た。次は卵を探そう。

 俺とリンは鳥の魔力を辿っていくと、簡単に巣を見つけることが出来た。結果、二箇所の巣を見つけ、計9個の卵を見つけた。一個一個が手のひらサイズでかなり大きい。この大きさと数ならマヨネーズを作るには十分な量だ。リンは樹魔法で木の籠を作って、卵を詰めていくと、みーにゃがリンの首から木の籠へ移動して丸まっていく。卵を温める様な形になってるけど、大丈夫かな? まあ、その時はその時か。

 そして鳥を回収しに行くと、血抜きしていた場所は血溜まりが出来ていたが、魔物は近寄ってこなかったみたいだ。でもなんか嫌な予感がする。血溜まりが動いている様に見えるのだ。俺は知らんぷりをしようとしたが、リンはそれを見逃さなかった。


「ねぇ、ソラ! 血溜まりに何かいるみたい。見に行きましょ!!」


「リン。気をつけろよ。何がいるか分からないからな」


 俺の言うことを全く聞いていないようだ。リンはすぐ地面に飛び降りて、血溜まりに近付いていく。そして躊躇することなく手を突っ込んで血溜まりで動いているものを掴もうとしている。

 どうやら、動いてるものを掴んだみたいだ。手ですくい上げて観察している。


「ねぇねぇ、ソラ! これ水と土の未精霊じゃない? 持って帰るわよ!!」


 それは相談じゃなくて決定を口にしてるだけだよね? 俺は溜息を吐きながら、リンが手にしている血まみれの水と土の未精霊を見る。やはり、リンと一緒にいると何か起こると思っていたが、その通りだった。これでフラグの回収が終わってくれることを俺は願った。


「血まみれだけど、よくわかったな。 マシロとラピスが良いって言うと思うのか?」


「大丈夫に決まってるじゃない。さあ、この未精霊はソラが持ってってね。私は卵と鳥を運ぶから」


 リンは右手に卵とみーにゃが入っている木の籠、左手に蔓で縛った鳥を持っている状態で、器用に樹々をするするとすり抜けながら家に向かって走っていく。俺は右手に水の未精霊を、左手に土の未精霊を血まみれの状態でリンを追いかける。 

 家に着くと、マシロとラピスが出迎えてくれた。二人は畑の近くで食材を探していたので、すぐ終わったんだろ。そして俺の手を見るや否や何かを察して、溜息を吐いている。


「今度は何を見つけてきたの? 血まみれじゃない!」


「見て見て! これ、水と土の未精霊よ! この子たちもうちで暮らしていいわよね?」


「言い訳ないでしょ! ソラ、あなたがいてどうしてこうなったのよ?」


「ラピス、俺が言わなかったと思うか? 俺が何を言っても決定事項みたいな感じになってたんだよ…」


 ラピスは額に手を当てて、深い溜息を吐いていた。マシロはもう諦めているようだ。リンから卵と鳥を受け取ってはキッチンに向かっている。ラピスも諦めて、木の箱を二つ用意してくれた。どうやらこの箱を水と土の未精霊の家にするみたいだ。


「リン。リンが持ち帰るって言ったんだから、水で洗ってあげなさい。あたしはしないからね!」


「はーい。それくらいやるわよ」


 リンは頬を膨らましてぶつくさ言いながら、水を用意し、未精霊たちを洗っていく。すると、見る見る血が落ちていく。水の未精霊は水色の色合いに、土の未精霊は黄土色の色合いになった。


「エンデが組み上げてくれている水には少量の魔素が含まれているから、水を上げていれば、いずれ自我が目覚めて精霊になると思うわよ」


 未精霊は植物か何かかな? いや、風の未精霊だったら水を上げても意味はなさそうだ。水と土の未精霊だから水をあげるだけでいけるのだろう。俺はなんとなく理解した。


「これで妖精が生まれて、未精霊たちが自我を持ったら大所帯になりそうだな」


「その時はマシロに任せるしかないわね。あの子は面倒見がいいからね。それより、マヨネーズを作りましょ。それと鳥肉はどうしようかしら?」


 俺は、火が使える場所を確保できないかエンデとラピスに確認してみる。すると、畑の近くなら作ってもいい言うことになったので、後日作ることになった。


「1羽はすぐ調理するとして、あと4羽はハムみたいにできないかな? ピナコにお願いできる?」


「そうね、ピナコにお願いしてみましょう」


 4羽はハムに決定した。あと1羽はどうするか。マシロに石を温めて貰って、香草と一緒に焼いて最後に柑橘系の果汁をかければ旨そうだな。

 俺はマシロに鳥肉の香草焼きを提案し、柑橘系の果物を取って来ていないか確認した。どうやら、柑橘系の果物はあるみたいだ。マシロは快く了承してくれて、調理を始めた。


「ソラ、ピナコがハムを作ってくれることになったわ。それとほら、果物でお酢が出来たみたいよ」


 ラピスがマグカップくらいの大きさの樽を抱えて、そう言った。え? 一日でお酢が出来るの⁉ ピナコがマジで優秀過ぎる。ピナコがいれば料理革命が起こるのでは? でも茸の妖精は討伐対象だし、難しいか。ここの家だけに留めておこう。

 マシロに鳥肉の調理を任せ、俺とリンとラピスがマヨネーズを作ることにした。まずはリンとラピスにお酢を飲んでもらい、酸っぱいか聞いてみた。


「うぁあ、酸っぱい~。これで美味しいものが出来るの?」


「酸っぱいけど、これはこれでいけるわね」


どうやらお酢に近いものが出来たみたいだ。これでマヨネーズが出来たらいいな。


「まずは、卵を殻が入らないように割って、黄身と白身を取り出す。黄身だけでマヨネーズも作れるんだけど、今回は黄身と白身どっちも混ぜよう」


 リンが卵を割ろうとする。力加減が出来てないのか、潰してしまい、殻が盛大に入ってしまった。俺は「リンは殻を取り出してね」と指示を出す。ラピスは体が小さいせいもあるのか、綺麗に卵を割っている。まずは先にラピスが割った卵を使うか。


「じゃあ、ラピスが割った卵を先に使おう。これを綺麗に混ぜたあと、少しずつ、お酢と塩を入れていけば出来ると思う。失敗したら、ごめんね」


 俺は手をミキサーの様な形に変形させ、黄身と白身を混ぜ合わせていく。リンに任せると、飛び散りそうだし、ラピスだと体の大きさで難しいと思ったからだ。適材適所である。


「よし、混ざってきた。次は、お酢と塩を少々入れてから、また混ぜる。この繰り返しで、とろみがついたら完成だ」


 俺はかき混ぜながら、少しずつお酢と塩を交互に入れていく。すると、少しずつだからとろみがついてきた。俺は嬉しくなり、次第にかき混ぜるスピードが速くなっていく。それに伴いとろみもついてきた。

 俺は手を元の形に戻すと、べっとりとマヨネーズがくっついていた。葡萄みたいなお酢を使ったせいかうっすらと赤い色になって、オーロラソースみたいになっている。これだけのとろみがあればマヨネーズと言ってもいいんじゃない?

 俺は味覚がないので、リンとラピスに味見をしてもらう。俺の手についたマヨネーズを二人は上目遣いをしながら舐めて味見をしていく。やばい。これ肉体があったら俺の逸物が暴走しそうなシュチュエーションだ。


「おいしい! 早くドレッシングと一緒にサラダを食べてみたい~♪」


「本当に美味しいわね。これ鳥肉にかけても美味しいんでしょ? マシロが喜びそうね」


 呼ばれたのが分かったのか、マシロが来た。どうやらマシロの方も調理が終わったらしい。後ろの方にパリッパリに焼かれた鳥肉に香草が散りばめられているのが見える。


「マシロ、これがマヨネーズみたいよ。食べてみて、とても美味しいわよ」


「美味しい! これで料理の幅が広がるね!」


 マシロは涙と浮かべながら、マヨネーズを舐めている。そこまで料理が好きだったのか…。俺はその光景を眺めて心がほっこりする気分を味わっていたところ、リンがアヒル口で目線を逸らしながら、俺にぐちゃぐちゃになった黄身と白身を渡してきた。どうやら、上手くいかなくて拗ねているみたいだ。

 俺は先ほどと同じ要領で、マヨネーズを作った。これだけの量があればサラダにかけたり、鳥肉につけても十分なはずだ。

 気づけば、窓の外はもう真っ暗だ。リンとマシロはご飯の準備をして、ラピスは妖精の蛹の着いている花と未精霊に水を上げている。

 マシロが「夕食の準備が出来たよ~」と言うと、床がドンドンと動いた。そういえば、ピナコはまだ味見をしていなかったな。待ちきれないとばかりに床が上下に動いているように見える。マシロが料理を床に置くと、床が開くと同時に一瞬で料理がなくなり、ドタバタと床の音が遠くなっていくのを感じる。どうやら、地下にも食べる場所があるみたいだ。

 気を取り直して、俺はリンとマシロ、そしてラピスの反応を見ることにした。夕食のサラダには既にドレッシングがかけられ、マヨネーズが添えられている。鳥肉の香草焼きは隅の小皿にマヨネーズがある。食べるときだけつけるスタイルだ。

 リンとマシロは盛大にサラダを混ぜてドレッシングとマヨネーズを絡めていく。そしてリンは大きな口で、マシロは小さな口でもくもくとサラダを食べ始めた。ラピスも続いてシャリシャリと食べている。


「美味しい~! なにこれ~。サラダじゃないみたい。いつまでも食べられそう~♪」


「美味しい……。 調味料でこんなに食べ物が美味しくなるのね……」


「旨い! こんなのあったら、もう水だけには戻れないじゃない!」


 リンはバクバクとサラダを食べ切ってしまい、おかわりを頼んでいる。マシロは上を向いて天を仰いでいる。ラピスは手が汚れるのも厭わずに食べ進めている。美味しそうでなによりだ。でもみーにゃが食べる前にリンが食べ切ってしまったせいか、んにゃ~んにゃ~と泣き叫んでいる。リンはおかわりをすぐみーにゃにあげた。今までにないくらい喉がゴロゴロ鳴っている。皆、大満足らしい。


「サラダでそんなことに言ってる場合じゃないぞ、まだ鳥肉があるんだぞ?」


 ハッと皆が我に返ったあと、各々が鳥肉を取りながらマヨネーズをかけて食べていく。


「うわ! 皮がパリパリっとしてて香草のいい匂いが鼻を通ってく…。そしてマヨネーズの濃厚な味が鳥肉を一段と美味しくしてる…。」


「これも美味しいわね。ソラの世界の人たちはこんな美味しいもの食べてるの? ずるいずるい!」


「味はいいけど、あたしは肉は体にあまり合わないわね。一口だけでいいわ」


 いっぱいあったサラダと鳥肉はすぐになくなってしまった。リンとマシロはお腹が一杯になって眠くなったのか欠伸をしては、目がトロンとしてきている。リンは早々にベッドで移動し、みーにゃと一緒に寝始めた。マシロは欠伸をしながら食器の片づけをしていく。ラピスは食後の水を堪能しているみたいだ。

 俺はマシロに片づけを手伝うから、寝ていいよと言うと、マシロはお礼をいいながらベッドへ向かい、すぐに寝息を立ち始めた。


「こんだけ、喜ばれるとは…。明日からやることが増えるな」


「そうね。あなたが来てから、こんなに楽しかったり、嬉しいことが出来るなんて思わなかったわ。ありがとう、ソラ」


「どういたしまして」


 俺は食器の片づけをしながら、ラピスと明日はどうするかの予定を立てていく。こんな日が毎日続けばいいのにと思いながら。

マヨネーズが作れました。ピナコが優秀過ぎです。

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