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ダイスロール

「いってらっしゃい……」


「はい、必ず成果を持って帰ります!」


 コリーが元気よく返事を返して、マルク達の先陣を進んで行った。


「ちょっと!コリー!砂漠をガンガン進まないで!」


「はぁ、迷うなや。」


「未知の砂漠っ!ワクワクします!」


 各々がしっかりとした足取りで砂漠を進んで行った。

 問題なく、ガチャを回し終わったアヨニ達は午後になったら予定通りにマルク達騎士団は砂漠の調査に出た。

 その間、アヨニは植物園で植物の世話をしていた。


「本当にアヨニ様を一人置いてきて良かったのですか?」


「良いのよ。アヨニ様は一人だから。安全なのよ。」


 マヤの説明が他の者には理解できなかった様で大半が首を傾げていた。

 アヨニは戦闘に素人だ。

 その事は騎士の全員が分かっていた。

 アヨニは転生してスキルと体質が貰いすぎた素人なのだ。そんな人を一人まだ完全に安全を確保出来ていると確信できない場所に置いておく事は危険だと判断していた。

 それなのに、多少危険が増えるだけでアヨニを一人置いておくのは不安でしかなかった。


「昨日の1日でアヨニ様の事は多少分かった。」


「勿体ぶらずに言わないで、さっさと教えて。」


 ヤニが苛立ちながら言った。

 ヤニの苛つきの理由は分かっているので、誰も何も思わなかった。


「あの人は一人が一番能力を発揮していると言うより強力な能力を繊細に操作できていない。だから、アヨニ様は一人の方がいいのよ。」


「……………アンタが言うならそうなんでしょう。」


 この騎士団で1番の分析能力と記憶能力を持つヘェイの分析を疑う者はいなかった。

 実際、その通りでアヨニは皆の前では()()()()()()()()()()()()


「お前達、お喋りはそこまでだ。」


 マルクが手を挙げて皆の歩みを制止させた。

 マルクの長年の勘が砂の下に何かがいると伝えていた。


「ミミズか?」


「確かにただデカいな。」


 他の者も様々な方法で砂の下を探知していた。

 その結果、ミミズ状の何かの生物が蠢いていることを見つけた。


「来るぞ!」


「ラックショー」


「キモい。」


 既に発見している事もあって皆が下からの不意打ちを余裕で避けた。


「で、団長、誰がやる。」


「私がやるわ。丁度試し斬りしたい物もあるから。」


 マルクが手に持っていたのは今朝武器ガチャを回して出た刀だった。

 召喚時持っていた愛剣は部屋に置いて来た。

 この刀を愛刀にするつもりはないが、使っておかないといざ、使い手が現れても分からないから。


「本当に使うんですか?」


「アヨニ様が言うには私が一番この刀の力を発揮出来るらしいからね。性能チェックは必要でしょう。」


 団員が心配そうに言った。

 この刀の銘も、性能も一緒に召喚された説明には文字化けしたものしか書かれていなかった。

 そんな文字をアヨニはスラスラと読んでいた。

 ただ、それを声に出す事はなかった。

 説明もあまりしないまま、マルクが一番この騎士団で適性があるとして持たせたのである。

 見た目は名刀の様な品のある綺麗さと刃は清水様に透き通っていた。

 でも、刀全体から漂ってくる空気は異質そのものだった。

 野生の勘が鋭いこの騎士団の団員達だからこそ気がつけた。刀異質さ、余程の手練れでもその清らかさに騙されて気がついた時にはその身は滅んでいそうな危険な香りがしていた。


「えぇ、柄を握っている手から冷や汗が止まらないわ。」


 マルクはそう言いながら刀を抜こうとしていた。

 巨大ミミズは野生の勘から刀の異質さを感じ取っていた。警戒するのは刀だと刀に全神経を集中させていた。

 それはマルク相手には命取りだった。


「隙だらけよ。」


 ミミズが感じたのは透き通っている刃に己の血がベットリと青く色付けられた事だった。

 刀を気にするあまり刀を使う本人の事が意識から逸れてしまっていた。

 ミミズは断末魔を上げる事なく眠る様に死んで行った。


「それにしても恐ろしい切れ味ね。」


「だ、団長……大丈夫ですか?」


 鞘から抜かれて現れた刀身には切る前と後では感じていた空気が一変していた。

 異質な空気は明確な怒気に変わり、ミミズは青い血だった筈なのに刀身は赤く日に照らされ始めていた。

 清らかな刀身は健康的な血管を流れている様なサラッとした血の様な狂気を孕んだ刀身へと変わっていた。

 そんな奇妙な刀身を見た団員達は強制的にスキルが発動した。


「え?なに?!これ?」


「おい!お前の頭の上にサイコロがあるぞ!」


「アンタの上にも!あるわよ!」


 マルク以外の団員全員の上にサイコロが回っていた。

 そんな異常な現象にさらに不安感で精神が落ち込んでいた。


「SAN値減少を確認。ダイスロールを発動します。」


「何処から?声が?」


 マルクも含めた全団員の脳へ直接機械的なアナウンス声が届いた。


「成功。」


「成功。」


「失敗。」


「成功。」


 ダイスが回り終わると同じく機械声で成否がアナウンスされた。


「ガァ!ァァァ嗚呼ああアアアア!!!!」


「お、おい!どうした?!」


「くっ!なに………これ…」


 次々と失敗判定された者達が苦しみ始めた。

 中でもヤニは悲鳴と苦悶の表情で叫び散らかしていた。

 その声を聞くだけでただならぬ事がヤニに襲っている事が分かった。


「落ち着きなさい。」


「アっ!」


 一人この異常な現状から冷静さを取り戻したマルクがヤニを殴って無理矢理冷静さを取り戻させた。


「ア、ありがとう……ございます…団長…」


「よし、戻った様だな。他の者も大丈夫か?!」


「えぇ、もう大丈夫よ。」


「何なんですか?今の……狂気?」


 失敗判定の者に与えられたのはその身を狂わす狂気だった。


「何があったんだ?ヤニ。」


 そんな中一番取り乱していたヤニから何があったのかを事情聴取をする事にした。


「失敗って言うアナウンスが聞こえた瞬間、まるで全身をミミズが這い回っている様に感じたのよ。」


「………?それだけか?」


 前世で拷問の訓練や実際に様々な拷問を受けた経験のあるこの騎士団の団員であるヤニがミミズが全身を這い回っている感覚が走ったからってここまで発狂するとは思えなかった。


「それだけよ。あれは……ただのミミズが這い回っていただけなのに私の精神を的確に犯す様に蝕んでいったのよ。」


 ヤニの表情は疲労と焦燥感が伺えた。

 精神を鍛え抜かれた騎士団員であるヤニが此処まで取り乱したと言う事実だけでも他の団員達を恐怖させるには十分だった。


「だから!落ち着きなさい!」


 そんな団員達にマルクは大声で喝を飛ばした。


「そうね。ダイスロールされたのは刀の刀身を見て精神を乱された瞬間だった。それにアナウンスではSAN値が減少したからとも言っていたわ。」


 ヘェイは冷静にさっき現象を分析していた。


「そうね…私達は冷静じゃないといけないわ。それに……あれはただ失敗した者を狂気に落とすだけじゃないわ。」


 持って来ていた水を飲んで落ち着きを取り戻していたマヤが自分の肉体に及ぼした影響を確認していた。


「それはどう言う事?」


「………百聞はは一見にしかず、ちょっと見ていて。」


 マヤはそう言うと死体として砂の上に転がっているミミズに近づいて殴った。


「え?」


 そこには出でいる部分だけでも3メートルは優に超えるミミズの肉体を騎士団の中で非力なマヤが拳で粉微塵にしていた姿だった。


「こんな風に肉体が強化されているのよ。」


 それを聞いた他の団員達も各々が走ったり飛び回ったりして自分の肉体を確認していた。

 それで分かった事が三つあった。

 成否に関係なく強化は適用されている事。

 騎士団の中で一番発狂していたヤニが一番強化されていた事。

 それ以外では失敗者とは違って成功者は一律で強化されている事である。


「これは失敗者は与えられる狂気に比例して強化されると言う事ね。」


「そうね。私が一番パワーが上がっているからね。」


 このスキルはアヨニが前に言っていたデメリットだけの恩恵はないと言うデメリットとメリットが存在するものだと理解した。


「でも、この力を使いこなしたら必ず私たちの糧になるわね。」


「…………」


「どうしたんだ?団長?さっきから黙ってしまって?」


 話を締めくくっているとずっと黙っていたマルクの事が気になってマヤが尋ねてきた。


「あのダイスロールのアナウンスで気になる事があったのよね。」


「気になる事?それは強制発動と言ったことか?」


 ヘェイが自分も気になっていた事を団長も気になっている事ではないかと思い聞いてみた。


「そうよ。つまり、私達の任意でも発動は可能と言う事かしら?」


「さあ?それは試してみるしかないんじゃないか?」


 ヘェイの意見に賛成したマルクは実行してみる事にした。


「ダイスロール。」


 マルクがそう言うとマルクの頭上にさっき団員達の上で回っていたダイスが発現した。


「ちょっと!団長!」


 砂漠調査は中断して拠点に引き返そうと思っていた団員達はマルクの行動に驚いていた。


「アヨニ様の前であんな痴態を見せる訳にはいけないでしょう。試すなら今なのよ。」


 アヨニの心の安寧の為にもアヨニには我々のことは頼りになる騎士団でないといけないのである。

 だから、アヨニのいない今しかないのである。


「大丈夫よ。私、こう見えて運が良いのよ。必ず成……」


失敗(ファンブル)


 自信満々に必ず成功するわと言おうとしたマルクの言葉を遮って失敗のアナウンスが脳内に響いた。


「だ、団長?」


「ア!ガァ!クッ!」


「マルク団長?!大丈夫ですか?!」


 脳内に直接注ぎ込まれる狂気に耐えるマルクはヤニが言っていた事を理解した。

 これは実際に受けた事がある拷問とは全然違う精神凌辱である。

 ヤニが叫んで取り乱したのも仕方がないと思った。それと同時に自分が負ける訳にはいかないと狂気に全身全霊で戦うことにした。


「舐めんな!この程度で狂う程柔な心はしていない!」


「マ、マジか……団長、力づくで狂気をねじ伏せやがった。」


「それでこそ団員よ。」


 さすが、我らの団長と皆が歓声を上げていた。


「それで身体の調子はどうなの?団長。」


「絶好調よ。さっきまでの感覚が嘘の様にないわ。」


 失敗者にあった後味の悪い気分もなく、狂気をねじ伏せたマルクには清々しい爽快感だけがあった。


「強化率もヤニより明らかに上ね。」


 団長の争う様子からヤニと同じくらい狂気が襲ったのにマルクの強化はそれを超えていた。

 これは狂気を克服した者への褒美だと結論づけることにした。


「良いわね。凄く良い気分よ。」


「取り敢えず戻りましょう。あと、団長これ以上ダイスロールしないでください。もしかしたらアヨニ様が何か知っているかもしれません。」


 マルクが調子に乗って追加でダイスロールしない事を釘を刺して騎士団は拠点に戻ることにした。

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